なぜNTTは「小型LLM」にこだわるのか 国産AI「tsuzumi 2」に込めた狙い

LLMは大規模であるほどよいのか。NTTが開発する国産LLM「tsuzumi 2」は、小型化と日本語処理、データ主権を重視する。企業が生成AIを実務に組み込む際の現実解として、同モデルは何を目指しているのか。開発担当者の講演から読み解く。

 生成AIを業務で使う企業にとって、LLMの性能だけが判断材料になるわけではない。社内データをどこまで外部に出せるのか、日本語の業務文書を正確に扱えるのか、オンプレミス環境で運用できるのか。こうした条件が、実際の使いやすさを左右する。

 こうしたニーズに対し、NTTが開発を進めている国産LLMが「tsuzumi 2」だ。NTTは同モデルを、他社LLMに依存せずスクラッチから開発した「ソブリンAI」(データ主権を確保したAI)と位置付ける。小型でありながら高性能を目指す設計、日本語処理を重視したトークナイザ(入力文をLLMが処理しやすい単位に分割する仕組み)、人とAIが協調する将来像を見据えた研究開発が特徴だ。

 NTTの西田京介氏(人間情報研究所 上席特別研究員)は、tsuzumi 2の開発思想や技術的な特徴、開発を支える計算基盤について説明した。

なぜNTTは28BのDenseモデルを選んだのか

NTTの西田京介氏

 NTTは2026年現在、「AI For Quality Growth」という生成AI戦略を掲げている。インフラからアプリケーション、コンサルティングまでをエンドツーエンドで提供するアプローチであり、tsuzumi 2はその中核を担うLLMの一つだ。

 同社は1980年代から自然言語処理の研究に取り組んできた。2018年にGoogleが自然言語処理モデル「BERT」を発表したことを契機に、生成型の読解モデルや大規模な対話モデル、視覚読解(文書画像理解)などの研究を本格化させた。こうした技術的な蓄積を基に開発されたのが「tsuzumi」だ。

 NTTがtsuzumi 2で重視する個性は、「スクラッチから作る」「小型でしっかり学習」「日本語への強み」「ヒトとAIとの協調」の4点だ。特にスクラッチからの開発は、他社LLMやオープンソースLLMに依存せず、主権を確保したソブリンAIを実現する狙いがあるという。加えて、オンプレミス環境でも扱いやすい小型モデル、日本語文書への適応、人とAIが協調する将来像を重視している。大規模化だけを追うのではなく、企業が実際に運用しやすいLLMを目指す設計思想がある。

図1:tsuzumi 2が目指す個性。スクラッチから作る、小型でしっかり学習、日本語への強み、ヒトとAIとの協調の4つを掲げる(出典:西田氏の講演資料)

 この方針はモデルのアーキテクチャにも表れている。tsuzumi 2では、280億個(28B)のパラメータ数を選択した。推論時にモデルの一部だけを使うMixture of Experts(MoE)ではなく、全てのパラメータを利用するDenseモデルを採用している。パラメータ数を1枚のGPUで動作させられる規模に抑えつつ、推論時には全パラメータを使って性能を引き出す。小型化は性能を妥協するためではなく、実運用に乗せやすくするための選択だ。

日本語を少ないトークンで扱うための独自設計

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