企業や行政で導入が進むGoogle Workspace。その中核機能となりつつある生成AI「Gemini」や「NotebookLM」は、現場でどれほど受け入れられているのだろうか。アンケート調査から、その利用実態と評価を探る。
Google Workspaceによる導入成功事例が企業だけでなく行政機関にも広がっている。電子メールやドキュメント作成、クラウドストレージ、Web会議、生成AIといった業務に必要なツールを連携できる特徴に恩恵を感じている組織も多い。前編では多くのユーザーが他製品に「移行するつもりはない」と回答している現状を紹介した。
Google Workspaceに組み込まれているツールの中でも特に注目されているのが生成AIモデル「Gemini」やリサーチ・文章作成アシスタントツール「NotebookLM」だ。本稿では「Google Workspace、Gemini、NotebookLMの利用状況に関するアンケート」(実施期間:2025年10月22日〜10月31日、回答件数:217件)より、両サービスの利用状況や活用シーンを探る。
はじめに「Gemini」「NotebookLM」の利用状況を調査したところ「無料版Gemini」(40.1%)、「Google Workspace(GeminiとNotebookLMを含む)」(28.6%)、「無料版NotebookLM」(14.3%)と続く結果となった。約6割が無料版Geminiや無料版NotebookLM、Google AIを利用しており個人でのAI利用はかなり進んでいるようだ。
※「Google Workspace、Gemini、NotebookLMの利用状況に関するアンケート」というタイトルでアンケートを実施したため、この結果は通常より高い数値が出ている可能性があります。
次にGoogle Workspaceを利用している人に対して「Gemini」と「NotebookLM」の利用状況を聞いた。その結果「利用している」はGeminiで72.6%、NotebookLMで51.6%とどちらも半数を超え、Google Workspaceを導入している環境下のほうが利用率も高いことが分かった(図1、2)。
続いて、GeminiやNotebookLMの満足度を調査したところ「満足」と「まぁ満足」の合計値は、Geminiで90.3%、NotebookLMでは79.6%となり、高評価であることが分かった。
高評価の理由をフリーコメントで聞いたところ、Geminiについては以下のような回答が集まった。
回答の質の高さや他ツールとの連携、自分好みにカスタマイズしたチャットbotを作れる「Gem」の評価が高いようだ。
同様にNotebookLMの評価ポイントを聞いたところ、以下の回答が集まった。
NotebookLMは読み込ませた資料のみを基に回答を生成するツールだ。そのため、他の生成AIツールと比較してハルシネーションが少ない点が評価されているようだ。
一方、Google Workspace利用者のうち、2〜3割ほどを占める「GeminiやNotebookLMの利用を検討していたが中止した」「利用していない」とした人からは、「自社のGoogle Workspaceはメールやチャットくらいしか使っておらず、使い方が分からない」や「利用目的がよく分かっていない」といった理由が挙がった。まだ組織全体での活用には至っていないという現状が見える。どのような目的でどのように利用すれば成果につながるのか、従業員が利用のイメージがつかめるようなサポートが必要だ。
そこで、GeminiとNotebookLMそれぞれの「利用シーン」とその「効果」について聞いた。
Geminiは「文章、資料作成支援」(80.8%)や「アイデア生成」(46.9%)に、NotebookLMは「文章、資料作成支援」(63.8%)、「データ分析」(63.8%)に多く利用されていた。複数アプリと連携できるため、Geminiのほうがより広範囲の業務で使われているようだ。
また「Geminiを利用しているアプリケーション」を聞いたところ、トップ3は「Gemini(チャットbot)」(66.9%)や「Google ドキュメント(文書作成や要約)」(43.1%)、「Gmail(メールの下書きや返信提案)」(35.4%)となった。ここでも、Geminiが文書・資料作成支援からアイデア生成、電子メール対応まで幅広く利用されている様子が見て取れる。
NotebookLMはアップロードした資料を基に資料や要約を作成したり、特定の数値や傾向を抽出・比較するなど、分析目的で利用されたりすることが多い。
では、それぞれのツールを利用することでどの程度効果が得られるのか。業務別に「GeminiやNotebookLMによって週当たりにどのくらいの時間削減効果を得られたか」を聞いた。
その結果、週当たりの工数削減効果が「1時間以上」(「1〜3時間」「3〜5時間」「5時間以上」の合計値)とした回答が最も多かった用途は以下の3つだ。
ちなみに、「1時間未満」(「0〜10分」「10〜30分」「30〜59分」の合計値)では「タスク整理」(85.8%)、「チャットやメール対応」(83.6%)、「ドキュメント検索」(67.9%)が上位に続いた。
同時期に実施した「Microsoft 365 Copilot」に関する調査結果と比較すると、時間削減効果が低い業務は同様の結果であったが、効果の高い業務はわずかに違いが見られる。「文章、資料作成支援」や「会議、議事録作成サポート」といった日常業務の自動化・効率化に効果を発揮するMicrosoft 365 Copilotに比べ、Google WorkspaceではNotebookLMがあるためか「アイデア生成」や「データ分析」など、情報の整理や分析に関わる業務でも効果を発揮していると感じる人が多いようだ。
以上、ここまで企業におけるGeminiやNotebookLMの利用実態を紹介した。これらの情報も参考に、Google WorkspaceやGemini、NotebookLMを活用して生産性向上に役立ててほしい。
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