音声認識技術とは? 議事録作成ツールの現在地、オンプレミスとクラウドの違いと選定ポイント(2/2 ページ)
音声認識の代表的なユースケース
現在どのような分野で音声認識技術が実用化されているのか、その代表例を幾つか紹介してみたい。
議事録の作成支援
大柳氏によれば、議事録作成支援は、音声認識技術の活用用途の中でも、最も注目を集めている分野だ。2017年から2018年にかけて問い合わせの数は約2倍になり、その数字は伸び続けているという。
企業のコンプライアンスを管理する上で、会議の議事録を残すことは大切な取り組みだが、議事録の作成にはかなりの労力がかかり、例えば1時間の会議を逐語で議事録化するために会議の10倍以上の作業時間を要するという。その上、作業自体は収益や価値を生み出さないので、多くの企業が作業の自動化、省力化を検討する。
既にこの分野でも音声認識技術は多くの実績を残しており、アドバンスト・メディアが開発する音声認識エンジン「AmiVoice」を使った議事録作成支援システムは、自治体と民間企業を合わせて既に300社以上の導入例がある。導入企業は平均で、議事録作成にかかる時間を2分の1~3分の1にまで短縮しているという。
なお、どれだけ良好な条件下であっても、現時点では「認識率100%」は実現できない。正式なドキュメントとして議事録を残す場合は、AIが誤認識した部分を人間があらためて音声を聞き直しながら修正する必要がある。この修正作業をいかに効率化するかという点が、音声認識技術を活用する際のポイントの1つだ。修正作業を支援するためのツールも提供されており、例えばアドバンスト・メディアでは「AmiVoice Rewriter」というツールで、音声そのものと認識結果を同期させながら、効率的に修正作業を行える環境を提供する。
コールセンター業務
顧客からの問い合わせ電話にオペレーターが応対するコールセンター業務は、多くの人手を要する労働集約的な業務であり、常に人手不足に悩まされている。ここに音声認識技術を導入すると、問い合わせの内容を自動的に解釈し、人手を介さず適切な応答を返す、いわゆる「自動応答システム」を実現できる。またオペレーターと顧客のやりとりをテキスト化し、内容を分析することで業務改善のヒントをつかんだり、コンプライアンス違反の兆候をつかんだりできる仕組みも存在する。
近年では、顧客の問い合わせ音声をリアルタイムで認識し、その内容からオペレーターの応対スクリプトをデータベースから自動的に検索して表示するようなシステムも実現している。
医療現場における電子カルテ入力
常に多忙を極める医療現場では、医師がPCを使って電子カルテを入力する作業も可能な限り効率化させたい。そのために、音声入力を使って電子カルテを自動的に入力できるソリューションが提供されており、徐々に普及が進んでいる。例えば、アドバンスト・メディアでは、医療現場で使われるPCに直接インストールして利用できる製品を開発、提供している。
医療と音声認識の相性が良い理由は、電子カルテなどに入力する専門用語の種類があらかじめ限られている点にある。カルテで用いられる専門用語をきちんと正確に認識できるよう、あらかじめ音声認識エンジンをチューニングしておけば、後は現場で医師が音声を入力する際に、指向性の高いマイクを使って丁寧に発音するよう心掛けるだけで、PCのキーボードを一切触ることなく音声だけで正確な情報を入力できる。
作業現場における音声入力
製造業における工場設備の点検作業や、物流業における倉庫のピッキング作業、建設現場における建築検査作業では、作業性や安全性を確保するために、常に両手を空けておくことが望ましい。そのため、作業結果を紙の報告書に記入したり、PCやタブレット端末にいちいち入力したりする手作業は、あまり好まれない。その点、音声入力を使えば、手を使わずに記入できるため、作業効率を損なうことがない。こうした点が高く評価され、既に多くの製造、物流、建築の現場で導入が進んでいる。
上記で挙げたユースケースはほんの一例で、音声認識技術は他にもさまざまなシーンで活用されている。最後に、音声認識の製品やサービスを選定する際のポイントを幾つか挙げてみたい。
オープンなクラウドAPIか有償の商用製品か
現在、GoogleやMicrosoft、IBMなどの大手グローバルITベンダーから音声認識技術を利用するためのAPIがクラウドサービスとして公開されており、一定時間以内の音声データなら無料で利用できるものもある。安価で手軽に音声認識を実現できるため、コストや手軽さを重視する場合には試してみたい。
一方、オープンなクラウドAPIは、コンシューマー向けの音声入力・検索サービスを通じて「広く・浅く」収集した音声データを使ってモデルの学習を行っているため、特定の業種や領域でのみ使われる専門的な語彙の認識率は高くない。そうした用途には、特定分野の専門用語を重点的に学習させたAIモデルが必要になってくる。
一方、音声認識を専門に扱うベンダーからは、特定業界向けの商用製品やサービスも提供されており、その多くは自社でのみ使われるような独自用語をユーザーが個別に登録できる。例えば、AmiVoiceはコンタクトセンターや医療、議事録、製造、建設、インバウンド対応など、さまざまな業種・業態ごとに最適な学習を施したAIモデルを取りそろえる他、単語リストや過去の議事録データなどを使って各企業に特化したカスタマイズも行える。こうした機能を必要とする場合は、商用製品を積極的に選ぶべきだろう。
クラウドサービスかオンプレミス製品か
クラウド型の音声認識サービスは、ハードウェアやソフトウェアを自社環境に導入する必要がないため、手軽かつ低コストで利用を始められる。一方、データをクラウド事業者の環境に預けることになるため、機密情報が含まれる音声データの取り扱いには注意が必要だ。事実、医療現場で取り扱う電子カルテには個人情報が含まれているため、クラウドサービスへの抵抗感は未だに根強く残っている。
また現時点で、企業向けの議事録作成支援システムは経営会議や取締役会といった上位層の会議体での利用が多く、そこで交わされる会話の内容は企業にとって社外秘に当たることが多い。こうした情報を社外のサービスに委ねることが許されない企業は、オンプレミス型の製品を選ぶべきだろう。
逆に言えば、会話内容の機密性が低く、社内のセキュリティポリシーにも抵触しない範囲であれば、クラウドサービスを積極的に利用することで手軽かつ安価に音声認識を活用できる。導入工数やコスト、セキュリティポリシーといった要素を十分に鑑みて、クラウドかオンプレミスかを選択したい。
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