エッジコンピューティングで実現する「現場完結型」のデータ化──独占取材・台湾Avisionの担当者に聞く【後編】
RPAとの併用でニーズが高まるAI-OCRへの活用を想定した、世界初の「PC内蔵型ドキュメントスキャナ」を2020年9月から日本で発売すると発表した台湾Avision(虹光精密工業股份有限公司)。新製品の概要を紹介した前編に続き、後編となる本記事では、新製品の活用が業務効率化の実践に与えるインパクトについて、開発担当者の見解を紹介する。
■記事内目次
- AI-OCRを活用した業務プロセスが自由に設計可能
- 「ネット接続しないAI-OCR」。その実用性は
- 本社工場に月1,000台の生産体制を構築。まず日本からRPA向けハード市場を開拓
AI-OCRを活用した業務プロセスが自由に設計可能
─貴社が発売を予定するPC内蔵型ドキュメントスキャナ「AI300シリーズ」は、エッジコンピューティングの採用によりAI-OCRをオフラインで利用でき、セキュリティー面の課題をクリアできるとのお話がありました。このほか、従来にない特長があれば教えてください。
施伯昇(Brian Shih)氏(マーケティング企画部 シニアマネージャー): AI300シリーズ、ならびに同じコンセプトで目下開発中のプリンタ複合機はいずれも、ノートPCなどに用いられるIntel製CPUと8GBのRAM、そしてSSD 64GBの記憶領域を内蔵しています。単純に、これまでのスキャナや複合機になかった性能を備えているわけですが、重要なのはそれらが「AI-OCRやRPAを活用する際の自由度を高める」という点です。
私たちの新製品を用いることでユーザー企業は、個別の社内事情に適合するワークフローを、より柔軟に設計できるようになるでしょう。
例えば「手書きの項目がある紙帳票やファクスを、受け取った部署では入力せず、スキャン画像を専門部署に送って集中処理してもらう」という業務プロセスがあったとしましょう。まとめて行う入力処理だけ見れば効率的かもしれませんが、もし「記載の不備や不明点が後から見つかり、手戻りが頻繁に生じている」とすれば、全体の効率がよいとはいえません。
そうした場合、私たちの新製品を使えば、帳票類をスキャン後ただちにデータへの変換をAI-OCRで高速・高精度に行えるので、書類を受け付けた担当者や記入者本人が変換後のデータをすぐ確認でき、もし不備や間違いがあれば、確実にその場で修正できます。
このように、業務プロセスの最上流に位置する現場で、正確かつ抜け・漏れのないデータ作成を完結できる体制は、非常に理にかなったものだと考えています。特に、手書きの書類を顧客から受け取る銀行や保険業、官公庁などの窓口では有効なソリューションとなりうるでしょう。
林士庭(Alex Lin)氏(プロジェクトマーケティング部 副部長): 今回の新製品が「PCとして使える」ということは、つまり「操作用のPCを別途用意しなくてもよい」、そして「任意のソフトウエアを自由にインストールできる」ということでもあります。
したがって「保存している過去の紙文書のデータベース化」なども、本製品に加えてエッジコンピューティング対応のAI-OCRソフトがあれば、すぐに始められます。また、文字認識に続く作業向けのソフトも本製品に組み入れることで、AI-OCRとRPA、データ連携などを一体化したソリューションの展開も可能となります。
「ネット接続しないAI-OCR」 その実用性は
─現在、AI-OCRの多くは「潤沢な演算能力を確保して高速な処理が可能」「誤認識への修正結果を集約し、AIにフィードバックして精度を高められる」といった理由から、クラウドサービスで提供されています。こうした点について、エッジコンピューティングでAI-OCRを利用する場合はどう変わりますか。
盛士超(Martin Sheng)氏(マーケティング企画部 マネージャー): AI-OCRをクラウドサービスで利用する場合と、外部との通信を伴わないエッジコンピューティングで利用する場合とでは、当然ながらいくつかの違いが出てきます。
このうちAI-OCRの処理速度に関しては現状、文字の認識よりもクラウドとの送受信にかかる時間が大きなウエートを占めています。実際に、私たちがプロトタイプで行った検証でも「新機種のエッジコンピューティングに対応させたAI-OCRソフトのほうが、クラウドサービスのAI-OCRよりも処理時間が短い」という結果でした。実用上、さらなる高速化が必要であれば「新製品を複数台導入して並行処理する」ことも選択肢となるでしょう。
いっぽうAIの学習について言うと、今回の製品は「Intel製CPU上で、学習済みモデルを使った推論を行わせる機能」に特化した、同社の「OpenVINO」という技術で、エッジコンピューティングによるAI-OCRを実現しています。したがって外部との通信を断った状態では、誤認識への修正結果などをフィードバックしてAIに学習させることはできません。
ただ、本製品は有線LANおよびUSB2.0/3.0の外部接続端子を設けていますから「普段はオフラインで運用し、定期的にネットワーク接続してアップデートを行う」といった運用には十分対応可能です。
本製品を用いたAI-OCRソリューションを、最終的にどのような形で提供するか、詳細は今後パートナー企業とともに検討していくこととなります。ハード面での改良がもし必要となれば、柔軟に対応していきたいと考えています。
本社工場に月1,000台の生産体制を構築。まず日本からRPA向けハード市場を開拓
─「ドキュメントスキャナの新製品開発には通常5年かかるところ、今回は構想から半年でプロトタイプの完成にこぎ着けた」とのことで、動きの速さが印象的です。
盛氏: 開発中だった別機種からの派生モデルとすることで時間を短縮できたのが大きかったですが、その判断や実行も速かったとすれば、当社が厳格なピラミッド型の組織ではなく適任者を集めたプロジェクトチームで仕事を進め、なおかつ企画から設計、生産までを「同じ屋根の下」で行っていることが理由だと思います。
既存プロジェクトの途中から、急きょAI300シリーズの開発プロジェクトも加わったため、当初は正直なところ、共倒れにならないか心配でした。しかし、何とか量産のめどが立った現在は「単体の製品としてもソリューションとしても、高い完成度のものを提供できる」という、確かな手応えを感じています。
─量産の見通しはいかがですか。
林氏: 今夏から、比較的小ロットの生産に強い台湾の本社工場で月産1,000台の体制を予定しています。本社工場では製品企画からハード・ソフトの設計、試作ならびにセル生産方式による量産、さらに完成品検査や品質管理に至るまで、すべてを同じ建物内で行っており、情報共有が非常にスムーズなことが強みです。
加えて、本社工場周辺は台湾随一のハイテク産業集積地であり、主要部品のサプライヤーも近隣に集中しています。そのため仕様変更のリクエストなど、要望を受けてからの速いレスポンスとフィードバックには絶対の自信を持っています。
─頼もしい体制ですね。最後に今後の展望と、日本の読者へのメッセージをお願いします。
盛氏: ドキュメントスキャナのAI300シリーズは、昨年12月に東京で開いたプライベートセミナーで受けた要望を踏まえ、既に搭載するCPUを強化するなどの改良を終えています。AI300シリーズの最終的な仕様決定と、複合機タイプへの改善点を探るため、近日中に再び東京でデモンストレーションを行う予定で、日本国内の実情に通じたRPAベンダー、システムインテグレーターなどからの忌憚ない意見をうかがえたらと思います。
当社では従来、特定の企業向けに特別仕様の製品をつくった経験はありますが、今回の「AI-OCR×RPA」のように、特定の用途にフォーカスした製品は初めてです。これを機にRPA市場へ深くコミットし、RPA関連のハードウエアをさらに充実させていきたいと考えています。
施氏: 機械に任せられる事務作業は任せて、人間がより付加価値の高い仕事にシフトしていくのは世界共通のトレンドであり、先進諸国でいち早く少子高齢化が進んでいる日本のリーディングケースは、いずれ欧米や中国などにも波及していくことでしょう。
私たちも、日本のRPA市場を強く意識した今回の製品を通じて、生産性を高めるソリューションの世界的な普及に貢献できればと思います。
林氏: 私は日本企業での勤務経験があり、日本語を話せることもあって今回のプロジェクトに加わっています。
新製品の開発において、いちばん危険なのは「自分たちの考えを過信すること」(笑)。ですから、世界的にもRPAに対するニーズが際立つ日本の方々から直接ヒアリングできる機会は非常に重要であり、また楽しみでもあります。ぜひ多くの有益なフィードバックをいただきながら、RPA市場にAvisionブランドを浸透させていきたいです。
オフラインで実行可能なAI-OCRやRPAと融合する世界初のハードウエアは、これからどのようなソリューションを提供していくのだろうか。さらなる詳細の発表まで、目が離せそうにない。
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