勘違い上司がやりがちな「従業員の監視」が逆効果の理由
パフォーマンス管理ベンダーの15Fiveの調査によると、生産性を高めることを目的とした従業員の監視が、逆に生産性を損ねている可能性があるという。
パフォーマンス管理ベンダーの15Fiveが管理職1000人と従業員1000人を対象に行った調査によると、生産性を高めることを目的とした従業員の監視が、逆に生産性を損ねている可能性があることが分かった(注1)。
“監視戦術”が従業員のパフォーマンスに逆効果の理由
同社によると、調査対象の管理職の3分の1以上が「監視は生産性に影響を与えない」と回答した一方で、4分の1は「監視によって従業員が新しい仕事を探すようになった」と答え、20%は「監視によって従業員が感情を露わにしたり、組織に対して妨害行為をしたりするようになった」と回答している。
15Fiveのアダム・ウェバー氏(コミュニティー担当バイスプレジデント)は本調査で「Webカメラによる監視やブラウザによる行動監視、マウスやキーストロークの追跡、『Microsoft Teams』や『Google Workspace』『Zoom』『Slack』といったアプリケーションによる従業員の監視といった生産性の追跡に対する、従業員と管理職の反応を測定した」と述べた。
従業員監視は近年、大規模なトレンドに発展している。セントアンドリュース大学と欧州委員会の共同研究評議会による2021年の報告書によれば、企業が労働者を監視するという話はパンデミック以前から存在していたが(注2)、COVID-19が広まる中でテレワークが採用されるようになり、雇用主による“監視戦術”が強化されたという(注3)。2021年のDigital.comの調査では、テレワーカーを抱える企業の60%が「生産性や活動を監視するためのソフトウェアを使用している」と判明した(注4)。
監視に関する15Fiveの調査結果は、「管理職と従業員の間の断絶よりも大きなテーマを示している。従業員を監視する技術は、企業が生産性への近道を見つけようとするのと同じストーリーの新バージョンに過ぎず、数十年にわたって繰り広げられてきた」とウェバー氏は述べた。
しかし15Fiveの調査では、管理職の68%が「生産性追跡ソフトウェアがパフォーマンスを向上させる」と回答しているのに対し、従業員の72%が「この種のソフトウェアはパフォーマンスを低下させるか、全く影響を与えない」と答えている。ウェバー氏は「管理職が従業員監視に走るのは、不信感や恐怖心、従業員の働きぶりが見えないことが原因かもしれない」と語る。
「監視して無理やり成功させるのが近道だと考える雇用主もいる。しかし、雇用主が労働者の生産性を促すためにブラウザ履歴の監視などをすると、従業員は同じブラウザを使ってどこか別の職場を探すだけだ」(ウェバー氏)
効果への疑問に加えて、従業員監視技術の合法性にも懸念がある。HR Diveの取材に応じた関係者によると、米国ではソフトウェアによる監視は一般に合法だが、連邦規制当局は職場監視に関する調査の可能性について警告を発している(注5)。
2022年の注目すべき2つの例がある。1つはホワイトハウスが監視技術などのアプリケーションに適用される一連の労働者保護を確立した「AI権利章典の青写真」(注6)。もう1つは、全米労働関係委員会のゼネラルカウンセル、ジェニファー・アブルッツォ氏のメモだ。同氏は、労働者の権利を阻害する可能性のある職場のテクノロジーに対処するよう政府機関に要請している(注7)。
従業員監視の影響について警告を発した企業は15Fiveだけではない。Microsoftのジャレッド・スパタロ氏(モダンワーク担当バイスプレジデント)は2022年9月のブログで、「企業は従業員からのフィードバックに耳を傾けず、職場で生産的でないことを恐れているので、デジタル監視に走ってしまう」と記している(注8)。
「従業員が見えないところで働いていることはストレスになる。そして、全ての従業員が自分の仕事上のパフォーマンスを測る指標を必要としている。しかし、指標に頼るのではなく、リーダーはインパクト、つまり『従業員が何をしたか』に注目しなければならない」(スパタロ氏)
「企業はパフォーマンスを上げるために生産性監視に頼るのではなく、心理的に安全な職場づくりや目標の設定、公平で効果的なパフォーマンス評価の実施などのテーマを含む管理職研修の改善に力を入れるべきだ。人事部門はこの作業を主導し、管理職と協力して、両者が期待することを明確にすべきだ。この不信感の高まりは、管理職や企業が従業員に求める結果を明確にしていないことに根ざしている。人事部は、企業レベルで戦略や目標を明確にするために重要な役割を果たす必要がある」(ウェバー氏)
出典:Employee surveillance is a counterproductive ‘shortcut’ for managers, executive says(HR Dive)
注2:A quarter of tech employees on Blind say their company conducts ‘unreasonable’ monitoring
注3:Pandemic-driven employee surveillance may hurt retention, EU report says
注4:6 in 10 employers require monitoring software for remote workers
注5:Mailbag: Is remote work monitoring legal?
注6:What the White House’s ‘AI Bill of Rights’ blueprint could mean for HR tech
注7:Surveillance, AI tech may violate labor laws, NLRB general counsel says
© Industry Dive. All rights reserved.
HR Dive
米国でビジネスジャーナリズムに特化した記事を掲載するIndustry Diveの、人事系連載「HR Dive」の記事一覧です。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
かんぽ生命が営業報告を50分→10分に AI時代に見直すべき「データ入力」の仕組み
-
2
C言語は「危険」と言われても、専門家が「使う価値は十分にある」と言うワケ:900th Lap
-
3
M365 Copilot全庁展開で月2000時間削減 現場がAIを「使いたくなる」習慣化の仕組み
-
4
6TBファイルのサーバ移行、M365ユーザーの八雲町がSharePointでなく「あえてBox」の理由
-
5
Claude Codeに「仕事を丸投げ」して事故らないための基本運用ルール
-
6
損保ジャパン、2万人の「Gemini活用」どう管理? 推進者が語る「リスク回避」の仕組み
-
7
「カスハラ対応」を個人に任せない 取手市がAIで変えた窓口業務
-
8
社員の「セキュリティ訓練」、他社はどの程度やっている? 気になる隣の実施状況
-
9
「Claude」3倍高速化の裏で、Anthropic開発者が「あえてしなかったこと」:899th Lap
-
10
20年物の基幹システム刷新に、マクロミルがあえて「全てを変えない」と決めた理由
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー