すご腕アナリスト市場予測
紙は減るのか? 働き方改革がプリントに与える影響(3/3 ページ)
紙にまつわるユーザー/ベンダー事情
企業がプリントと今後どう向き合うべきか
では、今後企業がプリント環境とどう向き合っていけばいいのだろうか。実は、プリントを中心に考えるというよりも、業務そのものの効率性を考えたうえで、紙の位置付けを考えていくことが重要な視点だと考えている。すでに企業にはプリント環境が整備されており、定常的に問題なく運用されていることだろう。だからこそ、紙を害悪として捉えるのではなく、これから業務自体をどうしていくのかという業務改革のなかで、紙を使った方が効率がいいのか、根本的に変えるべきなのかという分析をしっかり行っていく姿勢が企業に求められてくるだろう。紙のほうがチェックしやすければ残すべきだし、次の人に渡してすぐ捨てるような業務であれば、データ共有する仕組みを別途考えたほうが無駄なく効率的になる。なかには、それぞれの業務が把握できておらず、紙を次の人に渡した後に、その内容を再度入力するといった業務フローで運用しているケースもあるため、全体的な業務の流れをしっかり見極めていく必要があるのは間違いない。逆に、年に1度ぐらいしか行わない紙の業務を、わざわざシステムを導入して変えていくことになれば、投資対効果の薄い結果となってしまう。業務全体を見ていく包括的な見直しのなかで、紙による業務の位置付けを再度考えていくことが重要だ。その意味でも、働き方改革をきっかけに業務を見直すというのはいい機会だろう。
プリンタ・複合機ベンダーの生き残り戦略
対して、プリンタや複合機を提供するベンダー側は、今後どんな戦略で臨んでいくべきなのだろうか。日常的にベンダーと接するなかでは、大きく3つの戦略をとっているケースが見て取れた。
まずオフィス内の展開の1つとして、現状進められている働き方改革や業務ワークフロー改善などの推進支援をサービスとして展開していく取り組みだ。確かにプリント量は減ることになるものの、業務の効率化を支援することで、コンサルティングやソリューション導入などを通じて何からの収入を得ていくことも可能だろう。すでに業務改善ソリューションを積極的に仕掛けているベンダーは多く、業務改善に関連したビジネスを収益の柱の1つに育てていこうという動きは活発だ。
オフィス街に目を向けると、インダストリー系のプリンティング領域に関する取り組みが挙げられる。例えば壁紙や服の模様といった領域では、すでにデジタルプリントが普及し始めており、ベンダーが持つインクジェット技術であれば、どんなものにも印字できる。もちろん色のコントロールなどはベンダーのノウハウが詰まっている部分であり、インダストリー系のプリンティング事業を広げていく活動に注力しているベンダーも多い。
そして最後は、全く新しい分野に進出していくことだ。例えば医療分野に進出しているキヤノンであれば、X線間接撮影カメラの開発といった画像処理技術などの要素技術を使って、医療分野への進出を果たしている。そういった領域を自ら開拓していくアプローチは以前から行われており、今後も積極的に推進していくことになるだろう。
注目されるスキャナーニーズ
プリントにまつわるトレンドのなかで注目されるのが、紙をスキャニングすることによるデジタル化ニーズの高まりだろう。名刺情報をスキャンしてクラウド上にアップロードしたうえでCRMと連携させるという動きはもちろん、業務効率化のソリューションとして期待されているRPA導入に際してもスキャナーのニーズが高まっている。具体的には、RPAを活用する前に紙の情報を電子化する必要があるが、そこでOCR技術を活用してスキャナーによる電子化を目指すといった業務改革の動きが活発化している。なお、電子帳簿保存法におけるスキャナー要件の緩和などにより、紙の領収書をスキャニングするニーズも増えてくることが期待されているが、現状は当初ほどの大きな潮流とはなっていないのが現実だ。いずれにせよ、いまだに現場に多く残っている紙の情報をデジタル化するためのスキャナー活用は、今後も続いていくことだろう。
グローバルで見たプリント市場
今回調査した働き方改革に関する話題とは直接関連はないが、海外でのプリンティング需要についてもここで紹介しておこう。グローバル前提で見ると、紙の量や機器の出荷額はほぼ横ばいで推移しており、日本のように先進国では毎年数%程度の減少が続いている半面、アジアではプリントを行う人口が増加している関係でニーズが伸びているのが今の実態だ。おおよそ5年の範囲で予測しているが、プリント領域についてはそこまで悲観的なものとはなっていない。ただし、プリント量や単価、出荷台数などは数%ずつ減っているのは間違いなく、じりじりと規模が縮小している状況にあるといえる。それでも、いまだに数兆円規模を誇るマーケットとして日本企業がグローバルにおいても強い領域だけに、今後も注目したいところだ。
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