中部電力「カラスの巣見守り」の裏にある巨大データ分析基盤の秘密(1/2 ページ)
制御系も基幹系も、外部データも丸ごと分析するためのデータ基盤を持つ中部電力。カラスの営巣を見守る裏側で、巨大なデータ分析基盤を運用する。一体何をどう使っているのか。
システムが大規模で複雑な場合、基幹システムと制御システムの両方から事業に役立つデータを取り出して活用するには相応のコストと時間が必要になる。
その中でも発送電事業者はスマートメーターなどの技術革新をきっかけにITによる事業運営の大改革が進む業種といえる。IT活用による事業運営効化や新規事業創出に積極的に取り組む中部電力もその1社だ。本稿では中部5県の電力需要に対応する中部電力におけるIT活用、特にデータ分析基盤とその活用例に注目して記事を紹介する。
※本稿はTableau Japan主催「Tableau Data Day Out 東京」(2019年5月14日、東京で開催)での講演を基に再構成したもの。
BIが「データをダウンロードするだけ」になっていた
中部電力は将来にわたって電力供給を安定させる目的で、ICTを活用して電力ネットワークを高度化する取り組みを続ける。その一方で、顧客である「個人の生活の質向上」に向けたサービスの開発を推進する渦中にある。
2つの異なる取り組みに共通するのは、いずれも、送配電網や施設内の機器などが日々生み出す膨大で多種多様なデータを、蓄積して加工や分析を施して活用する点だ。
スマートメーターや新型の開閉器(配電制御スイッチ)などの機器に加え、再生可能エネルギー電源の連係など、電力系統全体の構成や機器は大きく変化しつつある。ネットワーク全体を可視化するだけでも大変な労力を要する。これに加えて顧客向けに新サービスを開発したり提供したりするには、自社の電力系統から得られるデータだけではなく、外部データを受け入れて統合する必要もある。
中部電力は、古くからIT化に取り組んできたが、大規模化する基幹システムや制御システムは、個々の環境でサイロのように独立した構造を持つため、連係したり統合したりと行ったことが難しい状況だった。「システム内部のデータを自由に抽出して柔軟に加工し、分析することが難しくなっていた」と鈴木氏は明かす。
「業務部門はそれぞれの業務のデータしか知らず、データを利用しようと思っても費用と時間がかかる。共通BIツールを導入したものの、データが固定的であったり動作が遅かったり、UIが使いにくかったりと問題が多く、データ探索や、可視化、分析に使うより、各種システムからのデータダウンロードツールとしての利用にとどまることが多かった」(鈴木氏)
その結果、「データ活用といえば『ごく一部のユーザーがExcelで挑戦すること』という認識になり、新しいデータ活用のアイデアがあっても、検証や検討に取り掛かることもできない状況だった」という。この状況を打破するきっかけが、セルフサービスBIツール「Tableau」の導入だった。
「多様なデータを活用し、業務の効率化・高度化、価値創出を実現するのが理想だが、データがすぐ使える状態で蓄積されておらず、ユーザーのアイデアやニーズの具体化が進まない環境にあった。ユーザーがストレスなくデータを触れる環境と施策が重要だが、Tableau導入は従来のデータ利用環境を変え、データ分析の普及を進める起爆剤になった」(鈴木氏)
同社のデータ利活用への取り組みは、大量データを取り扱うデータプラットフォームの整備(プラットフォームグループが担当)と、データ利活用の全社に浸透に向けたユーザー支援(デジタル化推進グループが担当)の両面で進められた。
データプラットフォームのアーキテクチャ上の工夫
データプラットフォームのアーキテクチャは図2にある通りだ。
中核を担うのは商用Hadoop基盤(MapR)だ。ここに各種基幹システムなどからのデータをCSV形式で格納する。これをバッチプログラムで加工して他のシステムに連携する。
「BI領域」にはParquet形式(分析用途に適する列指向型フォーマット)に変換して保管する。Parquet形式となったデータは、場合によってIT部門の管理ユーザーによって、クエリエンジンであるApacheドリル(drill)を介して参照し、抽出ファイル(hyper形式)をパブリッシュするか、スケジュール機能によってデータを抽出し、Tableauサーバに送り込む。抽出の対象はホットデータのみにしてシステム負荷を低減している。
図2の中央はユーザー部門のパワーユーザーだ。このパワーユーザーがダッシュボードを作成する役割を担う。作成したダッシュボードはパワーユーザー自身も参照するし、ユーザー部門のライトユーザーもブラウザ(Viewer)から参照する。
ただし、業務の必要に応じてホットデータばかりでなく、過去データ(コールドデータ)も合わせて分析したい場合がある。その場合には、DR(災害対策)サイトにコピーされたBI領域のデータを参照する仕組みとした。分析用に別途コールドデータ格納場所を用意するのではなく、DR用途のデータ保管場所をBI参照用にも有効活用しているところが、同社ならではの優れた工夫といえるだろう。
4つの適用事例
水野氏は中部Tableauユーザー会の会長を務める「専門家」だ。デジタル化推進グループとしての活動の大きなテーマはデータの利活用を社内で広く展開し、普及させることにある。
社内での展開は次の3ステップで進めているという。
- データ活用の課題の相談を受け、Tableauで解決可能かどうかを判断、可能性があれば相談者と対面で可視化や分析を試す「相談フェーズ」
- Tableauをインストールして実データでサンプルを作成したり、操作に関する支援をして、実際業務展開に向けた課題を整理する「検証フェーズ」
- ダッシュボード作成の支援、調整「適用フェーズ」
この他、社内利用の「データ利活用支援サイト」を作成し、問い合わせ対応やTipsの公開など、利用のガイドや動機付けになるコンテンツを提供する。加えて自前の教育プログラム(3時間)、Tableau Doctor(月1回、ベンダーの専門家との対話機会)の開催などのユーザー教育、Tableau関連のインストール申請の簡素化などの社内ルールの策定を実施しており、さらに社内報への社内データ可視化情報の掲載や、社外での同氏の活動を広報したりして認知度向上に努めているということだ。
社内のTableau適用事例は多数あるそうだが、そのうち公開可能なものを4つピックアップして紹介する。
事例1:スマートメーターを活用した太陽光発電量予測検討
発電量の変動が大きい太陽光発電の電力網を電力系統に接続する場合、あらかじめ発電実績を把握して条件に応じた発電量の予測(仮説)を立てる必要がある。
中部電力では、この予測を効率化する目的でTableauを活用する。
太陽光発電の電力供給者との契約数やスマートメーターのデータなどをデータ基盤から収集してTableauサーバーにパブリッシュして公開しておけば、発電量を効率良く予測できる。
従来は何段階かの作業を経てやっと可視化していた作業を簡素化し、全員が同じデータを見て会話できる環境を作った。データのばらつきもなくなったと好評価を得ているという。
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