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RPA、読者が1番利用しているツールは? 実態調査

RPA(Robotic Process Automation)がもてはやされる一方、その課題や失敗事例もクローズアップされているが、実際はどうなのか。また、RPAを利用中の企業はどのベンダーのツールを使っているのか? 9つのツールの順位が明らかに。

» 2020年01月29日 08時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]

 キーマンズネット編集部では2020年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「クラウド活用」「情報共有」「DX人材」「AI導入」「RPA」「働き方改革」の7つのトピックスを抽出し、調査(有効回答数1329件、実施期間:2019年11月22日〜12月20日)を行った。企業における2020年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。

 第6回のテーマは「RPA(Robotic Process Automation)」だ。

調査サマリー

  • 回答者の約4割がトライアルを含めて「RPAを導入済み」と回答した
  • RPAによる業務削減率は「30%以下」が約8割
  • RPAの導入における各フェーズで障壁があり、「ブラックボックス化が加速してしまう」の声も
  • 14.2%の企業がRPA導入時にコンサルティングを依頼すると回答した

全体の4割がRPAを導入済み

 働き方改革の取り組みを背景に2017年頃から熱い視線を集めるRPA。本調査では、RPAの利用状況から利用しているツール、課題などについて尋ねた。

 まず、アンケート回答者の勤め先での導入状況を聞いた。その結果、「現在導入していないが興味はある」と答えた企業が34.2%と最も多く、次いで「現在導入しておらず今後も導入する予定はない」(25.4%)、「本格展開中」(13.6%)、「トライアル実施中」(13.1%)、「現在は導入していないが具体的な導入に向けて検討中」(8.1%)、「本格展開完了」(3.2%)、「トライアル完了」(2.6%)と続いた。

 トライアルを含めると約4割の企業がRPAを利用している実態が分かった。企業規模別に見ると、従業員が多い企業ほど導入の段階が進んでおり、3001人以上の従業員規模の企業では5割以上の企業がトライアル以降のフェーズに進んでいた(図1)。

図1 RPAの利用状況

読者が1番利用しているツールは?

 大企業を中心に導入が進むRPAだが、ツールを導入するポイントはどこなのだろうか。「現在導入しておらず、今後も導入する予定はない」と答えた回答者を除き、RPAに期待する役割について尋ねた。

 その結果、上位を占めたのは「コストが安い」62.6%、「初心者でも扱いやすい」55.7%だった。次いで「UIが日本語」(40.7%)、「自社システムとの相性がよい」(39.4%)、「ベンダーのサポートが手厚い」(38.0%)、「GUI操作でシナリオを作成できる」(35.7%)と続いた(図2)。1年前の調査結果でも上位6項目は変わっておらず、ユーザーがRPAに期待することはほぼ変化が見られなかった。

図2 RPAツールに期待するもの

 また、トライアル以降のフェーズに進んでいる企業を対象に利用しているRPAツールを調査した。結果は下図の通り。

図3 利用しているRPAツール(複数回答可)

 アンケートの質問項目で挙げたツールの中では、「WinActor」(NTTアドバンステクノロジ)が30.6%と最も多かった。なおWinActorは、IDC Japanが2019年10月7日に発表した「2018年 国内RPAソフトウェア市場シェア」においてもトップを占めていた。

 2位以降は、「UiPath」(UiPath)が17.9%、「BizRobo!」(RPAテクノロジーズ)が10.2%、「Automation Anywhere」(Automation Anywhere)が7.4%、「Blue Prism」(Blue Prism)が2.3%と続いた。

 なおその他は「ACTIBRIDGE」(富士通)、「HeartCore Robo」(ハートコア)、「iPasロボ」(デリバリーコンサルティング)、「Robo-Pat」(FCEプロセス&テクノロジー)、「NEC Software Robot Solution」(NEC)、「アシロボ」(ディヴォートソリューション)、「DataSpider Servista」(セゾン情報システムズ)、「MinoRobo」(Minoriソリューションズ)などが挙がった。

利用中のロボットを乗り換えたいか?

 トライアル以降のフェーズに進んでいる回答者は今後ツールを乗り替える予定があるのだろうか。今後の乗り換え予定について尋ねた結果、50.5%が「乗り換える予定はない」とした。次いで「乗り換える予定があり、具体的な計画を進めている」(3.2%)、「乗り換えを予定しているが、具体的な計画はこれから」(5.3%)となった(図4)。

 リプレースを検討している理由については「デスクトップ型のRPAツールでは、管理面でExcelマクロの二の舞になりそう」「利用しているRPAツールはシナリオを管理できず、UIが見にくい」「動作が遅い」など、利用しているツールに対する不満の声が挙がった。

図4 RPAツールの乗り換え検討状況

RPAを利用している企業の約8割は、業務削減率が30%以下に

 実際に、RPAを利用している企業において何らかの成果は出ているのだろうか。トライアル以降のフェーズに進んでいる企業を対象に、RPAを利用したことにより業務の工数をどれくらい削減できたか聞いたところ、「11〜20%」とした回答が最も多く28.1%、2位が「21〜30%」(26.7%)、3位が「0〜10%」(22.5%)となった(図5)。

 RPAの導入事例を見ると、どうしても大きな効果を挙げた事例が話題になりがちだが、本調査結果を見るとRPAを利用している企業の約8割が30%以下の業務削減効果にとどまっていた。

図5 RPAの導入効果

RPA活用の障壁

 ツールに対する期待が高まる一方で、「RPAを導入する際の課題」や「経験した失敗」といったトピックにも企業の関心は集まる。実際に、トライアルや本格導入に当たってどのような障壁があったのだろうか。

 トライアル時の障壁については、「導入成果の算出が難しい」(41.8%)、「事前準備が面倒(業務の棚卸しなど)」(39.0%)、「RPAロボットの開発スキルを持った人がいない」(33.9%)、「導入、開発費用がかさむ」(31.6%)、「ツール選定が難しい」(25.3%)が上位に挙がった(図6)。

 本格展開時の障壁に関しては、「期待したROIが出ない」(43.9%)、「RPAロボットのスキルを持った人がいない」(39.4%)、「ロボットの管理が煩雑」(36.7%)、「ロボットの運用が煩雑」(36.0%)という項目が続いた(図7)。

(図6)RPAのトライアル時の障壁
(図7)RPA本格展開時の障壁

 RPAのトライアルや本格導入時の障壁をフリーコメントで聞いたところ、RPA導入の各フェーズにおける課題が寄せられた。中には「RPAを廃止したい」という嘆きも見られた。

 例えば、RPA導入のプロジェクトの初期にはRPAを適用する対象業務を探し、現場と開発者がコミュニケーションを図りながら要件定義や開発を進める必要がある。しかし、このフェーズについては、「RPA化すべき適切な業務が不明」「そもそもRPAを適用できる業務が少ない」「RPA化する業務の担当者とRPAのシナリオ開発者の間を取り持つことが難しい」という悩みが生じるようだ。特に業務担当者と開発者のコミュニケーションについては、一般に「お互いの認識や語彙(ごい)を理解することからはじめる必要があり、やりとりに思った以上の労力がかかる傾向にある」といわれている。

 RPAを運用する際の悩みとしては、「自動化した作業内容に関して理解している人がいなくなると、ロボットが野良化する」「RPAで業務のブラックボックス化が加速する」「メンテナンスの必要性から障害が発生する」といったコメントが挙がった。

 また、RPAを展開する際の課題としては「組織体制の在り方まで切り込めない」「各部門で主導しているため、プロジェクトがバラバラ。業務の整理や棚卸しをせず、部分最適や個人最適で導入されてしまう」といった意見が見られた。

 なおユーザー企業の悩みを受けて、近年は各事業者がRPAの導入をサポートするコンサルティングサービスを充実させている。しかし、RPAの導入に興味がある、あるいはトライアルを含めて利用している企業のうち、「パートナー企業などにコンサルティングなどを依頼している(する予定)」と答えた企業は2割にも満たず、「依頼しない」(43.5%)、「分からない(42.2%)が過半数を占めた。

 依頼しない理由を深掘りすると、「コンサルティング事業者は自社のことを理解し得ない」「知見を持った人を採用した方がよい」「コンサルティング事業者を信じられない」といったコメントが集まり、外部のコンサルティングサービスの利用に「難しさ」を感じるケースがあるがあるようだ。RPAの活用を進める過程では、現場の事情や業務を深く理解する必要があるため、社外の人間をどう巻き込めばよいのかがイメージしにくいのかもしれない。

 その他「予算がない」といった理由で依頼が困難なケースや、「自社内およびグループ内のIT関連会社で対応できている」など外部の力を必要としないケース、「導入当初はコンサルティングサービスを利用していたが、内製化へ移行した」といった導入フェーズによっては依頼をするケースが見受けられた。

 RPAの導入についてはまだ明確なベストプラクティスがなく、企業は壁にぶつかりながら思考錯誤でプロジェクトを進めている印象だ。今回の調査結果を含め、先行企業がどのようなアプローチで取り組みを推進し、課題に向き合っているのかを知ることで、自社の参考になるヒントを得られるかもしれない。

今後、RPAに期待する機能は?

 最後に、回答者全員を対象にして「今後RPAに期待する機能」を聞いた。1位は「低コストでの既存システム間連携」(42.7%)、2位は「AI-OCRを組み合わせた自動文字認識とデータ入出力」(40.0%)、3位は「AI(人工知能)画像認識を使った処理の効率化」(38.4%)、4位は「音声データ解析を組み合わせた自動入出力」(30.5)、5位は「推論や予測分析などのAIを使った処理の効率化」(29.2%)といったAIとの連携機能が続いた。

 最近は、RPAベンダーがAIとの連携機能を強化しており、AIを提供するパートナー企業の拡充や連携のしやすさなどを競っている。かたやRPAの取り組みで成果を出したユーザー企業からは「AIの利用にも着手したい」との声を聞くことも多いため、今後はRPAを契機により高度な技術を活用するというパターンが確立される可能性がある。

(図8)今後、RPAに期待する機能

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