人口減少で採用難の鳥取県、「辞めない職場」をデータでどう作る?
人口減少と採用難が深刻になる中、企業には「採る」だけでなく、採用した人材に長く働いてもらうための取り組みも求められている。鳥取県は県内企業を対象に、組織状態をデータで可視化し、人材定着につなげる支援を始めた。
人口減少と採用難が進む地域では、人を採用するだけでなく、採用した人材に長く働いてもらうための環境づくりも重要な課題となる。特に人事の専任担当者がいない中小企業では、離職の原因を把握し、職場環境や育成方法を改善するところまで手が回らないケースもある。
こうした課題に対し、鳥取県は県内企業の採用と人材定着を支援する「とっとり採用力強化サポート」に、ラフールの組織改善ツール「ラフールサーベイ」を導入した。県内に事業所があり、県の「採用総合サポート窓口」で相談した企業は、初期導入費と90日間の利用料を県の負担で利用できる。対象は最大30社、1社当たり30人までとなる。
人が集まらない、定着もしない 鳥取県が「採用後」の支援に
鳥取県では人口減少が続いている。2025年国勢調査の速報値によると、県人口は52万3732人で、2020年から5年間の減少率は5.4%。全国の2.5%を上回った。2025年の年間人口減少数は6735人で、1955年以降で最大となった。
企業にとって人材確保の環境も厳しい。2026年7月の有効求人倍率は1.27倍で、全国の1.18倍を上回る。さらに、県外への転出超過を示す社会減は24年連続となっており、2025年は1589人の転出超過だった。
こうした状況では、採用活動を強化して応募者を増やすだけでは、人材不足の解消につながりにくい。採用した従業員が早期に離職すれば、再び採用活動や教育にコストをかける必要があるためだ。
そこで同事業では、採用支援だけでなく、採用後の人材定着までを一体的に支援する。
離職や育成停滞の原因を「データ」で把握
利用企業は、採用力診断や専門家による伴走支援を受けながら、「ラフールサーベイ」を使って職場の状態を分析する。
ラフールサーベイでは、心身の状態やエンゲージメント、仕事内容、人間関係、組織との関係などを分析し、人材の定着を妨げている可能性のある要因を把握する。
例えば、採用後の早期離職が続いている企業であれば、従業員のエンゲージメントや人間関係、仕事内容などの状態を確認することで、どの領域に課題があるのかをデータから探ることができる。
スマートフォンから回答でき、匿名での回答にも対応する。人事専任者がいない企業でも利用しやすいよう、初期設定から結果の読み解き、報告資料の作成、改善施策の方向性整理まで専任担当者が支援する。
県が90日間の利用費を負担
今回の取り組みでは、県内に事業所を置き、県の「採用総合サポート窓口」で相談した企業を対象に、初期導入費と90日間の利用料を県が負担する。
対象企業は最大30社で、1社当たり30人まで利用できる。31人以上で利用する場合は、対象部署を絞るか、超過分を企業が負担する。超過分の利用料は90日間で1人1500円(税別)。
利用期間は1社につき90日で、終了日は2027年3月12日。期間終了後は、企業負担による年間契約へ移行することもできる。
県が導入費用を負担することで、費用面や導入ノウハウを理由に組織改善へ踏み出しにくかった企業でも、まず自社の状態をデータで把握できる環境を整える狙いがある。
「応募不足」だけでなく「新人が育たない」も対象に
想定されている利用場面は、採用活動だけではない。
応募者が集まらない、採用後の早期離職が多い、新人教育がうまく進まない、人事・総務部門に業務が集中している、といった企業の課題を対象とする。
特に人材定着では、「なぜ辞めたのか」という結果だけを見るのではなく、従業員が現在の職場をどう捉えているのかを把握することが重要になる。ラフールサーベイでは、こうした組織状態を定期的に確認し、改善すべき領域を整理することを支援する。
一方で、個別の研修やコンサルティングそのものは今回の事業範囲には含まれない。サーベイによって課題を把握し、その結果を基に研修や制度、職場環境の改善など、必要な施策を整理するところまでを支援する。
ラフールによると、ラフールサーベイは2026年8月時点で全国47都道府県、累計2300社超、35万人超のアカウントに導入されている。回答データは累計3億件に達したという。いずれも同社調べの数値だ。
蓄積したデータは、業種や企業規模、地域などによる比較材料として活用でき、自社の組織状態を把握する際の参考情報となる。
今回の事業でも、対象者や実施時期の設計、調査結果の整理、経営者や管理職向けの説明資料作成などを支援する。
単にサーベイを実施して結果を受け取るのではなく、データを経営者や管理職と共有し、具体的な改善につなげるところまでを支援することで、組織改善を継続的に進めやすくする。
「採用力」だけでなく「定着力」も高められるか
人材不足が深刻になる地域では、採用活動を強化するだけではなく、現在働いている従業員が長く働ける環境をつくることも重要だ。
今回の鳥取県の取り組みは、採用支援と人材定着支援を一体化し、組織の状態をデータで可視化することで、企業が自社の課題を把握しやすくするものだ。
ラフールにとって、都道府県の企業支援事業での採用は、2026年8月に発表された山口県の「働きがいを高める職場づくり推進事業」に続くものとなる。
今後は鳥取県内で組織改善や人材定着の支援を広げるほか、県内でのセミナーなどを通じた啓発活動も検討する。地域の人材課題を、採用だけでなく職場のウェルビーイングや定着の観点から解決する取り組みを、自治体と連携しながら展開していく方針だ。
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