2つ目の進化として、電力効率の面での改善も進んでいる。UPS自身の電力消費量が減っているのだ。
標準モードでも従来は80%台だった電力効率が90%以上にまで改善しているのに加え、各社各様の技術でさらに電力効率を上げる「エコモード」運転が選べるようになった。
例えば、商用電力品質が安定しているときは常時商用給電方式をとり、不安定になったときだけ常時インバータ方式に切り替える方式などがとられている。この場合、常時商用給電モード(エコモード/グリーンモード)ならファンも停止して効率が97%(インバータ動作時は90%)にまで上がる。ムダになる電力は3分の1以上減るというわけだ。
また、電力効率の面では一般的な鉛バッテリーよりもリチウムイオンバッテリーの方が優れている。値段は3倍程度にもなるものの、こちらは何も工夫しなくても電力消費量は3分の1程度に落とせる。
3つ目の進化のポイントは、バッテリーの寿命の延びだ。2年が寿命だったのは数年前、現在は4年は普通、5年〜7年という期待寿命の機種も多くなっている。リチウムイオンバッテリー機種では8年寿命のものもある。
これだけ長寿命化すれば、UPS廃棄に至るまでのバッテリー交換が1回以上減る可能性があり、しかも消費電力が少なくなっていることから、1000VA機種の5年使用でTCOとして10万円程度の差が生まれるという試算もある。
ただし無料でバッテリー交換などのサポートが受けられる保証期間は2年から3年、8年寿命機種でも5年なので注意しよう。
期待寿命が長いとはいえ、使用温度や使用状況によってバッテリー劣化の進み方は大きく違う。期待寿命は目安でしかないことに注意が必要だ。多くの機種が25度での運転を前提にしているが、温度が10度高い環境では寿命は約半分にまで縮まるという。
メーカー側にも明確な寿命の計算方法はない。ただし使用状況や電圧変化の状況分析と経験則により、ある程度の寿命予測は可能だ。その期限については、UPS本体のLEDやブザー、パネル表示、管理ソフトの表示やアラートによって知ることができる。親切なベンダーなら、予測寿命の前に通知してくれる場合もある。
4つ目の進化で注目なのは、企業用UPSの必須機能がOSの自動シャットダウンだ。これは各社が標準またはオプションで提供しているシャットダウンツールが担当する。このツールが仮想サーバ環境にフィットするように改善されてきている。これについては後述する。
5つ目の進化は、ソフトウェアによる監視や制御以外に、電源管理専用ボードによる管理手法の発展に注目だ。図4の製品の場合、管理や制御用ソフトウェアやエージェントの導入が不要で、ボード自身が持つシャットダウンツールにより、SNMP、telnet、ssh、さらにはFTPやSOCKETでのUPSおよび複数OSの機器の監視や制御を可能にしている。
制御可能な装置台数が多く、サーバやクライアント、ネットワーク機器などのスケジュール運転、イベント(異常発生や設定しきい値超過など)をトリガーとするスクリプト実行、インスタントメッセージやメールを使った管理者への通知、さらにはまた系統ごとのUPSの連携動作による冗長化電源対応(図5/UPS故障でもサーバやストレージの稼働を止めない仕組み)などが備わっており、設定さえ綿密に行えば運用上はほぼノータッチで済む。
他のメーカーからも、ネットワーク上のSNMPマネージャーからのUPS管理やネットワーク経由で複数のコンピュータの自動シャットダウンやリブートが可能なボードが販売されており、一部は同等の機能を備えている。
専用ハードウェアであるだけにパフォーマンスが優れ、状況確認や管理操作がリモートから(時にはモバイルデバイスからでも)実行できるところにも注目したい。
以上、最新UPSの注目ポイントを挙げてみた。次に、どんなUPSを選べばよいか考えてみよう。
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