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議事録AIが「特定の会議」でしか使われないのは、なぜ? 「限定利用」が6割超の理由議事録AIの利用状況(2026年)/前編

議事録AIの導入率が7割に達し、大企業では8割を超えるなど普及が進んでいる。だが、その利用実態を見ると毎日活用するユーザー層は3割にとどまり、「特定の会議」での限定利用の割合が多い。アンケートから見えた運用面の課題とは。

» 2026年04月16日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 会議の議事録作成に、どれだけの時間を費やしているだろうか。このような非効率な業務は、今も多くの現場に残っている。その解決策として注目を集めているのが、AIによる文字起こしや要約を自動化する「議事録AI」だ。

 市場規模も拡大を続けている。グローバルインフォメーションが2026年4月に発刊した「人工知能(AI)会議コパイロットの世界市場レポート 2026年」によると、同市場は2026年に26億6000万ドル、2030年には73億9000万ドルに達すると予測されている。

 こうした成長が見込まれる中、実際の企業現場ではどの程度活用が進んでいるのか。キーマンズネットが実施したアンケート調査(実施期間:2026年4月2日〜4月10日、回答件数:180件)を基に、前編では勤務先における議事録AIの利用状況や利用ツール、活用範囲と頻度、そして、会社非公認ツールの利用実態について解説する。

議事録AIの利用率は約7割 従業員1001人以上の企業では8割超

 まず、議事録AIの利用状況を尋ねたところ、「全社的に導入している」(32.2%)、「一部の部署・チームで導入している」(31.1%)となり、合わせると63.3%。さらに「試験的に利用(PoC)している」(9.4%)を含めると、何らかの形で議事録AIを利用している企業は約7割に上る。この結果を企業規模別に見ると、従業員数1001人以上の中堅〜大規模企業では導入率が8割を超えていることが読み取れる(図1)。

図1 議事録AIの利用状況(全体/従業員規模別)

 この背景には、会議数の多さに起因する記録・共有コストの差があると考えられる。大企業ほど会議の開催頻度や関係者数が増え、議事録作成や情報展開にかかる負担が大きくなりがちだ。文字起こしや要約を自動化できる議事録AIは、費用対効果が見えやすく、導入判断が進みやすい領域と言える。

 次に、利用している議事録ツールの内訳を見ると、「Microsoft Teams(トランスクリプト機能)」(62.6%)、「Microsoft Copilot」(47.3%)が上位を占め、「ZoomのAI議事録機能」(25.2%)、「Google Meet(字幕・記録機能)」(16.8%)、「Google Gemini」(15.3%)、「自社開発ツール」(9.2%)が続いた(図2)。既存のワークスペースに組み込まれた機能の利用が中心であり、新たに専用ツールを導入するというよりも、現在利用している会議ツールの機能として議事録AIを活用しているケースが多いことが分かる。

図2 利用している議事録AIツール(議事録AIを「全社的に導入している」「一部の部署・チームで導入している」「試験的に利用(PoC)している」と回答した人を対象)

 特に日本市場では「Microsoft 365」の普及率の高さを背景に、Microsoft系サービスが上位を占める結果となった。一方で、「Google Meet」や「Google Gemini」も一定の利用が見られ、企業が採用しているワークスペース基盤が、そのまま議事録AIツールの選定に影響していることがうかがえる。

 注目すべきは、活用領域の広がりだ。従来のようにWeb会議の付随機能として議事録を生成するだけでなく、「Microsoft Copilot」や「Google Gemini」といったチャット型AIを併用するケースも増えている。これにより議事録AIは、単なる文字起こしツールにとどまらず、要約の生成やタスク抽出、関係者への共有といった会議後の業務プロセス全体を支援するツールとして位置付けられつつある。

日常利用者は3割 議事録AIが「特定の会議」でしか使われない理由

 議事録AIの利用企業であっても、その使われ方は一様ではない。利用頻度や活用範囲に目を向けると、日常的に活用されているケースがある一方で、「特定の会議でのみ利用」にとどまるケースも少なくない。この違いの背景には、運用面における共通した課題がある。

 会議における議事録AIの活用範囲を尋ねた結果、「AIで下書きを作り、人が大幅に修正」(35.9%)が最も多く、次いで「ほぼ完全にAI任せ(人は最終確認のみ)」(34.4%)、「一部のみAI活用(文字起こしなど)」(26.0%)が続いた。約6割の企業が、AIの出力をそのまま利用するのではなく、人による確認や修正を前提に利用していることが分かる(図3)。

図3 議事録作成におけるAIの活用範囲(議事録AIを「全社的に導入している」「一部の部署・チームで導入している」「試験的に利用(PoC)している」と回答した人を対象)

 また、利用頻度については、「たまに利用」(33.6%)と「重要な会議のみ利用」(31.3%)が、「ほぼ全ての会議で利用」(30.5%)を上回り、全体として6割以上が限定的な利用にとどまっている。

 この利用状況をクロス集計で見ると、活用範囲と利用頻度の間には明確な関係が見られる。「AIで下書きを作り、人が大幅に修正」や「一部のみAI活用」といった運用では、「ほぼ全ての会議で利用」と回答する割合は相対的に低い。一方、「ほぼ完全にAI任せ(人は最終確認のみ)」とした層では、「ほぼ全ての会議で利用」と回答した割合が48.9%に達している(図4)。

図4 「議事録作成におけるAIの活用範囲」と「議事録AIの利用頻度」のクロス集計

 このことから、AIのアウトプットに対する修正コストの大きさが、利用定着を妨げる要因になっていることが見て取れる。修正負荷が高い場合、利用頻度が下がり、結果としてツールの定着が進みにくいと考えられる。実際、議事録AIを「導入していない」と回答した層の理由としては、「コストが高い」(39.4%)、「必要性を感じていない」(33.3%)、「精度に不安がある」(27.3%)が上位に挙がっており、精度や運用負荷への懸念が導入の障壁となっている。

 今後、議事録AIの活用をさらに広げるためには、社内特有の専門用語や業界用語への対応、話者識別の精度向上といった技術面の改善が求められる。一方で、単なる文字起こし精度の向上にとどまらず、決定事項やタスク、次のアクションといった会議後に必要な情報をいかに迅速に共有できるかという点へと、ユーザーの評価軸が移行していくことも重要な論点となりそうだ。

会社公認ツールがあっても、「シャドーAI」に流れるのは、なぜ?

 AI活用が広がる一方で、その利便性の高さからシャドーAIのリスクも指摘されている。

 そこで最後に、会社の承認を受けていない個人利用の議事録AIを業務で使用した経験について尋ねたところ、「ない」(76.7%)が多数を占めた。一方で、「時々ある」(18.9%)と「よくある」(4.4%)を合わせると23.3%となり、約4人に1人が勤務先で許可を取っていないツールを業務で利用した経験があることが分かった。

 この割合は、キーマンズネットが2026年2月に実施した「生成AIの利用状況に関するアンケート」における未許可サービス利用者(11.0%)と比較すると約2倍の水準となっており、議事録AI領域ではシャドーAI化が進みやすい領域であると考えられる。特に前述の通り、1001人以上の中堅〜大規模企業で導入割合が高いことを踏まえると、会社公認のツールが整備されているにもかかわらず、運用面での使い勝手や制約が、個人利用の併用につながっている可能性がある。

 そこで、未承認の議事録AIを業務で利用した経験があると回答した層にその理由を尋ねたところ、「少人数のチームや個人で使いたかった」(35.7%)が最も多く、次いで「会社の正式手続きが分かりにくい・面倒だった」(31.0%)、「会社で利用しているツールが使いにくい・不便だった」(26.2%)が続いた。

 これらの結果からは、会社公認のツールが導入されている場合でも、現場の利用ニーズを十分に満たしきれていない実態がうかがえる。特に大企業では全社導入が進む一方で、会議の規模や用途が多様化していることから、軽量かつ即時に利用できる個人向けツールが併用されている可能性がある。また「その他」の回答としては、「テスト的に利用した」「PoCの一環」「LLM環境での実験」といった回答も見られ、実務利用に加えて、検証や試行目的での利用も一定数含まれている。

 以上より、前編では企業における議事録AIの導入状況と利用実態を中心に整理した。後編では、具体的な活用シーンやユーザー評価、運用上の課題など、現場レベルでの利用実態についてさらに深掘りしていく。

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