AI活用が進む中、IT関連業務における省人化はどの程度進むのか。「AI時代でも自分は安泰」と考えるIT人材の共通点とは。キーマンズネットの読者調査から、IT人材の充足状況の現在地と将来に迫る。
AI技術の進展は目覚ましく、これまで人間が担ってきた業務の一部をAIが代替する動きが本格化してきた。IT人材が携わる業務も例外ではない。そこで、キーマンズネットは「IT人材に関する意識調査(2026年)」(実施期間:2026年5月20〜29日、回答数149件)を実施し、近い将来(3〜4年後)にAIによる代替が進みそうな業務や、AI時代に必要とされる人材像を探った。
この調査では、自身の仕事がAIに代替されることに危機感を覚えるIT人材と、安泰だと考えるIT人材がほぼ拮抗した。
AI時代にも自分の業務がAIに代替されないと考える人には、どのような共通点があるのか。調査結果から、ある事柄に関する「考え方の違い」が浮かび上がった。
本稿における「IT人材」は、IT部門に所属する人、あるいはIT業務に主に携わっている人を分類しており、回答者149人のうち130人を占めている。
今回の調査で、IT人材のうち「AI時代も自分は食いっぱぐれない」、つまり自分は安泰だと考える人(「あまり危機感はない」と「全く危機感はない」のどちらかを選択した層)は約4割に達した。この層に共通していたのは次の2点だ。
「自身の業務がAIに代替される可能性についてどう感じているか」という設問に対し、「あまり危機感はない」「全く危機感はない」と答えた人の共通点として、まず目立つのは年齢だ。
今回の調査で、自分は安泰だと考える層の83.7%は50歳以上が占めた。ただし、今回の調査におけるIT人材130人のうち71.5%(93人)が50代以上に該当するため、母集団が高年齢層に寄っていることに留意が必要だ。
そこで、各年齢階層の中での割合を見ると、49歳以下で危機感を持つ人(「強い危機感を持っている」と「やや危機感がある」のどちらかを選択した人)は50.0%を占めた。一方で、50代以上で自分は安泰だと考える人は50代で43.5%、60歳以上で44.7%を占める。微差だが、年齢層が上がるにつれて安泰だと考える割合が増える傾向にある。
ただし、前述の通り母集団の偏りもあり、今回の調査は危機感を持っていない理由を尋ねていないため、年齢はあくまで一つの要素として捉えるにとどめたい。
ビジネスパーソンとしての考え方は、年齢だけに左右されるわけではない。今回の調査でも、「自身の業務がAIに代替される可能性についてどう感じているか」という設問に対し、60歳以上の層の38.3%は「強い危機感を持っている」「やや危機感がある」を選択している。同年代でも、安泰だと考える人とそうでない人に分かれているのが実態だ。
では、危機感を持つ人と持たない人を分ける年齢以外の要素はあるか。「今後3〜4年後、IT人材を取り巻く状況はどのように変化すると思うか」と尋ねた設問に対し、「AIが代替できない、泥臭い人間の調整作業がIT人材のメイン業務になる」を、安泰だと考える層の40.8%が選んだ(複数回答可)。危機感を持つ層で同じ項目を選んだ割合は29.8%で、11ポイント低かった。
「AIが代替できない、泥臭い人間の調整作業がIT人材のメイン業務になる」を選んだ割合を年齢層別に見ると、49歳以下で35%、50代で26%、60歳以上で34%だった。年齢が高い人だけがこの回答を選んだわけではない。
もう一つの共通点が、労働人口が減るため、IT人材の不足は続くという考え方だ。安泰だと考える層の40.8%が「AIの活用が進んでも、労働人口減少の深刻化によってIT人材不足は継続する」という項目を選んだ。人間にしかできない仕事が残り、人手不足も続く――。こう考える人ほど、自分は安泰だと感じていることが浮かび上がった。
近い将来(3〜4年後)、AIによる省人化が進む領域を尋ねた設問に対し、最も多く票を集めたのは「アプリケーションの開発・プログラム実装」(24.8%)だった(複数回答可)。「セキュリティの監視・インシデント対応」(20.8%)、「AIツールの利活用・データ抽出」「ユーザーサポート・ヘルプデスク」(それぞれ18.1%)、「テストの仕様書に基づく実行・不具合報告」(14.1%)が続いた。開発やテスト、サポートといった現場の実務が上位に並ぶ。
AI時代も自分は安泰だと考える人は、人間にしかできない仕事が残ると見ている。ただし、ユーザーサポートといった人間との接点を含むものも「AIに代替されそうな仕事」の上位に食い込んでいる。人間に残ると見られている仕事と、AIによる代替が進むと考えられている領域は、一部で重なっている可能性もありそうだ。
また、AIがより活用されるようになる中で、IT人材のキャリアパスの在り方に変化が生まれるという見方もある。読者からはフリーコメントとして寄せられた、「いわゆるコーダーの需要は激減する。コーダーからプログラマー、デザイナーというキャリアパスに異変が起こる」(IT企業/情報システム部門所属)といった声がまさにこれだ。
前編では、特にユーザー企業が即戦力となる中途採用を求める傾向があることを取り上げた。この後取り上げるように、上級人材がより強く求められるようになる中で、IT人材のキャリアパスの在り方や人材を確保する方法も変動していくのかもしれない。
AI時代に通用するのはどんな人材か。今後、勤務先で高く評価されるIT人材像を尋ねたところ、最も多かったのは「ビジネス課題を解釈し、要件定義する能力に長けた人材」(36.9%)だった。「AIを使いこなすことを前提に、より広範で高度な技術力を持つフルスタック人材」(35.6%)、「AIをシステムや業務に組み込む設計・実装ができるスペシャリスト」(34.9%)、「AIが生成したアウトプットを検証・修正できる人材」(24.8%)が続いた。
上流工程となる要件定義に加え、AIを使いこなし、その出力を検証する力が問われている。企業がこうした人材を確保する方法としては、「即戦力の中途採用」(25.5%)と「社内での若手・未経験者の長期育成(新卒・ポテンシャル採用重視)」(24.8%)がほぼ拮抗する結果となった。
読者からはフリーコメントとして、「少数精鋭がAIを活用して、戦略的で創造的な業務に集中する組織が理想だ。そのために、中堅やベテランへのリスキリング投資と、成果を上げた人材の公正な評価が欠かせない」(製造業/AIツールの利活用担当)という提言も寄せられた。
「現場で手を動かせる人」の価値がAIによって目減りする中で、IT人材の「量」をこれまでと同等、あるいは事業成長に合わせてより多く確保する必要があるのかどうか――。危機感の有無にかかわらず、多くのIT人材が思い描く未来は、上記コメントにあるような、広範なスキルを持つ少数精鋭の上級人材がAIをフル活用して業務に取り組む体制だ。
他のIT施策同様、AIによる省人化は全国一律で進むものではない。業界や企業規模、企業文化によっては「対岸の火事」である可能性もある。自分は安泰だと考える層の多くは、こうした現実的な労働環境や人手不足を冷静に見据えているからこそ、過度な危機感を抱いていないとも言える。
ただし、今回多くの回答者が、今後勤務先で求められるIT人材像について、現在と変化すると考えていることが分かった。自分が持っているスキルがAI時代にも通用するのかどうか、AIを活用することでさらなる強みを発揮できる人材になれるのかどうかは一度点検する価値がありそうだ。
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