マーケティングは市場の分析、顧客の分析、競合他社の分析、価格戦略分析、販売チャネル分析など、さまざまな分析を行い商品づくりやプロモーション、販路開拓などに生かして企業成長につなげる大切な役割を負っている。
従来、多くの分析手法を使ってマーケティングが行われてきたが、それに欠けていたのは商品や企業ブランドに対して顧客がどう反応しているのか、その評判はどうなのかという部分だ。
VOC(Voice Of Customer)を聞くことはこれまでもやってきたはずだ。しかし、それを商品やブランドをどう変えていくべきかにつなげる分析は、必ずしも十分に行われてはいなかった。
特に近年はモバイルデバイスの普及もあってソーシャルメディアに顧客の評価や意見が表明されるケースが非常に増えており、企業サイトやECサイトへのアクセスや購買情報などを集約するWeb解析ツールからの情報も同様に増加している。また、コンタクトセンターに寄せられる電話などの情報もテキストおよび音声データとして保存されるようになって、分析対象となる材料は幾何級数的に増加している。
いわゆる「ビッグデータ」となった顧客意識や行動の分析は、特に日本は欧米に比べて後れを取っている。欧米ではかなり以前から「マーケティングオートメーション」の導入が盛んで、顧客の行動から次のマーケティング施策への連携を自動化するシステムが作られている。
それが意味するのは、顧客一人一人に対して最も効果的な施策がとれるということだ。特に見込み客(リード)を獲得し、その興味度合いや購買行動などに応じたダイレクトメールや広告などの手法を駆使して販売拡大へとつなげていくことに大きな役割を果たしている。
日本ではマーケティングオートメーションシステムを作り上げるための下地となるべきマーケティング分析ができる人材が不足しており、また分析結果を効果的なアクションにつなげる方法論も、多くは個人の経験や勘に任されていて、客観的に合理性のある施策がとれない面もある。その結果、マーケティングオートメーションの導入も進まず、あり余る分析材料を前にして動きがとれない状況にあるようだ。
こうした傾向は、ビジネス分析の代表的なツールであるBI(Business Intelligence)やBA(Business Analytics)ツールの市場規模にも顕著に表れている。図1はIDCによる世界のマーケティングオートメーションツールとBI/BAツールの市場規模だ。
日本はマーケティングオートメーションでは世界市場の2.1%を占めるにすぎず、BI/BAでも4.3%という状況だ。欧州に比べてもかなり後進的な状態に見える。
ただし、いつまでもこの状態にとどまるとは考えられない。図2には市場の年平均成長率の予測を示す。市場の成長率は欧州よりも高くなり、特にマーケティング市場では大きな伸びが見込まれている。もともとの市場が小さいので市場規模が逆転することは当面なさそうだが、先進的な企業はビジネス分析の必要性に気づいており、これから伸びていく市場であることは間違いない。
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