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「OpenClaw」で年間2000万の人件費削減も AI導入の専門家が明かす「成果が出る4つの型」

AIに相談はできても、業務そのものは動かない。その壁を越え、自社の仕事の9割超をAIエージェントに移す取り組みが現れている。AIを社員として雇い、実務で成果を生む組織づくりの実像が語られた。

» 2026年06月15日 07時00分 公開
[平 行男キーマンズネット]

 生成AIを業務に取り入れる企業は増えた。だが、その多くはAIを「相談相手」として使うにとどまり、実際の業務が自動化されるところまでは進んでいない。AIの重要性は理解していても、日々の業務に追われて着手の優先度が上がらないためだ。

 AI導入コンサルティングやAI教育・研修を手掛けるNEXT INNOVAITIONにおいて、AIエージェント基盤「OpenClaw」の導入支援を100件以上手掛けてきた黒山結音氏(代表取締役)の講演から、AIを業務プロセスに組み込み、成果につなげる道筋が見えてきた。

AI導入の専門家が語る「相談相手」で終わらせない方法

 黒山氏が一貫して掲げるのは、抽象的な可能性ではなく実務の成果だ。「AIエージェントがいかにすごいかという話はよく聞きますが、これだけ売り上げが上がった、これだけ原価を削減できたというリアルな話は、あまり聞かないのではないでしょうか。私たちは実務を変えるという一点に注力してきました」と話す。だからこそ同氏は、AIを相談相手で終わらせない方法にこだわってきた。

 では、なぜ多くの企業でAI活用は相談相手止まりになるのか。黒山氏は、困った時だけAIに質問するという使い方から抜け出せないことを代表例に挙げる。AIが重要であることは理解できても、着手する緊急度を上げづらい。これが、活用の進まない典型的なパターンだという。

 「今日中に終わらせる仕事、明日までに出す書類、今月末に達成すべき数字が次々と降りかかってくると、AI活用は後回しになってしまいます」と黒山氏は語る。AIはいずれインフラになるという認識はあっても、いま使っていなくても困らない以上、優先度が上がらないというわけだ。この状況を抜け出す鍵が、AIを業務の外側ではなく内側に組み込む発想だ。

 「業務の外側にAIを置き、助言役として使っているうちは活用は進みません。業務プロセスの中に入れ、AI自身が仕事を回す仕組みを作る。これができれば、活用は必ず前に進みます」と同氏は強調した。

AI活用で「まず始めにすべきこと」は

 では、何から始めればよいのか。黒山氏が強く勧めるのが、業務の棚卸しだ。

 同氏自身、業務をAIに任せる体制づくりに着手する前に、まず自分がどれだけの業務を抱えているかをAIと一緒に洗い出した。請求書作成やメール対応、日程調整、定例会議の準備といった単位で数えると、その数はおよそ100件に上るという。

 棚卸しのポイントは、1人で判断しないことだ。「人間が自分だけで考えると、これはまだAIには無理だ、自分にしかできない仕事だという先入観が必ず働きます」と黒山氏は話す。そこで同氏は、AIを壁打ち相手にしながら、自動化できる業務とできない業務をひとつずつ仕分けていった。

 その結果、100件のうち92%がAIで運用できる範囲に入った。内訳は、50件をAIだけで処理し、42件はAIと人間が協働し、残る8件のみを人間が担うというものだ。セミナーへの登壇や商談での提案、動画での発信など、生身の人間が必要な業務だけが手元に残ったことになる。先入観を排して見直せば、想像以上に多くの業務をAIに渡せるというのが、同氏の実感だ。

役割で分けた5人のAI社員

 NEXT INNOVAITIONでは、職務ごとに異なる“AI社員”を配置している。スケジュールやタスクを管理する「AI秘書」、案件管理や見込み客リスト・CRMの管理を担う「AI COO」、SNS運用やブログ投稿、プレスリリースを担当する「AI CMO」、自社で使うツールを開発する「AI CTO」、そして経営者の壁打ち相手となる「AI参謀」の5つだ。単一のアシスタントではなく、役割を分けた複数のAIをチームのように運用している点が特徴だ。

 これらを動かす基盤が「OpenClaw」だ。ブラウザの操作やローカルファイルの操作、コマンドの実行までを自律的にこなすオープンソースのAIエージェント基盤で、IDとパスワードを渡せば多くのWebサイトに入り、作業を代行する。OpenClawについて黒山氏は、「人間がPCを使ってこなす作業は、ほとんどできてしまいます」と説明する。OpenClawは話題を集めており、相性が良いとされる「Mac mini」が世界的に品薄になるほどだ。

 効率化の効果は幅広い業務に及ぶ。商談用の提案資料やセミナーの登壇資料はAIが作成し、構成や話す内容まで考えさせている。会計ソフト「freee」と連携した入出金の管理や入金漏れのチェック、経費の仕訳入力も任せているという。自社で運営するWebメディア「あなたのAI顧問」では、2日に1回ほどの頻度で投稿する記事の執筆からサムネイルの作成、メディアへの投稿までを、OpenClawが一貫して自動運用している。

NEXT INNOVAITIONのAI組織(出典:講演時の投影資料)

朝7時に1日の準備が完了する仕組み

 黒山氏が象徴的な出来事として紹介したのが、毎朝の自動ブリーフィングだ。同氏のスケジュール管理は、複数のツールの連携で成り立っている。「Googleカレンダー」の予定や「Chatwork」「Slack」「Discord」でのやりとり、AIボイスレコーダー「Plaud NotePin S」で記録した会話などを、OpenClawが全て突き合わせる。これにより、いつ、どこで、誰とどんな話をしたかを、AIが把握する。

 そして毎朝7時になると、その日の商談相手や前回までの経緯、想定される論点をまとめた通知がDiscordに届く。「朝起きると、1日分の10件ほどの打ち合わせの準備が全て終わっています」(黒山氏)。「ChatGPT」や「Gemini」といった一般的なAIツールでは実現しにくく、行動文脈を継続的に学習するAI社員だからこそ可能になる使い方だという。

 この仕組みは営業の現場にも応用できる。営業担当者に同じ環境を持たせれば、誰がどの商談でどんな話をしたかをデータ化でき、受注率の高い担当者と低い担当者の差を分析もできると同氏は指摘する。

 もっとも、全てをAIに任せればよいわけではない、と黒山氏は線を引く。「自分にしかできない、最も価値を発揮できる仕事に集中するために、それ以外の仕事をAI社員に任せる。この使い方が一番よいと考えています」(黒山氏)。手を動かすだけの定型業務はAIに移し、人は判断や対人の仕事に注力する。この役割分担こそが、AI組織を機能させる土台になる。

朝ブリーフィングのイメージ(出典:講演時の投影資料)

年間2000万円の人件費を削減した現場

 講演では、同社がOpenClawの導入支援を提供した企業の事例も紹介された。

 年商30億円規模のある営業会社では、営業担当者を支える事務業務をもともと8人で回していたが、OpenClawの導入後は同じ業務量を3人で対応できるようになり、年間で約2000万円の人件費削減につながった。営業担当者自身の数値管理や顧客の一次対応、新人教育にもAIを活用しているという。

 同社はさらに、AI活用を前提とした新規事業を、AIネイティブの組織として立ち上げた。パイプラインの管理などを自動化し、少数精鋭で運営している。

 別の営業会社では、営業リストの作成と精査をOpenClawに任せている。過去に受注につながった顧客の傾向を分析してリストを作るため、アポイント獲得率が代理店の中で群を抜き、営業成績で全国1位を獲得した。他社の担当者が就業後に1〜2時間かけてリストを作る一方、この会社では定時に退社しても成果が上がる。その状況に、元請けから「システムを使わせてほしい」と引き合いが来たというエピソードも披露された。

 業種を超えた活用も広がっている。不動産会社では、ポータルサイトのIDとパスワードをOpenClawに渡し、条件に合う物件情報を自動で収集している。人材会社では、スカウトメッセージの送信から応募者への一次対応までを自動化し、対応の速さによって成約率が20%向上したという。黒山氏は、Web操作を伴う自動化のニーズがあり、ノウハウはあるが手を動かす人手が足りない業務と、OpenClawは特に相性がよいと指摘する。

営業会社の導入事例(出典:講演時の投影資料)
営業会社、不動産会社、人材会社の導入事例(出典:講演時の投影資料)

成果が出る4つの型

 黒山氏は、こうした導入事例から見える「成果が出る型」として4つのパターンを挙げた。CRM連携や自動分類で顧客対応の初動を速める「問い合わせ対応型」、予定やチャット、音声メモから商談準備を自動化する「社長秘書型」、競合の観測やコンテンツ制作を効率化する「マーケ支援型」、そして請求や入金、月次処理を任せる「バックオフィス型」だ。

 共通するのは、AIに単なる「作業」ではなく「業務」を渡している点だ。黒山氏自身も、入出金の管理や契約、請求、メール対応をAIに移している。「もう1年半ほど、自分ではメールを1文字も打っていません。内容を確認して送信ボタンを押しているだけです」と明かす。個別の指示ではなく、業務のまとまりごと任せることが、成果につながる分かれ目だという。

 自分でなくてもできる仕事をAI社員に任せ、人は本来集中すべき業務に注力する。黒山氏が示したのは、限られたリソースでも成果を生み出すための、AIと人の役割分担の考え方だった。

AI社員を配置して成果が出る型(出典:講演時の投影資料)

本稿は、2026年6月4日に開催されたカンファレンス「DX/AI RUNNER EXPO 2026」(主催:RUNNER EXPO運営事務局)の講演「24時間働くAI社員を雇う? 生産性の高いAI組織の作り方」における内容を基に、編集部で再構成した。

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