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明日の情シスが担うべき職種、データサイエンティストとはすご腕アナリスト市場予測(3/5 ページ)

» 2014年07月17日 10時00分 公開
[眞鍋 敬IDC Japan]

リスク管理におけるデータ分析の課題

 リスク管理の面では、例えば今大きな問題になっている金融業界での「不正送金」や「コンプライアンス違反」といったリスクに対して、データ分析がほとんど発見や対策に役立てられていないところに問題がある。

 被害が生じている金融機関では、送金や出金の情報を記録していないことはあり得ないし、メールのログや電話のログを残していないことも一般的にはないだろう。これらの情報についてそれぞれに統計的な分析は行われているだろうが、それぞれを突き合わせて問題を発見できるような、統合的な分析が十分に行われていなかったのではないだろうか。

 被害が出てからの綿密な、しかし個別メディアごとの分析により、事件の経緯は明らかになっているものと思われるが、もしも関連するメディアを統合して分析することができれば、もっと早く、もっと正確な事実把握ができ、対策が迅速にとれていたかもしれない。場合によっては不正が行われることを事前に予測して、未然に防ぐことができた可能性もある。こちらの領域でも、やはりデータ分析ができる人材が不足していることが問題だ。

M2M/IoTにおけるデータ分析の課題

 M2M/IoTの例として、プラント内などの膨大な数のセンサーが備えられている施設や設備を考えると分かりやすい。例えば、原子力発電所などには数百万個のセンサーが備えられており、その測定値は中央に集約されて統計、分析が行われている。

 その数値の変化により、部材の劣化や装置の障害などが分かるのだが、どの数値がどう変化すれば、どんな症状につながるのか、いつメンテナンスをすれば安全なのか、といった推定や意思決定は、一部マニュアル化されてはいても、究極は経験豊富な職人わざでなされている。

 しかし、ベテラン技術者が定年を迎えるなどして少なくなっていく今後、いつまでもこのような経験と勘の世界では限界がある。さまざまなセンサーからの情報を統合する一方で、職人的な専門技術者の思考パターンをデータ分析アルゴリズムに落としこんで分析可能にする仕組みを作り、専門技術者が不在であっても、障害などの予兆を発見することができるようにしていく必要があるだろう。

 原発は極端な例かもしれないが、一般的な工場のラインでも、小売店舗のPOSシステムでも、また街角の自動販売機や施設内外の監視カメラ、空調などのビル管理システムでも、まったく同じことがいえる。障害が起きると、時には業務停止に至って直接的な損害のほかに、機会損失による大きな影響が出てしまう。

 この領域では、障害の予兆管理ができるようなベテラン技術者のノウハウを生かし、分析アルゴリズムに変換するために、技術知識と分析手法、そのシステム化ができる人材が求められることになる。

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