マイナンバー制度のメリットとデメリットをまとめると以下のようになる。
国民の負担(税)と給付(社会保障)の公平化、行政コストの削減と事務の効率化
前述の通り、税や社会保障の分野にマイナンバーを適用することで、国民の負担と給付の公平化を実現するとともに、行政コストを削減できる可能性がある。
納税や社会保障などに関する手続きの簡素化
国民が納税や社会保障関係の申請を行う際の手続きが簡素化される可能性がある。例えば、現状では引っ越し後の児童手当の申告の際に、これまで住んでいた自治体の課税証明書を新しい住所の自治体に提示しなくてはならない。マイナンバー制度導入後は、自治体同士が情報提供ネットワークシステム経由で課税情報を電子的に連携できるため、住民自身で課税証明書をわざわざ取得、提示する必要はなくなるといわれている。
行政サービスの電子化
前述のマイ・ポータルは、国民が自身の特定個人情報がどのようにやりとりされているかを確認することが目的だが、将来的には、行政にある自分の情報(税、年金、世帯関係など)をまとめて閲覧できるようになったり、オンラインで簡単に税申告や社会保障申請ができる様になる可能性もある。
情報漏えい時のプライバシーリスクが拡大
マイナンバーは国民一人一人にひも付く基本的に生涯不変の番号であることから、マイナンバーがひも付いたままでの情報が複数の箇所から漏えいした場合、簡単に名寄せされてしまう可能性がある。
当初、マイナンバーが使われるのは、税と社会保障および災害対策に関する分野だけだが、将来さまざまな情報がマイナンバーにひも付いてしまうと、自分の知らないところで自分の所得から健康に関わる情報まで把握されてしまう可能性もある。
このように、特定個人情報の取扱いには十分に注意が必要となる。政府もこの点は留意しており、政府と独立した第三者機関として特定個人情報保護委員会が設置された。また、特定個人情報の利用範囲はマイナンバー法で厳格に制限されており、目的外利用、漏えいなどに関して従来の個人情報よりも厳しい罰則が適用されることになっている。
莫大な費用負担
国の試算では、国と自治体の対応で3000億円弱の費用がかかるとされている。これに加え、もし個人番号カードを無料で(税金で)配ることになれば、数百億円の費用が追加でかかることになる。行政側の負担だけでなく、民間では金融機関、健康保険組合、医療機関、そして一般の事業会社等もマイナンバー制度への対応が必要となる。これら民間の負担額も合わせると、1兆円級の費用がかかる可能性もある。
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