紙文化の残っていた金融機関はどうやってテレワークに移行したのか――山口フィナンシャルグループ事例
企業がニューノーマルにシフトするために避けては通れない業務改善。山口銀行などを傘下に抱える山口フィナンシャルグループは業務改善に先んじて取り組んだことが功を奏し、テレワーク体制へ移行できたという。
新型コロナウイルス感染症対策として、付け焼き刃とはいえ導入が進んだテレワーク。緊急事態宣言も解除され、企業は今後のBCP(事業継続計画)や働き方改革のため、本格的なテレワーク体制の構築に向かう必要がある。
ニューノーマルに向けた段階的取り組み
日本マイクロソフトは2020年5月27日、中堅・中小企業やスタートアップ企業の事業継続に向けた新たな支援、連携施策を発表した。同日に開かれた記者発表会では、同社によるヒアリング調査(対象1246社、5月26日時点)の結果が示された。それによると、中堅・中小企業の50%が「テレワーク実施中」、26%が「検討中」、24%が「予定なし」だった。テレワークの予定がない理由としては、紙ベースの業務や帯域不足といった課題が挙がった。
同社はこの結果を受け、新型コロナウイルス感染症流行以後、中堅・中小企業が新たな業務オペレーションと働き方である「ニューノーマル」(新常態)を実現するまでの段階的な措置として以下の3つのフェーズを示した。
まず1つ目のフェーズは、緊急対応としてWeb会議やオンライン商談といった仕組みを導入し、コラボレーション環境の効率化や社内システムへの安全なアクセスを実現するテレワークへの移行だ。2つ目のフェーズは、紙ベースの業務のデジタル化やセキュリティおよびガバナンスの強化と運用の自動化に取り組む事業回復への対応だ。そして3つ目のフェーズで、事業戦略の改善や社員の意識、組織風土の変革実現するニューノーマルだ。
説明会では、日本マイクロソフトのユーザーである山口フィナンシャルグループ(FG)の事例も紹介された。山口銀行ともみじ銀行、北九州銀行の3銀行を傘下に置き、国内外に284拠点を抱える山口FGは、ニューノーマルに向けた3つのフェーズのうち、第2フェーズに当たる取り組みを進めている。
山口FGの來島友治氏(IT統括部)によると、山口FGは新型コロナウイルス感染症拡大への対策として2月下旬からテレワークへの移行を検討し始めた。この時点で本部社員がテレワークに利用できるPCが足りず、店舗の営業担当に旧型タブレット端末と交換配布予定だった「Surface」600台をテレワークPCとして利用することに変更、再度キッティングした。加えて、「Microsoft Teams」を活用したWeb会議を浸透させるため、マニュアルやデモ実演を交えてユーザートレーニングも実施した。
帳票のペーパーレス化などで70%の「紙」を削減していた
山口FGが迅速なテレワーク環境を構築するに至った理由は、これらの緊急的な対応だけではない。実は山口FGは、1年以上前からグループ全体のコミュニケーション基盤の構築やペーパーレス推進といった業務改善に取り組み、ニューノーマルの実現に向けた第2フェーズの活動を進めていたのだ。では、具体的にどういった取り組みをしていたのか見ていきたい。
來島氏によると従来、山口FGおよび3銀行ではそれぞれ別のグループウェアを利用しており、会社組織を横断しての情報連携が困難だったという。その状態では、従業員の在籍状況やスケジュールが共有できないため、電話の取り次ぎや会議参加者アサイン、調整に時間がかかっていた。さらに外出先や自宅からグループウェアが利用できず、働き方への対応も未整備の状態だった。そこで、2019年1月にコミュニケーション基盤を「Office 365」に移行することで対応した。
ペーパーレス推進は2019年8月~2020年3月にかけて実施したプロジェクトで、主に本部業務で使用している紙帳票(1200帳票)について、必要なものは電子ワークフローへ移行した他、ペーパーレス会議を推進するため、無線LANの整備や新PCの配布などのインフラ整備に取り組んだ。その結果、2020年4月時点で前年同月比70%の削減を実現したという。
今後の課題として、山口FGではネットワーク負荷増大への対応と、さらなるテレワーク環境整備を掲げる。來島氏は「テレワークには慣れてきたが、セキュリティ対策上、VPNを経由してグループウェアやWeb会議に接続しており帯域の逼迫(ひっぱく)が課題だ」と語る。今後は、「Windows Virtual Desktop」などを利用したBYOD環境の検討、検証や非対面での接客、営業の仕組みを検討しているという。
その他、日本マイクロソフトは多くの企業がニューノーマルへとシフトし始めていること前提に、中堅・中小企業向けのテレワーク移行を支援するとしている。コミュニケーション環境支援では、Microsoft Teamsを導入から活用までサポートするため、オンラインワークショップの適用範囲を拡大。デスクトップ環境支援では、6月末までだったWVDの導入支援期間を7月以降にまで延長する。
さらに6月1日からは、従業員数25人以下の中小企業を対象に、「中小企業テレワーク応援プロジェクト」を開始する。
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