すご腕アナリスト市場予測
紙は減るのか? 働き方改革がプリントに与える影響(2/3 ページ)
働き方改革がプリントに与える影響とは?
調査対象
IDC Japanでは、定期的にプリントに関連した市場調査を実施しており、前回はプリントと世代間のギャップを中心に調査を行うなど、調査タイミングに適した施策とプリントに関連した影響度合いを調査してきた。今回は、多くの企業が取り組みを加速させている働き方改革においてプリントがどう影響を及ぼしているのかについて調べた。
対象となるのは、企業内でプリント環境の導入判断を行う方を対象800人で、その主なターゲットはプリンタや複合機導入を決断する総務系/情報システム系の役職者やその役職者に対してアドバイスする人がその中心となる。おそらく働き方改革とともにプリント環境の改善を考えるケースは少ないと考えられるため、働き方改革を推進する専門の部署などがメインの対象に設定していない。なお、この調査結果は、国内プリント関連市場の中長期的変化を予測するための基礎データとすることを目的にしている。
調査で明らかになった仮説とのギャップ
実際に行った調査では、当初は働き方改革に対する取り組みのなかではプリント量が減っていくとストレートに回答が出てくるという仮説を持っていたが、働き方改革全般でのヒアリングでは、減るというよりも変わらないか減らないという回答が実際には少なからず見受けられた。そこで詳細に分析を進めていくと、実際の取り組む施策によってギャップがあることが明らかになった。
例えば長時間労働の是正を目指して労働時間を減らすための取り組みを行っても、そもそも仕事量自体が減るわけではなく、プリント量との関係性は直接的につながりにくいというのが正直な意見のようだ。一方で、モバイルワークやフリーアドレスといった移動しながら仕事ができる環境づくりに取り組むと、紙を持ち歩くワークスタイルでは都合が悪く、新たな働き方にあったワークフローに改善していくなかでは、紙に依存しないワークスタイルに変えていく必要がある。そんな具体的な取り組みにまで落とすことで、働き方改革がプリント量に与える影響が垣間見えてきたのが実態だ。
「フリーアドレス」「テレワーク」がプリント量との相関あり
ここで具体的な調査結果について見ていこう。今回の調査で「あなたの会社の働き方改革が進むことは、プリント量にどのような影響があると思いますか」と質問したところ、オフィス内で自席を決めず自由に執務場所を選ぶことが可能な「フリーアドレス」環境の整備は、42.2%もの回答者がプリント量に大きくマイナスの影響がある、あるいはマイナスの影響があると回答している。また、オフィス外で業務遂行を推進する「テレワーク」活動については、38.3%が大きくマイナス/マイナスの影響があると回答しており、これら2つの取り組みでプリント量が減ることが明らかになった。
ただし、全体の42.9%が取り組んでいると回答した残業時間の短縮活動については、プリント量にマイナスの影響があるとする回答者だけではなく、プラスの影響があるとする回答者もある程度存在している。他にも、有給休暇取得の向上やフレックス制など一連の労働時間短縮に関する働き方改革活動についても同様の傾向が見られたことから、働き方改革に関連した取り組みのなかでもプリント量にほとんど影響を与えないものもあることがわかった。実際には、採用労働制やインターバル性、人事評価の見直しなど、働き方改革に関連した施策について聞いているが、フリーアドレスやテレワークほどプリント量に影響があるという結果が顕著に出ているものはなかった。
フリーアドレスについては、執務エリアのどこにいても自由に働ける環境を整備するために会議室スペースの改革を行い、大型ディスプレイの設置やプリンタ集約などを行ったうえでタブレットを社員に支給するなど、働き方だけでなくオフィスのありようを変えていくことが求められる。紙を減らす、プリントすることを制限するのではなく、いつでもどこでも働けるフリーアドレス環境としてのあるべき働き方を推進していく過程で、結果として紙が減ったというケースが多いようだ。フリーアドレスにしたとある企業からは、モバイルワークの推進からテレワークも実施しており、どこからでも情報にアクセスできるよう情報共有基盤を整備したことで、プリントする機会自体が減ったという声も寄せられている。
テレワークは、在宅勤務も含めて政府が進める働き方改革の一環であり、自宅や外出先などからでも仕事ができるような環境づくりだが、いつでもプリンタが身近にあるわけではないため、結果的に紙が減るということは想像しやすい。テレワークでは情報共有できる基盤はもちろんのこと、社外からでも会議に参加できるような環境整備も含めて実施していくと、紙によるワークフローではそもそも業務が成り立たなくなり、紙による業務プロセスをあらためる必要性が出てくる。紙を削減するという意識ではなく、テレワークを推進するための働き方を考えると、紙を減らしていかざるを得なくなる。
テレワークでプリント量が減らない要因
ただし、テレワークによって企業が把握しているプリント量は確かに減る可能性はあるが、自宅にて業務を行う際に個人のプリンタで紙を出力する機会は当然でてくる。セキュアな環境を整備している企業の場合は、プリント機能自体を制限しているケースもあるが、BYOP(bring your own printing)といった言葉もある通り、プリント自体は自宅でそれなりに行われているケースは少なくないと見ている。いずれにせよ、企業が把握していない範囲にはなるため、結果としてプリント量が減ったという結果にはなる。
またテレワークではプリント量がプラス、もしくは大きくプラスになると回答している方が30%以上いることも見逃せない。実際にどんな理由でプラスになるのかは調査対象外だったものの、自宅や社外で仕事をしていても、客先に持参する資料などを印字する必要があり、場合によっては余分に印刷して常に持ち歩くといったことも考えられる。テレワークという働き方を取り入れたことで劇的に紙が増えることはないと思われるが、それでも増える可能性があると考えている層も一定数残っているのが実態だろう。
企業に聞いた10年後のプリント量予測
同じ調査なのなかで「あなたの会社の将来のプリント量について教えてください(10年後)」という質問も行っている。こちらの質問に関しては、SOHOから大企業までどの企業規模であっても、半数以上が10年後は紙が減っているという回答だった。また、働き方改革に積極的な企業ほど、将来的にはプリント量が減ると回答しており、相関関係が見て取れた。企業の働き方改革の取り組みが進むことは、プリント量の減少を加速する要因となる可能性があると考えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
すご腕アナリスト市場予測
この記事の著者
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ニンテンドーシステムズ開発者が明かす、通信「低遅延・安定運用」のコツ【事例集】
-
2
「Gemini Notebook」で利用者10倍 シニア社員をAIヘビーユーザーにした首都高の考え
-
3
スクエニ開発陣が「ドラゴンクエストX」の世界観を守るのに「Gemini」が必要だったワケ
-
4
「新しいOutlook」って使ってる? 移行で変わるメール誤送信対策
-
5
「情シスやめます」と言われたら――ある日突然「ゼロ情シス」になった企業のその後
-
6
「脱Excel」しても、いちばん働いているのはExcel 給与計算の調査に見る実態
-
7
使わなくなったPCを、企業が処分したくてもできない理由
-
8
千代田区、Copilot全庁導入で月2000時間削減 10カ月でAIを根付かせた定着の仕掛け
-
9
“壊してもいい”が現場を変えた 岩塚製菓、生産性1.3倍を生んだDX定着の条件
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー