AIがPoCで止まる――費用は100分の1、PoCは15分、嘆きから生まれたAI分析ツールとは(1/2 ページ)
「AI導入は数億単位の費用がかかる」「ツールが難しい」「長期のPoCで取り組みが止まる」――こうした常識を覆し、費用は通常の100分の1程度、現場ユーザーでも活用でき、1回のPoCを15分にまで短縮したAIの分析ツールがある。
「AI(人工知能)導入は数億単位の費用がかかり高すぎる」「ツールが難しい」「長期のPoC(Proof of Concept)でプロジェクトが止まる」――AIの取り組みをはじめた企業からはこのような嘆きが聞こえてくる。結局は、資金力や人材リソースなどの「体力がある」一部の企業しかAI導入を成功できないのではないか。
この状況を覆し、企業規模やAIに詳しい人材の有無を問わずAIを活用できるようにと、導入費用を数十万円程度にまで引き下げ、事業部門のユーザーでもAIによる分析を可能にしたツールが開発された。あるユーザーは、現場がAIを使った予測分析を日々実践することで生産管理に役立てたり、「7割もの」業務工数の削減に成功したりしている。
しかし、本当にそのようなことが実現し得るのだろうか。aiforce solutions CEOの西川智章氏に、企業におけるAI活用の実態と課題、「AIを読み、書き、そろばんレベルに」しようという同社の取り組み、開発したツール「AMATERAS RAY」の具体的な特徴について話を聞いた。
たった1度のPoCで数千万、半年の時間が飛ぶ――「AI PoC止まり」の実態
――企業がAIを導入する際の課題についてお聞かせください。
多くのユーザー企業がAI(人工知能)活用に関するリリースを出し、AIの導入が進んでいるように見えます。しかし実際は、ほんの一部の大企業が一部門でAIプロジェクトを動かしているだけにとどまっている状況です。
私は前職のコンサルティング企業でビッグデータ分析などに携わってきましたが、AI活用が進まないのは、商流に問題があると気付きました。導入費用が非常に高いこと、AIのノウハウを持つデータサイエンティストが不足しており、彼らの給料が非常に高いことに原因があります。導入や運用に数千万円~数億円という費用が必要な場合もあります。中堅中小企業には手が出ません。
――近年では、「PoC止まり」「PoC疲れ」といった言葉も話題になっていると思います。
はい。プロジェクトが始動してPoCまで進めたとしても、ほとんどの企業が実証実験の域を出ておらず、実業務で効果を得るところまで到達できていません。本来、実証実験は「多産多死」であるべきで、たくさん試さなければ成功に結び付きません。AI導入はPoCだけでも非常に高額で、500万~8500万円と価格幅も大きい。
PoCに多くの時間がかかるという難点もあります。たった1つの結果を出すまでに3~6カ月程度の時間がかかることはざらでしょう。しかも、その分析の中身はブラックボックスで、直接ユーザー企業に知らされることはありません。結果的に、成果を得るまで何度も実験を繰り返すことが不可能に近い状況です。
ユーザー企業にAIの知見が足りないことも悪い影響を与えているでしょう。多くの企業が「AIは具体的に何ができるのか」を理解できていません。一方で、メディアやベンダーが「AI万能説」や誇大広告を打ち出すことで、「AIなら何でもできる」というイメージが横行しています。2019年の3月には、英国のベンチャーキャピタルMCCがAI企業を名乗る2830社を調査したところ、その中で実際にAIの定義に当てはまる技術を持つ企業は約4割の1580社にすぎないというニュースが話題になりました。AIとは何か、それで何を実現したいのかが定まらないまま導入を決めた結果、PoCで挫折する企業が後を絶たない状況です。
――PoCから、実際にビジネスに取り入れられる案件化率はどれぐらいですか。
200件の相談が来たとして、実際にPoCまで進むのは10分の1程度、案件化するのは2、3件だと思います。実用段階に入っても、本当に成果が出ているのか、怪しいケースもあります。ユーザー企業は、導入時にリリースを出して「効果が出た」と発表しますが、よく調べてみると「KPIの改善が見られない」「人的工数が減っても、実際に人件費は減っていない」ということがあります。
これでは「AIはコストと時間、工数ばかりかかるけど、成果が出てこない」という評価が定着してしまうのではと危惧しています。
AI導入にかかる数億円の費用が数十万円になる
――aiforce solutionsでは「AIの民主化」を掲げていますが、規模の大小を問わず企業が使えるAIを目指しているということですか。
はい、この状況を改善しようと開発したのがAMATERAS RAYです。現場をよく知るビジネスユーザーを対象とした、セルフサービス型のAIツールです。
データサイエンティストが使うツールのように多くの機能は盛り込まず、現場のユーザーでも使えるようにインタフェースをシンプルにしています。マニュアルなどは用意せず、15分ほど説明を聞けば誰でも簡単に操作できるような使い勝手を追求しました。
「現場がセルフサービスでAIを使える」ことには意味があります。AIの開発をベンダーに依頼する場合、自社のビジネスやデータの意味、仮説の背景などを一から説明しなければなりません。その後、見積もり、承認、発注という流れを踏み、結果を待つことになりますが、その行程には多くの時間を要します。その点、現場が「日々肌で感じている」仮説を手軽に検証できれば、これらのリードタイムは不要になります。成果が出るまで、高速に仮説の検証を繰り返せるということです。
さらにAMATERAS RAYは、機能を絞っている分、導入コストを数十万~数百万円に抑えています。企業規模問わず試せるようにしました。
――億単位が数十万単位になるというのはあり得ない価格破壊ではないですか?
価格を安くできたもう1つの要因は、ソフトの骨格部分をベトナムで開発し、3カ月で完成させたことにあります。日本であれば、このスピード感を実現できなかったでしょう。これによって価格を引き下げられました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で学ぶ! 業務改善のヒント
この記事の著者
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ニンテンドーシステムズ開発者が明かす、通信「低遅延・安定運用」のコツ【事例集】
-
2
「Gemini Notebook」で利用者10倍 シニア社員をAIヘビーユーザーにした首都高の考え
-
3
スクエニ開発陣が「ドラゴンクエストX」の世界観を守るのに「Gemini」が必要だったワケ
-
4
“壊してもいい”が現場を変えた 岩塚製菓、生産性1.3倍を生んだDX定着の条件
-
5
スウェーデン発、AI議事録Klangが日本上陸 無料で文字起こし無制限
-
6
製造業の73%が「生成AIに仕事を頼みたいのに頼めない」理由とは
-
7
Windowsを使い続けるのは正解か? 「Linux化」というモダナイズのもう一つの選択肢
-
8
「新しいOutlook」って使ってる? 移行で変わるメール誤送信対策
-
9
電子化した、ファイルサーバも捨てた なのになぜ、ファイルはどこにもない?
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー