DaaSが情シスを"中抜き"も クライアント仮想化に見るデスクトップ環境の攻防(3/3 ページ)
注目される市場動向
ここで、クライアント仮想化の市場のなかでの注目トピックを幾つか紹介しよう。
インテリジェントワークスペースへの進化
2019年は、デジタルワークスペースが、さらにインテリジェントワークスペースへと進化/深化する年とみている。ハイブリッドクラウドDaaS/マルチクラウドDaaSなどによるDesktop as a Serviceの多様化、ITリソースの動的アロケーション技術の革新、グラフィックス仮想化などによって進化してきたデジタルワークスペースは、AI技術(アナリティクス、RPA、コグニティブなど)の実装/連携、チャット/メッセンジャー、次世代セキュリティやクラウドサービスの連携が進むであろう。また、エンドポイント環境では、生体認証、電子サイン、音声/動画の実装なども進んでいる。本格的に実用化されるSD-WANや2019年にパイロットサービスが予定されている5Gなどのネットワーク環境の進化も、特にDaaS事業者には促進要因となるであろう。
クライアント仮想化のコアテクノロジーを担っているCitrixやVMware、アナリティクスソリューションのLakeside Softwareから、インテリジェント/アナリティクスワークスペース製品が発表されている。これらの製品は、ユーザー行動データおよびインサイトの取得/分析、アプリケーション/プロファイル分析、統合されたアクセスコントロール、オートメーション機能などによって、ユーザーごとに最適なセキュリティポリシー策定やユーザーエクスペリエンスを提供可能である。ITサプライヤーは、さらにリソースの最適化、外部システムとの連携、ワークフローの自動化などデジタルワークスペースと関連するシステム全体におけるセキュリティとコンプライアンスを強化すると考えられる。さらにマイクロアプリケーションなどと連携する構想も考えられる。
プラットフォームにおいては、オンプレミス、DaaSに加え、HCIやMicrosoft Azure Stackのようなオンプレミス上でクラウドサービスを利用するケースや、Microsoft Azure Stack HCIのような次世代の仮想化基盤、HPE GreenLakeのようなオンプレミス環境で従量課金制を実現したオンプレミスとDaaSのハイブリッドモデル、超高効率を実現したHPE SimpliVity、HCIを進化させスイッチネットワークを取り込んだCisco HyperFlexなど、非常に多くのプラットフォームが出現している。このような多くのプラットフォーム上で、VDIやクライアント仮想化技術が実装可能である。クライアント仮想化製品とセキュリティ製品/サービスなどの融合も始まっている。以上、エンドポイントとプラットフォームそれぞれの進化/深化によるインテリジェントワークスペースは、次世代の製品/サービスとして、多くのユーザー企業に受け入れられるとIDCではみている。
VDI環境で利用可能なGPU「vGPU」の採用
2012年ごろにNVIDIAから登場した、画像処理などに強みを発揮するGPU(Graphics Processing Unit)を複数のユーザーでシェアして利用できるようにした「vGPU」。画像処理の負荷が高いアプリケーションを利用する仮想デスクトップユーザーに向けて提供し、複雑なグラフィックスをGPUでレンダリングできるようにする技術だ。もともとはCADの環境で重宝していたものが、今では建築の設計などで用いられる「BIM」(Building Information Modeling)やその技術を土木分野に応用した「CIM」(Construction Information Modeling)などの領域にまで活用の幅が広がっている。このvGPUがWindows 10を利用する一般企業にも採用され始めている。実は「Windows 7」に比べてグラフィックス処理のリソースが要求されるだけに、Windows 10へのマイグレーション時にはしっかりとしたサイジングを行う必要がある。そこで、メモリを増強する選択肢だけでなく、vGPUを採用することで画像処理をGPUにオフロードし、CPUに本来の仕事をさせるような環境づくりが始まっているわけだ。
なお日本においては、VDI環境を構築するためのプラットフォームとしてHCI(ハイパーコンバージドインフラ)を選択するケースが多い。十分なリソース確保が求められるWindows 10によるVDIでは、柔軟にリソース拡張が可能な環境が望まれており、容易にスケールアウトできる点でHCIとの相性がいい。ただし、原則として筐体単位でスケールアウトしていくHCIだけに、メモリは十分だがストレージだけ増やしたいといった部分的なリソース追加に柔軟な対応が難しい。こうした環境を解消すべく、オンプレミスでありながら使った分だけの課金が可能な従量課金型のITサービス「HPE GreenLake」をHPEが提供するなど、新たな選択肢も登場している。
HCIベンダーが提供するDaaSサービス
多くのベンダーがさまざまな形のDaaSサービスを提供始めているが、画期的なテクノロジーとして注目されているのが、HCIベンダーのNutanixが提供する「Xi Frame」と呼ばれるサービスだ。クラウドベースのアプリケーションデリバリーサービスを展開するMainframe2を2018年に買収し、その技術をもとにサービス化したもので、シンプルな使い勝手ながらプラットフォームを自由に選択でき、必要なデスクトップ環境をすぐに利用可能な状態にできる。AWSやAzure、GCPなど、どのクラウドサービスを利用するのかを選択し、認証系の仕組み、必要なアプリケーションおよびストレージ、アサインするユーザーを画面上から順番に選択するだけで、簡単にデスクトップ環境が利用できるようになる。自社個別の環境がある場合は対応できない部分もあるが、選んだアプリケーションだけで業務に対応できるのであれば重宝するサービスの1つとなり得るだろう。
クライアント仮想化を補完するクラウドページング技術
クライアント仮想化の環境づくりにおいて役立つ技術の1つとして登場したのが、Numecentが提供するクラウドページングと呼ばれる技術。もともとNumecentはCitrix Systems出身のエンジニアたちがスピンアウトして設立しており、エンドポイント周辺の卓越した技術を持つテクノロジー企業。このNumecentが持つクラウドページング技術とは、クラウドからアプリケーションを配信する際に、全てのファイルをダウンロードすることなくアプリケーションが実行できるものだ。例えば、数GBのワードファイルを開くために全ての情報をダウンロードせず、利用する数MBのみをダウンロードして実行させ、さらにオフラインでも利用できるようにする技術だ。必要なリソースを最小化しながらVDIが持っていたオフライン対応という課題も解決する。実は、VDI環境の裏側でクラウドページング技術を利用することもでき、一部の大学や民間企業で既に採用が始まっている。特に大規模環境で大きなデータを扱うような企業に適したソリューションになるだろう。
セキュリティソリューションと融合したサービス提供
DaaSを含むクライアント仮想化サービスを提供するベンダーは、自社の強みを生かしながら必要な機能を付加してDaaSをユーザーに提供することになる。こうした付加価値サービスの中でも、最近では「EDR」(Endpoint Detection and Response)や「SSO」(Single Sign-On)、「CASB」(Cloud Access Security Broker)といったクラウドセキュリティサービスと仮想デスクトップを融合したサービスが各社から提供され始めている。デスクトップ環境のセキュリティ強化を図りながら、VDIなどの環境がサービスとして利用できるため、デスクトップ周りの運用を含め、一括して外部に委託したい企業には適したものになり得る。
他にも、ジェイズ・コミュニケーションが、インターネット分離ソリューションSCVX(Secure Container Virtual Extensions)を国内で独自開発し展開している。その仕組みは、コンテナ技術(Docker)を利用した、Linuxベースの仮想ブラウザー方式である。具体的にはDockerで開発したコンテナ上で、Mozilla Firefox(オープンソースのWebブラウザ)を仮想化し、クライアントデバイスへ画面転送している。
クライアント仮想選択時の注意点
多種多様な技術やサービスがデスクトップ側のソリューションとして登場しており、オンプレミスであってもHCIを含めたいろいろな環境が選択できるだけでなく、AWSやAzure、GCPなどのパブリッククラウドで利用できるものも増えている。VDIそのものの技術だけでなく、デスクトップを利用するための認証やセキュアな環境づくりに欠かせない各種セキュリティ、リソース不足を考慮したサイジングなども求められており、かつ複雑なITを自社の経営課題の解決に落とし込めるような能力も必要だ。
そこでユーザー企業側に必要なのが、最新技術をうまくキャッチアップしながら、自社にとって最適な選択ができる目利きを持つIT人材が何よりも必要となる。ただし、これはユーザー企業のみならず、サービスを提案するIT事業者側にも必要な人材だ。ユーザー企業側にはさまざまな技術を横断的に見て判断できるキーパーソンが必要となり、IT事業者側は自社が提供するソリューションだけでなく、他社の技術も含めてその違いをきちんと企業に提示できる、プリセールスやエバンジェリストのような人材が求められる。IT事業者側に技術動向をしっかりと押さえた人材がいないと、そもそもプロジェクトが前に進まないことも。ユーザー企業とIT事業者、双方の人材が両輪とならないと、新たな時代に求められるクライアントの姿を描くのは難しいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
すご腕アナリスト市場予測
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
スクエニ開発陣が「ドラゴンクエストX」の世界観を守るのに「Gemini」が必要だったワケ
-
2
「Gemini Notebook」で利用者10倍 シニア社員をAIヘビーユーザーにした首都高の考え
-
3
ニンテンドーシステムズ開発者が明かす、通信「低遅延・安定運用」のコツ【事例集】
-
4
Windowsを使い続けるのは正解か? 「Linux化」というモダナイズのもう一つの選択肢
-
5
「新しいOutlook」って使ってる? 移行で変わるメール誤送信対策
-
6
ChatGPTに「おすすめの○○は?」 実は答えが決まっているらしい:893rd Lap
-
7
製造業の73%が「生成AIに仕事を頼みたいのに頼めない」理由とは
-
8
できる人ほど教える時間がない AIは暗黙知の夢を見るか
-
9
こんなところに野良AIが? 事例で解説、実際にあった2つの発覚パターンと防衛策
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー