企業は脆弱性情報の収集に1日2.5時間 日立がAIで約8割削減、JPXで効果を検証
脆弱性情報は日々更新され、企業のセキュリティ担当者には自社システムへの影響確認や対応の優先順位付けが求められる。人手に頼った情報収集の負担が増す中、日立製作所はAIエージェントを活用し、脆弱性管理の効率化を支援するサービスを始めた。
新たな脆弱(ぜいじゃく)性が公表されるたびに、セキュリティ担当者は自社で利用する製品やシステムへの影響を確認し、対応の要否を判断する必要がある。脆弱性情報は日々更新されるため、情報収集を継続しながら、自社環境に関係するものを見落とさずに把握しなければならない。
課題は、情報を集めるだけではない。脆弱性の深刻度や悪用される可能性、自社システムへの影響などを確認した上で、どの問題から対応するかを決める必要がある。全ての脆弱性に同じタイミングで対応するのは難しく、担当者には大量の情報を調べ、システム構成と照らし合わせる作業が求められる。
人をボトルネックにしない AIエージェントで情報収集から影響確認まで
特に金融機関や社会インフラ事業者では、業務やサービスを支えるシステムを安定運用しながら、セキュリティリスクにもスピーディーに対応しなければならない。一方で、脆弱性管理を担う人材は限られており、専門的な判断を担う担当者の負担になりやすい。だが、サイバー攻撃の高度化、高速化が進み、脆弱性情報の収集から影響確認までを効率化し、限られた人員で対応スピードを向上することは不可欠だ。
こうした脆弱性管理の負担を軽減するため、日立製作所は2026年9月28日、AIエージェントを活用した「脆弱性・パッチ探索分析レポートサービス」の提供を開始した。オペレーショナルレジリエンスサービス「HMAX Cyber」の一つで、日本取引所グループ(JPX)が先行導入している。
自動化プログラムが脆弱性情報データベースやソフトウェアベンダーの公式サイト、セキュリティアドバイザリーなどを24時間365日巡回し、脆弱性やセキュリティパッチに関する情報を収集する。セキュリティパッチは、OSやソフトウェアの脆弱性を修正するための更新プログラムを指す。
収集した情報はAIエージェントが整理し、各組織のシステム構成情報と照合する。これにより、自社で利用している製品やバージョンに影響する脆弱性やパッチを抽出し、深刻度や悪用可能性など、リスクを判断するための情報を提示する。担当者が情報を1つずつ確認する負担を減らし、対応の優先順位を判断する業務に集中できるようにする。
JPXのサイバーセキュリティ対策部門では、2026年7~9月に効果を検証した。担当者が行う場合に1日約2.5時間かかると想定した脆弱性情報の収集作業を、自動化プログラムの利用によって約0.5時間に短縮し、作業時間を約8割削減できることを確認した。収集した情報についても、業務で利用できる品質を確保できたという。
パッチ適用の判断では、脆弱性情報とシステム構成管理表をAIエージェントで照合し、対象となる製品やバージョンへの影響の有無を自動で判定する検証も実施した。最終的な適用要否は担当者が判断する運用とし、AIによる情報整理や判定を人の判断につなげる形を想定している。
このサービスは、HMAX Cyberの3カテゴリーのうち、潜在的なリスクを見通して備える「Govern & Identify」(見通す)に位置付ける。日立は金融機関への展開を進めるほか、金融市場インフラで培った知見を生かし、電力や交通、通信などの社会インフラ分野にも適用範囲を広げる方針だ。
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