脱オフコンが見えてきた! 10カ月で2国2社統合、旭化成はどう乗り切ったか(2/3 ページ)
「2社2国をまたぐERP統合、10カ月で本稼働させて」さてどうする?
深沢氏らは、業務効率化を目指してコストや工数を考慮して、全ての基幹業務システムを置き換えて統合する方針ではなく、必要な情報を正しく共有できる仕組みにそろえていくことを重視してITの最適化を推進する方針を立てた。
中でも、販売会社系ではグループ内で展開実績があるDynamics NAVを中心に据えた共通化を有力視、製造会社でもDynamics NAV採用を検討するが、「まだ導入実績がないため、まずは適用が可能かどうかを検証する計画」だ。まずは販売会社での基幹業務システム効率化の取り組みを見ていく。
「2013年12月に、経営トップから『欧州拠点の旭化成繊維ドイツと旭化成繊維イタリアの合併会社設立を検討している。合弁会社設立の期日に向け、必要な準備を進めよ』との指示があった。合併の際に導入する業務システムの要件は、『拠点が扱う商品群ごとに損益が管理できること』。しかも、合併の期日は10カ月後を計画していたことから、限られた時間の中で迅速な対応が必要だった」と、深沢氏は当時を振り返る。
短期間での合併プロジェクトに対応すべく、早速、現地調査をスタート。合併にかかわるメンバーを至急招集し、指示を受けたその月にドイツとイタリアの拠点を訪れ、業務課題やシステム調査および保守ベンダーへのヒアリングを実施したという。
「調査の結果、両拠点ともローカルの業務パッケージを利用していたが、業務レベルが高いとはいえない状況だった。合併後には80億円近い会社となるため、業務システムの見直しが急務であると判断した」。
現地調査の結果を受け、2014年1月から2月にかけて、合併後に新たに導入するERPの選定作業を実施。製品選定に際しては、「旭化成グループ内で導入実績のある3製品を候補としてピックアップし、比較検討を行った。そして、短期間での導入が可能で、かつ低コストである点、また、旭化成メディカルなど旭化成グループ内で多くの導入実績がある点を評価し、Microsoft Dynamics NAVに決定した」としている。
Microsoft Dynamics NAVとは
Microsoft Dynamics NAVはMicrosoftが提供するERP製品「Microsoft Dynamics」シリーズの1つ。多言語対応や、各国や地域の法規に対応していることから特にグローバルで展開する中堅企業に適した製品。「Microsoft Office 365」製品との機能親和性が高い点も特徴の1つ。本稿で取材に協力いただいたパシフィックビジネスコンサルティングはMicrosoft Dynamics NAVの多言語対応や海外での導入に数多くの実績を持つ。
現地はIT担当者なし、しかも長期休暇――集中と選択の判断は
ERPの選定が終わった一方で、次に問題となったのが、「ドイツ、イタリアともにIT担当者が存在していない」ことだった。そこで、Microsoft Dynamics NAVの導入プロジェクトでは、グローバルベンダーとローカルベンダーを採用。グローバルベンダーには、実績のあるPBCを選定した。そして、ローカルベンダーには、PBCが推薦した大・中・小規模の3ベンダーから選考を行い、最終的に現地アシスタントとの相性で、中規模ベンダーを選定した。
ここから、いよいよ本格的にMicrosoft Dynamics NAVの導入プロジェクトを進めることになるが、残された約7カ月の中で、解決すべき課題は少なくなかった。とくに、欧州では7月はサマーバケーションとなるため、関係する従業員が集まらなくなるという課題を抱えていた。「そこで、合併時のシステム構築における主要課題を6月までに決定。この時点で、必要不可欠の要件だけを取り組み、合併後でもできる内容は二次開発に回すようにした。あわせて、インフラにクラウドを採用することも決定した」という。
合併時の主要課題については、以下の4点を挙げている。
- (1)ドイツとイタリアそれぞれの拠点で、品名コードをはじめ、各種コードが全て異なっていたため、コード整備を行う必要があった。
- (2)現地にMicrosoft Dynamics NAVを知るスタッフが誰もいなかったため、早めのトレーニングが必須であった。
- (3)ドイツ拠点のスタッフは、イタリア拠点には転勤しないことから、現状のスタッフで業務が回るか早期に検討する必要があった。
- (4)合併によって取り扱う商品群が大幅に増加するが、各商品に損益を管理することが求められた。
品目コードのマスター登録は手作業
これらの課題を解決するため、深沢氏は、「1カ月に1回は現地拠点に出張し、PBCやローカルベンダーと交渉しながら、短期間でさまざまな関係者にレビューを行った」と当時を振り返る。
深沢氏はそれらの活動に加えて、現地の営業倉庫を全て訪問。自らの目でラベルやロット番号の管理状況、棚卸、倉庫内デザインなどを確認していったという。
この情報を基に、深沢氏自身がヒアリングした情報を整理し、品名からコード体系までマスターデータを、Excelを駆使して手作業で作成したという。大変に骨の折れる作業だが、これがなければ、品目ごとの情報詳細を把握できないためMicrosoft Dynamics NAVにアップロードした。
この時、併せて「購買や国内販売、輸出など、合併後のイタリア拠点の業務フローも自分で作成した」という。
一方、PBCは、グローバルベンダーとして主にプロジェクト管理を担当し、ローカルベンダーとの調整を行いながら、ユーザートレーニングやユーザー受入テストを実施。短期間のスケジュールの中で、主要課題を全てクリアし、合併期日の2014年10月までにMicrosoft Dynamics NAVの導入プロジェクトを完了した。
Microsoft Dynamics NAVの導入効果について、深沢氏は、「合併後のイタリア拠点は、業務量が倍増したが、Microsoft Dynamics NAVによって大幅な業務効率化が実現できたため、業務担当スタッフは合併前と同じ3人のままで対応することができた」と、新たにスタッフを増やすことなく、規模が拡大したイタリア拠点の業務管理に対応できていると述べた。
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