エイベックス、経費精算の「目視チェック」に限界 監査を外部化し承認業務37%削減へ
経費精算をデジタル化しても、領収書との照合や規定への適合確認など、人によるチェックは残る。エイベックスは、承認者の負担と監査品質の両立に向け、経費精算の監査プロセスを見直した。
「この経費、本当に規定通りか」。経費精算の承認では、申請金額や日付、支払先だけでなく、領収書との一致や社内規定への適合まで確認する必要がある。申請件数が増えれば、こうしたチェックは承認者の負担となり、本来注力すべき業務やマネジメントの時間を圧迫しかねない。
経費精算の効率化というと、申請をデジタル化したり、システムで規定違反を自動検知したりする方法が考えられる。だが、システムだけでは判断しにくい項目や、領収書画像との照合など、人による確認が残る業務もある。
こうした課題に対し、エイベックスは経費精算の監査プロセスを見直し、経費管理クラウド「Concur Expense」の監査サービス「Intelligent Audit」を採用した。2026年秋から国内グループの従業員約1300人を対象に利用を開始し、承認業務にかかるコストを導入前比37%削減することを見込む。
「この経費、規定通り?」 承認者を悩ませる経費精算の細かなチェック
経費精算では、申請者が入力した日付や金額、経費タイプ、支払先などの情報と、添付された領収書画像が一致しているかどうかを確認する必要がある。さらに、社内の経費規定に沿った利用かどうかも判断しなければならない。
申請内容に問題がないかを確認することは、ガバナンスを維持する上で欠かせない。一方で、承認者が1件ずつ細かな項目を確認していけば、その分だけ時間がかかる。
特に企業規模が大きくなれば、申請件数も増える。承認者が経費の細かな確認に時間を取られることで、部門のマネジメントや業務上の判断など、本来担うべき仕事に割ける時間が減る可能性がある。
エイベックスでも、経費精算における監査品質の標準化、承認者の業務負荷軽減、ガバナンス強化を課題として、申請から監査、承認までのプロセスを見直していた。これまでは、こうした確認業務の一部を外部に委託していたという。今回の取り組みでは、経費精算システムと監査業務をより一体的に運用し、監査の専門性と品質を高めることを狙う。
「システムで自動チェック」だけではない 最後は専門チームが目視
そこで採用したのが、コンカーの「Intelligent Audit」だ。
同サービスは、経費精算の申請に対する目視チェックをコンカーの監査チームが代行する。各企業の経費規定を基に、コンプライアンスやITリテラシー、税務などの観点から申請内容を確認する。
ポイントは、経費精算システムによる自動チェックだけに頼らないことだ。
「Concur Expense」による経費規定の自動チェックと、Intelligent Auditによる目視監査を組み合わせることで、システムだけでは処理しにくい確認業務を専門チームが担う。専門のサービス担当者が、申請時の入力データと領収書画像を目視で確認することで、承認者が行っていた詳細なチェックの負荷を抑える。
つまり、承認者が「申請内容に問題がないかを細かく調べる」ことから、監査工程を切り分ける。承認者には、経費が業務上必要なものなのか、部門として承認してよいのかといった判断に集中してもらう狙いだ。
「監査品質のばらつき」も課題に 専門チームで標準化
経費精算の監査では、単に処理時間を短縮すれば良いわけではない。
確認する人によって判断基準が異なれば、同じような申請でもチェック結果が変わる可能性がある。企業としてガバナンスを維持するには、どの申請をどの基準で確認するのかをそろえる必要がある。
エイベックスがIntelligent Auditを採用した背景の一つも、監査品質の標準化だった。
各社の経費規定に基づいて専門チームが監査することで、申請内容の不備やミス、不正の防止を強化するとともに、第三者によるチェックを通じて社員の経費利用に対する意識向上も促す。経費精算を「申請者→承認者」という社内だけのチェックに閉じず、専門チームによる監査を工程として組み込むことで、承認プロセスそのものを見直す形だ。
承認業務のコストを37%削減へ 約1300人で利用開始
エイベックスでは、2026年秋から国内グループの従業員約1300人を対象にIntelligent Auditを利用する。一部対象外の企業を除く。導入によって、経費精算の承認業務にかかるコストを導入前と比較して37%削減することを見込んでいる。
狙いは、単に経費精算を速く処理することではない。詳細な監査作業を専門チームに切り出すことで、承認者の負担を減らしながら、経費利用に対するガバナンスを維持することにある。
「効率化するとチェックが甘くなる」というトレードオフではなく、監査と承認の役割を分けることで、効率と統制の両立を目指す。
経費精算DXの次の課題は「誰がチェックするか」
経費精算システムの導入によって、申請や承認をデジタル化するだけでは、経費処理にかかる人の仕事が全てなくなるわけではない。
領収書と申請内容の照合、規定への適合確認、不備のチェックなど、業務の中には人による判断や確認が残る。こうした作業を承認者が抱え続ければ、システムを導入しても別の場所に業務負荷が残ることになる。
今回のエイベックスの取り組みは、こうした「システム化した後に残る確認業務」をどう扱うかという事例でもある。
システムによる自動チェックと専門チームによる目視監査を組み合わせ、承認者の役割を細かな確認作業から切り離す。経費精算のDXでは、単に申請をデジタル化するだけでなく、「どの業務をシステムに任せ、どの業務を人が担い、どこを外部化するのか」まで設計することが重要になっている。
エイベックスが見込む承認業務コスト37%削減という効果が実際の運用でどこまで実現するかは今後の検証が必要だが、経費精算の効率化とガバナンスを両立させる方法として、監査業務そのものを専門サービスに切り出すアプローチが注目されそうだ。
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