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マイナンバー制度が企業に与えるインパクトすご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

» 2014年03月20日 10時00分 公開
[八木晃二野村総合研究所]
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個人番号とは別に付番される「法人番号」の違い

 マイナンバー制度では、マイナンバー(個人番号)と同時に、法人番号の付番、利用も開始される。法人番号もマイナンバー同様、税の申告等に記載する番号となるが、法人番号がマイナンバーと大きく異なる点は「(1)法人を対象として付番される番号である」「(2)インターネット上で公開される」「(3)民間でも自由に使うことができる」という3点だ。

(1)法人を対象として付番される番号である

 法人番号は、「登記された法人」「国の機関」「地方公共団体」「税関係の支払いを行う人格なき社団(マンションの管理組合など)」に振られる番号で、税の申告などに利用される。付番機関は国税庁で、主に登記簿の「会社法人等番号」(12桁)を基にチェックデジットを含めて13桁の番号を生成し、各法人に書面で通知することになる。

(2)インターネット上で公開される

 法人番号は「商号又は名称」「本店又は主たる事務所の所在地」とともに、インターネット上で公開される。公開に当たっては、民間で積極的に利用できるよう、豊富な検索機能、ダウンロード機能などを設けることが検討されている。

(3)民間でも自由に使うことができる

 法人番号については、マイナンバーのように「利用範囲の制限」や「民間利用の禁止」はなく、自由に使うことが可能だ。企業の実在性確認や与信管理への活用など、法人番号を基盤とした新しい民間サービスが生まれることが期待されている。

対応への工程表はどう考えるべき?

 それでは、マイナンバーの話に戻ろう。

 マイナンバー制度は2016年1月に開始される。つまり、2016年1月1日以降に発生する従業員関係の調書については、従業員の本人確認を実施した上で、マイナンバーを記載する必要が出てくる。例えば、2016年1月1日に退職した人物については、退職所得の支払調書にマイナンバーを記載する必要があるため、本人確認とマイナンバーの受付が必要。パートの雇用、退職などでも同様だ。

 最初にマイナンバーの大量受付が発生するタイミングは、新入社員が入社し社会保険の加入届などを提出する2016年4月となるだろう。また、既存の社員全員のマイナンバーが必要となるのは、恐らく2016年7月の社会保険改定のタイミングだ。それまでには社員全員のマイナンバーを受付ける体制を整えておく必要がある。

 金融機関については、既存証券口座、銀行投信/公共債口座へのマイナンバーのひも付けは、3年間の猶予期間が設けられているが、新規口座分と保険については特に猶予期間は設けられておらず、2016年1月から番号の受付が必要となる。

マイナンバー制度のスケジュール 図3 マイナンバー制度のスケジュール

システム改修のデットラインは?

 上記のように、基本的には2016年1月までにシステム改修、運用体制構築を終えておく必要があると思われる。

 金融機関の既存口座に対する番号受付については3年間の猶予期間が設けられているとはいえ、新規口座分については2016年からマイナンバーの受付、法定調書へのマイナンバー記載が求められるため、やはり同様に2016年1月までにはシステム改修、運用体制構築を終えておくことが望ましい。

 ただし、実際にどの分野でいつまでにマインナンバーの記載が求められるのかは、これから出てくる各省令(財務省令、厚生労働省令など)に記載されるものと思われるため注意が必要だ。

 最後に、企業への影響をまとめておく。

  • 従業員の番号申告の手続きや、マイナンバー記載帳票のライフサイクル管理など新たな業務プロセスが発生
  • 社員だけでなく、アルバイト、報酬支払対象者も含めた情報管理が必要となる
  • 特定個人情報の保護に向けた体制強化、システム整備、コンプライアンス対応強化が求められる

 法律はマイナンバー制度の骨格を決めたにすぎず、具体的な実装方式を真剣に考え、マイナンバー制度のメリットの実現を優先し、デメリットの極小化を図ることが大切だ。法律施行まで2年を切った今、企業には最新のICTを活用した早急なシステム対応が求められている。

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