DaaSが情シスを"中抜き"も クライアント仮想化に見るデスクトップ環境の攻防(2/3 ページ)
2018年の市場動向からDaaS市場の今後を占う
ここで、2019年5月にIDC Japanとして発表した、2018年におけるクライアント仮想化シェアの状況を見てみよう。大きくは「シンクライアント専用端末市場」「クライアント仮想化ソフトウェア市場」「クライアント仮想化ソリューション(オンプレミス)市場」「クライアント仮想化サービス(Desktop as a Service)市場」「モバイル仮想化ソリューション市場」というカテゴリーで発表したが、今回はシンクライアント専用端末やクライアント仮想化ソリューションを中心に紹介していく。
シンクライアント専用端末
2018年のシンクライアント専用端末市場では、2017年に比べて19.3%増の出荷台数となり、2018年は大きく躍進した年といえる。その背景にあるのは、「Windows 10」へのマイグレーションが進んだこと、そして何よりも大型の更改案件が存在したことだ。シンクライアント専用端末は、国内で見ると20~22万台の出荷台数が中心で、大型案件が絡むことで上振れする傾向にある。2018年はまさにその年だったわけだが、2019年度もその傾向が続くと予測している。ただし、クライアント仮想化システム/クライアント仮想化ソリューション全体の中では、専用端末よりも通常のPC、いわゆるファットクライアントにて実装されるケースの方が圧倒的に多く、その割合は1対9と専用端末自体が中心となっているわけではない。
シンクライアント専用端末では、日本においてはモバイルシンクライアントの割合は、数年前から年々高まってきており、2018年は働き方改革などの影響もあって43%ほどとなり、全体の半数近くを占めているのが1つの特徴だ。海外の場合はデスクトップ型での利用が中心となっており、モバイルシンクライアントの割合は3.6%のみ。日本の場合、暗号化されているもののデータが残ってしまう通常のPCを使うよりも、データが保存できない専用端末の方が経営層の納得感が得られやすいという部分がある。
専用端末を提供するベンダーのシェアをみると、日本で好まれるモバイルシンクライアントのなかで2018年に大きくシェアを伸ばした富士通がトップとなった。
電車通勤の多い日本の交通事情にもマッチした、799gのスタイリッシュな軽量モデルが大型案件に採用されたことが大きく影響している。逆にHPやDELLは米軍の調達物資に関する規格/評価ガイドラインとなっているMIL規格に適合したモデルが中心となっており、タフさやバッテリーの持ち時間などの特徴を打ち出している。他には、グローバルな専用端末の専業ベンダーとして注目されているのがAtrustだ。本社が台湾にあり、創業者がHTC出身で、モバイルやデスクトップ型、オールインワンなどホームファクタのバリエーションはもちろん、Windowsおよび独自OSまでOSのバリエーションなど、専用端末における世界有数の品数を豊富にそろえているのが特長となっており、2018年は国内においてHP、DELLに次ぐシェアを誇っている。
クライアント仮想化ソリューション&サービス
日本における2018年クライアント仮想化ソリューション(オンプレミス)は、2017年と比べて6.6%増の6284億円の売上額となった。市場規模がサービスと比べても大きいため、市場自体は成熟している状況にあるといえる。
対して、クライアント仮想化サービスは、前年比12.6%増の676億円の市場売上額だった。このサービスに含まれるものは、プライベートクラウドでデスクトップサービスを提供するプライベートDaaSやパブリッククラウド上のDaaSサービスを利用するパブリックDaaSがその中心となってくる。現状ではオンプレミスに比べて市場規模は小さいものの、2桁の伸び率を示していることからも、今後ますますDaaSへの期待は高まってくるはずだ。
ただし、パブリックDaaSへの移行が一気に進むかというと、そう簡単にはいかない。インスタントクローンなどイメージのクローニング技術が柔軟に選択できるオンプレミスに比べて、パブリックDaaSでは機能が十分にサポートされていない部分もあり、今後の機能拡張を見極めていく必要がある。最近ではコネクションブローカーやなどのコントロールプレーンとデスクトップVMなどのデータプレーンを分離し、前者をCitrixやVMwareのクラウド環境で運用し、後者をオンプレミスや「Google Cloud Platform」(GCP)やAzureなどのメガクラウドサービスで運用するといったハイブリッドDaaSの存在も注目されている。もちろん、基幹システムをはじめとしたユーザー環境とどう接合するのか、離れたドメインでの接続で発生するレイテンシはどう解消するのかといった、ネットワークの設計についても考えていく必要が出てくるだろう。全てをクラウドで提供するフルクラウドへの移行は、確かに運用管理も含めて生産性の向上に寄与するはずだが、簡単に決断できるわけではない。
それでも、急激な事業規模の拡大で人材確保が急きょ必要なベンチャー企業や季節性の労働が発生するような企業では、ある程度割り切って活用できるパブリックDaaSを選択するということは十分にあり得る。実は、新規事業の立ち上げに際して事業部が直接DaaSを調達する、いわゆる“情シスの中抜き”のようなケースも出てきている。事業部単位でクラウドを採用して採算をとっていくという、いわゆる部分最適化の流れも出てきているため、全社的なセキュリティやガバナンスを考慮した全体最適化を目指す情報システム部門の役割も変化が求められてくるだろう。確かに全体最適化は理想論ではあるものの、ビジネス環境が複雑化する中でそれが果たせないケースも出てくるのは当然で、改めて情報システム部門が果たす役割を見つめ直す必要もあるだろう。
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