さらに、エラー発生率を低減させる技術が図3中央付近に見える「Adaptive Asymmetric Coding(AAC/適応制御型非対称符合)」だ。
ReRAMの特性の1つに、書き込み回数が少ない場合には低抵抗状態のセルでエラーが起こりやすくなり、書き込み回数が多くなると高抵抗状態のセルでエラーが増えるというクセがある。このクセに合わせて、最初のうちは低抵抗状態のセルの数を減らし、使い込むに従って高抵抗状態のセルの数を減らす仕組みでエラーを減らすのがAAC技術だ。
使い始めには、幾つかのセルのグループ(セクション)を見て、書き込みデータに0が多けばそのセクションのビットを反転して高抵抗状態のセルを多くする。セクションに1が多ければビット反転をせずそのまま書き込んでやはり高抵抗状態のセルを多くする。
やがて書き込み回数が多くなり、エラー発生が高抵抗状態で多くなったら、この逆の制御を行えば、特性変化によるエラー増大を防げるという仕組みだ。ビット反転の有無を示すフラグを立てるので容量のオーバーヘッドはあるが、書き込み回数が少ない場合には35%、多い場合には31%のエラー低減が可能だという。
さらにもう1つの新技術は、エラー訂正を行うECC(Error Correction Coding/誤り訂正符号化)の強度を、セルの書き込み回数に応じて変化させる技術だ。
ECCは強度を高めれば高めるほど大きな性能阻害要因になる。そこで一定強度のECCではなく、エラーが多くなるセルには強く、そうでないセルには弱いECCを適用すれば、ベリファイ回数を低減し、トータルでリセット時間を短縮できて性能が上がる。
これら主に3つの新技術によりReRAMのエラーが80%低減するとともに、書き込み性能は従来の33倍に当たる約500nsが達成された。
今回は、これらのReRAM制御技術に加え、SSDのRAIDの故障率を98%低減する技術や、1つのメモリセルにメモリの疲弊状態に従って書き込むデータ量を変化させる技術も発表された。これは、最初は3ビット、状態に従って2ビット、1ビットと変化させるものだ。これら新技術によりSSDの寿命が22倍延びるという。
ReRAM搭載SSDの用途として、ビッグデータの保管と解析を行うシステムが筆頭に挙げられる。従来DRAMを多数組み込んでメモリ上でリアルタイム解析を行うシステムが使われているが、電源断による影響が懸念されるとともに、ストレージへのデータ保管とアクセスが必要な場合がほとんどだ。SSDを利用するとしてもアクセス速度が問題視される。
今後は、高速で大容量のデータ処理が必要なサービスが増えるはずだ。例えば、ソーシャルゲームのプレイヤーの嗜好や属性を判断して課金アイテムをレコメンドするシステムや、Web広告の広告枠オークション、自動車の無人自動運転、動画像を利用するSNS、気象予測、廃棄物や欠品をなくす効率的食品流通システムなどが考えられる。
ReRAM搭載SSDは、このようなシステムにコスト最適なストレージを提供するだろう。また、コンパクト性を生かしたモバイルデバイスへの組み込みも有望な用途になる。
※図版出典:論文番号19.6“Hybrid Storage of ReRAM/TLC NAND Flash with RAID05/6 for Cloud Data Centers”
2013年7月にパナソニックがReRAMをマイコンに搭載して世界初の量産化を発表した。これはヘルスケア機器や火災警報器、センサー、ICカードなどに搭載するマイコンで、ReRAMの採用はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)の代替と低消費電力化を意図する。0.18μmプロセスで製造されるReRAMの容量は、プログラム領域とデータ領域を含め最大512Kビットと小容量ながら、組み込み機器のニーズに合致する。
また2013年8月には、ソニーとマイクロンによるReRAMの共同開発が発表された。当初からSCMとしての応用をもくろみ、スマートフォンやタブレット端末への適用、データセンターでの高速ストレージとしての利用を視野に入れる。既に27nmプロセスによる16GビットReRAM開発に成功し、2015年をめどとする製品化では20nm前後のプロセスを採用する予定だ。
「ReRAM搭載SSD」との関連は?
ReRAM搭載SSDには大容量で微細プロセスによるReRAMが向いており、現在のところ、ソニーとマイクロンの製品が最も近づいているようだ。ただし、世界の半導体メーカーがこぞってReRAM開発に取り組んでいて、予断を許さない状況だ。
SSDでも技術進歩が進み、NANDフラッシュメモリでは16nmプロセスの製品が登場した。しかし、既にメモリセルの微細化はほぼ限界に近い。
代わって注目されるのが多段積層化だ。メモリセルを縦に重ねてサイズをコンパクトにする方法で、2013年8月に韓国Samsung Electronicsが3次元NANDメモリセルを24層多段積層して128Gビットの容量を達成した。SSDの新たな大容量化が始まっている。
「ReRAM搭載SSD」との関連は?
ReRAMはNANDフラッシュメモリを多段積層化した上にさらに積層する構造が考えられる。
MRAMは、磁性体の磁化の向きによる抵抗値の違いでビットを表現するタイプのメモリだ。同じ原理を用いながら、磁化の向きを変えるために電子スピンを利用するのがSTT-RAMだ。
従来のMRAMは微細化が難しかったが、STT-RAMはより小さく、高速な動作が可能なので、DRAMの役割を継承する次世代不揮発性メモリとしても期待される。
「ReRAM搭載SSD」との関連は?
STT-RAM搭載SSDの製品化が進み、ReRAM搭載SSDとはライバルになりそうだ。高速性と書き換え回数(ほぼ無限)の面ではReRAMよりも優れるが、微細化と積層化に課題があり、サイズと容量ではReRAMが有利になる。SSDとの関連ではキャッシュメモリとしてDRAMを代替することが見込まれ、ReRAMとは用途を分けてすみ分けることになりそうだ。
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