情シス業務の行き詰まりや人手不足を背景に、SaaSとBPOを組み合わせたBPaaSへの期待が高まる。PFUの新サービスを例に、BPaaSで実現できる業務効率化と導入メリットを考察する。
PCの手配や故障対応、アカウント管理。情報システム部門の日常業務は、今も「止められない作業」の積み重ねで成り立っている。その結果、改善や標準化といった本来取り組むべき領域に手が回らないといった声がよく聞かれる。
こうした背景のもと、SaaSとBPOを組み合わせて業務そのものを外部化する「Business Process as a Service」(BPaaS)は、現実的な選択肢として広がりつつある。BPaasとは、SaaSと業務アウトソーシング(BPO)を組み合わせたサービスモデルだ。利用者はSaaSで必要な業務を依頼し、サービス提供事業者はその管理基盤を介して利用者と情報を共有しながら、人手による作業を含む業務プロセスを代行する。
BPaaSが期待される背景には、人手不足や業務負荷の増大、業務の属人化といった、多くの企業が抱える共通課題がある。特に間接部門の業務効率化を目的とした活用が進んでおり、これらの課題解決に有効な選択肢として期待されている。
こうした中、中堅・中小企業向けエッジデバイス特化型BPaaSとして、リコーグループのIT機器およびシステムインテグレーターであるPFUは「情シスのOTOMO」(2026年6月3日販売開始予定)をリリースした。本稿ではそのサービス内容を基に、BPaaSの実像と導入における論点を整理する。
本サービスは「社内のIT窓口が1人しかおらず、PCの不具合対応やアカウント権限の変更、ネットワーク障害対応などに追われて1日が終わってしまう」「本来はルール整備やセキュリティ見直しに取り組みたいが後回しになり、手順やノウハウが個人に依存してしまっている」といった、いわゆる“ひとり情シス”の切実な課題を起点として開発された。
キッティングや運用代行まで含むとはいえ、実際にどこまでが標準サービスの範囲に含まれるのかは気になるところだ。次に、その具体的な適用範囲について整理する。
2026年6月3日にリリースされた本サービスはシリーズ第1弾に位置付けられており、日常業務の中でも特に負荷の大きいデバイス運用に焦点を当てた「デバイス運用パッケージ」として提供される。
対象となるデバイスは、ノートPCやデスクトップPC、タブレットの他、ディスプレイ、マウス、キーボードなどの周辺機器・アクセサリー類だ。一方で、サーバやスマートフォン、ネットワーク機器については台帳管理の対象には含まれるものの、主要な運用対象とはしていない。また第1弾の段階では、ID発行や権限管理といった機能は含まれず、これらは「第2弾」での拡張が検討されている。
本サービスの管理機能はSaaSとして提供される。SaaSのワークフロー機能によってデバイス手配が申請されると、PFUが申請内容に応じて新規で調達または在庫から商品をピッキングし、指定先へ配送する。配送先は契約企業の拠点に加え、全国のユーザー個人宅にも対応する。
PCの場合は、「Windows」の初期セットアップを含むキッティング作業をPFUが代行し、必要な設定が完了した状態で端末が納品される。また、ワークフロー経由の修理申請については、デバイスメーカーとの調整を含め、機器の回収から修理、返送までの一連のプロセスをPFUが一括で代行する。
さらに、廃棄や返却申請については、機器回収に加え、PCのデータ消去および消去証明書の発行まで対応し、適切なデータ管理を徹底する。手配や作業、サポート業務は、PFUの専門スタッフが一貫して担う。
なお、キッティングの範囲はWindowsの初期セットアップ(デバイス名設定、リモートデスクトップ設定、ネットワーク設定などの標準機能)に限定される。業務アプリケーションの配布や個別設定については、ZIP形式での配布など柔軟な対応も可能だが、標準機能には含まれず個別対応となる。
ここまで見てきたように、BPaaSは単なるアウトソーシングではなく、ツールと運用サービスが一体となった業務モデルとして設計されている点が特徴だ。情シスのOTOMOの構成要素を整理すると、主な機能を以下のように分解できる。
ダッシュボードを介して、機器台数や使用年数といった保有状況に加え、年間購入額の推移や修理実績など、コストに関する傾向を視覚的に把握できる。
管理項目は、PFUが過去の運用支援経験から導き出したベストプラクティスに基づいて設計されており、この点について同社担当者は「他のサービスにはない優位性がある」と強調している。
「PCカンタンシミュレーション」では、機器台帳に蓄積された情報と更新履歴を基に、人員計画やデバイスの更新サイクル、必要在庫数などを加味した将来の調達台数やコストのシミュレーションが可能だ。最大3年先までのIT資産計画を可視化できる。
「IT資産ダッシュボード」機能では、機器台数や使用年数といった保有状況に加え、年間購入額の推移や修理実績など、コストに関する傾向を一画面で確認できる。週次・月次のレポートを待たずとも、タイムリーに現状を把握できる。
ユーザーがSaaSからデバイスの取得や故障、修理、交換などの申請をすると、ユーザー部署の責任者などを承認者とするワークフローが自動的に起動する。承認後、その内容が情シス担当者へ通知され、情シスがSaaSで手配指示を出すことで、PFUによる代行サービスが開始される。その後、デバイスの準備・発送、あるいは修理対応・廃棄対応といった一連の業務プロセスが進む。
実行結果は機器台帳へとPFU側で反映され、情シスはダッシュボードや台帳画面から案件の進捗(しんちょく)や結果を一覧で確認できる。ユーザー申請から実行、進管理、履歴保存までの一連のプロセスは複雑化しやすく、この部分をどこまで合理化できるかがサービス評価における重要なポイントとなる。
手順書や判断基準を組み込んだテンプレートがユーザーおよび管理者向けに提供される。標準的な運用プロセスに準拠しながら、自社の実態に合わせて適切にアレンジし、全社展開や業務標準化を進められる。
PFUは本サービスについて、導入すればその日から運用できる点を強く打ち出している。一般的な資産管理ツールやBPOサービスと比較して、ユーザー企業側での運用ルールの策定やマニュアル整備といった事前準備を最小限に抑えられることを特徴としており、標準化された管理手法に基づいて迅速に基本的な運用を開始できる点を強調している。ツールと運用サービスが一体化しているため、導入準備の負担がほとんど発生しない構成となっている。
なお、デバイス運用パッケージの月額料金は1ID当たり1000円で、10ID単位での契約となる。最小契約数は50IDからで、年間契約が前提となる。
以上、中堅・中小企業向けエッジデバイス管理BPaaSとしての情シスのOTOMOを例に、その代表的な機能と特徴を整理した。情シスの日常業務を軽減するBPaaSは、一部業務をパッケージ化したDaaSとともに、今後さらに注目を集める領域となりそうだ。
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