AIがPoCで止まる――費用は100分の1、PoCは15分、嘆きから生まれたAI分析ツールとは(2/2 ページ)
3カ月かかるPoCを15分で完了させる
――具体的にはどのようなことができるのでしょうか。
機能はシンプルで、「データの前処理」「そのデータを読み込んで予測モデルの構築」「分析」の3つです。
最初に学習用のデータを自動で整えます。例えば男女というセルの項目があったら、これを0や1といった数字に変えなければいけません。他にもデータの桁数をそろえるスケーリング、データの抜けを補完する作業などが必要です。いわゆる「データの前処理」と呼ばれるこれらの行程をAMATERAS RAYが代替します。
次は前処理済みのデータを読み込み、予測モデルを構築します。AIの心臓部ともいえる予測モデルですが、AMATERAS RAYは実績のある数千のモデルをあらかじめ用意し、全てにデータを通すことで、最も予測精度が高いモデルをピックアップします。従来はデータサイエンティストが、目的に応じて「このモデルが良さそうだ」と決定していたものを機械が総当たりで選び出します。
なお、データをモデルにかける際には、モデルごとに「パラメーター」という変数を設定しなければいけません。通常は「Python」または「R」のコーディングができるデータサイエンティストが手作業で行うものですが、これも自動化します。
ピックアップしたモデルを基に、機械学習済みの予測モデルができたら、分析を実施して予測レポートを作成します。一連の処理にかかる時間はおよそ15分。これで1回のPoCが完了したことになります。どのデータが結果に影響したのか、相関関係も割り出せるので、取り込むデータの種類を変えて短い期間に何度も分析を実施できることが肝です。
膨大な特許の棚卸し作業の工数を7割削減した本田技研工業
――どのような企業が活用しているのでしょうか。
B-Rサーティワン アイスクリームは、AMATERAS RAYを使って「どの味(フレーバー)がどのくらい売れそうか」の需要を予測し、生産管理や在庫管理に役立てています。従来は外部のAIベンダーに出荷数量と素材のデータを送り予測結果を受け取っていましたが、今は同社の営業副本部長がAMATERAS RAYを使って分析を実施しています。外注費を抑えつつ、フレーバーの出荷割合をより機動的に変えられるようになりました。AMATERAS RAYに実装されている最先端のアルゴリズム「LGBM」を利用し、予測と実績値の誤差が「0.0069以下」という高い精度を実現しています。
また本田技研工業は「事業と連携した知財戦略」というコンセプトを掲げ、特許の棚卸しにAMATERAS RAYを活用しています。大量の特許を抱える同社にとって、特許を維持するために毎年支払うお金は多額です。従来は専門的な知識と経験を有する知的財産部員が必要な特許は残し、不要な特許は更新しないという判断をしていましたが、「件数が増えると作業が膨大になる」「判断基準において、各部員による裁量の部分が大きい」といった問題がありました。
そこでAMATERAS RAYを使い、特許ごとに維持すべきかの数値をスコア化して、スコアがある閾値以上の場合には維持、それ未満は放棄という基準を作りました。今は、常に閾値を調節しつつ、その近傍のラインに位置する特許は人が判断するという運用です。特許維持の業務は全体で70%も効率化され、創出したリソースを「事業のための知財戦略の検討」に当てています。
RPAとの連携も――分析作業の大半を自動化
――aiforce solutionsではRPAとAIの連携を目指しています。その理由は何ですか。
AMATERAS RAYはデータを収集する機能を持ちません。RPAがデータを自動で収集して、AMATERAS RAYがその前処理から分析までを担い、またRPAが結果を集計する流れを実現すれば、予測に必要な作業を完全に自動化できます。
例えば、為替レートを予測して日々の取引に生かしたい場合、一度有効な予測モデルを見つけてしまえば、後はRPAで必要なデータを毎日AMATERAS RAYに流し込み、その分析結果を出力すればよい。当社では、RPAテクノロジーズやUiPathとパートナーシップを結んで、RPAとAIを組み合わせたソリューションも提案しています。
AMATERAS RAY自体も進化させていて、近い将来は「特徴量エンジニアリング」を自動化する予定です。これは、モデルの精度を上げるために、予測に有効と思われる情報(特徴量)が何かを考えて機械学習に使えるデータに整え、データセットに追加する作業です。データサイエンティストの仕事の6割を占めるといわれています。この機能によって、予測分析の大半を現場で自動化できるようになるでしょう。
AI教育が民主化の第一歩
――aiforce solutionsはAI人材の育成も重視していますね。
はい。AMATERAS RAYはいくら簡単に使えても、データを入れなければ動きません。AIを活用する際には、どのデータを使い、何を分析・予測すればビジネスに役立つかを考える知恵と想像力が求められます。
aiforce solutionsはビジネスの現場でAMATERAS RAYを使いながらその力を養えるようにするだけでなく、大学からも人材を排出できないかと、東北大学でAIに関する授業を開催しています。その授業は、企業からデータを提供してもらい、それを基にAI技術を生かしたサービスを企画、発表するという内容です。
当社でもインターンを受け入れて、学生にAIへの関心を持ってもらおうとしています。ここにいる川村さんは慶應義塾大学法学部の3年生ですが、飲料メーカーの自動販売機の販売予測に取り組んでいます。彼女のように、「ビジネスにAIをどう生かせるか」を考えられる学生が社会に出ていってほしいです。
その他、AI人材を3種類で定義し、それぞれを養育するための教育コースも用意しました。まずは、統計解析や機械学習を行う「データサイエンティスト」向けのコース。次に、社会課題やビジネス課題を理解して「To Beモデル」を設計する「UXストラテジスト」向けのコース。最後が、ビジネスのどこにAIを活用するかを決め、関係者の合意を得ながら「As Is」から「To Be」のプロジェクトを推進できる「プロデューサー」向けのコースです。
今、日本においてはAI人材が圧倒的に枯渇しています。大学でAI専門の学科を設けているのは、わずか5校ほど。米国では500以上あることを考えると、危機的状況です。ツールによってAIを読み、書き、そろばんレベルで使えるようにする一方で、幅広い知識を持ったAI人材を育成し、AIを普及させていきたいと考えています。
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