SSDの寿命を22倍、性能を33倍向上させる「ReRAM搭載SSD」が登場した。ハイブリッドメモリが新たなストレージとなるか?
今回のテーマは、SSDよりも高速で、DRAMよりも大容量のReRAMのエラー発生率を80%削減すると同時に33倍の高速化を達成する制御技術が採用した「ReRAM搭載SSD」だ。ReRAMの本格実用化には課題が多いが、この制御技術が発展すれば、チップ自身の成熟を待たずにReRAM+SSDのハイブリッドメモリ実用化が進みそうだ。
2013年は半導体メモリ開発に重大な技術開発や製品化の発表が相次いだ。中でもソニーとマイクロンによる16Gビット級ReRAMの開発発表やパナソニックの量産化発表などで、ReRAMがあらためて注目された。ReRAMの特長は次の7点にまとめられる。
これらの特長から分かる通り、ReRAMはDRAMとSSDの中間のような性能と容量を持つメモリだ。
コンピュータに使われるメモリはCPUキャッシュとして使われる小容量だが抜群に高速なSRAM(Static RAM)、主記憶装置として使われるDRAM、そして大容量だがアクセススピードがDRAMより100万倍劣るSSD(NANDフラッシュメモリ)、さらに低速なHDDがある。
図1に見るようにDRAMとSSDの間にはアクセス速度に大きな隔たりがある。そこでReRAMをはじめとする次世代不揮発メモリは、ギャップを埋める「ストレージクラスメモリ(SCM)」として注目される。
SCMの応用領域の1つが、DRAMとSSDの間をつなぎ、協調してデータ読み書きを行う中間メモリとしての利用法だ。SSDと組み合わせて使えば、ある時はSSDキャッシュとして働き、ある時はアクセス頻度の高いデータを専門に扱う1次大容量ストレージとして働くことができる。
つまり、SSDの能力を補完し、全体として高速かつ低消費電力のストレージ(ハイブリッドSSD)の実現が期待される。この用途のReRAMはまだ実用化前だが、素子としての課題を制御技術で克服する新たな方法を、2014年2月に中央大学の竹内健教授が発表した。
その前に他の半導体メモリを搭載するSSDについて簡単に見ておこう。
従来、SSDのキャッシュとしてDRAMが使われてきた。DRAMは高速だが、容量はシリコンダイ当たり現在最大4Gビットにすぎない。近々8Gビットに、ゆくゆくは16Gビットへと拡大すると予想されているものの微細化は限界に近く、それ以上の容量拡大は難しい。
ビット単価は依然として高額だ。また、揮発性メモリなので、記憶を保持しておくためには常に通電していなければならない。SSDに搭載する場合には、停電時や電圧変動時にデータをSSDに退避できるだけの時間を稼ぐバッテリーやキャパシタが必要になる。DRAMの容量を増やすと高コストになり、モジュールのコンパクト化にも制限が生まれる。
課題解消のため、ReRAMに一歩先んじて製品化が図られたのが「MRAM(Magnetoresistive RAM)搭載SSD」だ。2013年11月、バッファローがMRAM搭載SSD製品化(2015年予定)に着手すると発表した。
これはMRAMをSSDのキャッシュとして使い高速化を図る仕組みで、実現すれば世界初の市販MRAM搭載SSDとなる。利用するのは米EverspinのSTT-RAM(Spin Transfer Torque-RAM、ST-MRAM)だ。Everspinは世界で初めてのSTT-RAMの市販サンプル提供を2012年11月に開始し、従来の16Mビットを大きく超える64Mビット容量の製品開発にも成功した。
STT-RAMはSRAM同等の高速ランダムアクセス性能(35ns以下)を持ちながら、SCMとして利用できる大容量と、ほぼ無限(10の15乗回以上)の書き換え回数に対応できるのが大きな特長だ。
一方、ReRAMはこれより性能が劣り、書き換え回数も10の6乗程度だ。しかし、上記したように微細化や積層化の面ではSTT-RAMよりも優れ、3桁違いの16Gビットから32Gビット級の大容量化が可能な点と、シンプルな製造プロセスと材料コストの差で生まれる低コスト性が特長だ。
DRAMに近い働きができるのがSTT-RAM、SSDに近い特長を持つのがReRAMだと考えるとよい。ReRAMは書き換え回数に制限があるためキャッシュとしては不向きな面がある。しかし、高速性と大容量とを生かした1次ストレージとして利用し、SSDをよりアクセス頻度が低いデータのための2次ストレージとしたり、SSDの管理、制御情報の保管場所としたりといった利用法が考えられる。
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