当初は大企業中心だったERPも、クラウド型の登場で導入のハードルが低くなった。大きな制度改正を控え中堅中小企業からの期待も熱い。ERPの最新事情とクラウド型のメリットを紹介する。
かつては大企業のための業務システムというイメージの強かったERPだが、昨今では中堅・中小企業でも導入が当たり前となりつつある。その1つの理由は、SaaS版をはじめとするクラウド形式のサービスが普及したことで、導入のハードルが低くなっている点が挙げられる。
とはいえ、導入時の既存業務への影響や運用管理面の不安、そしてコストに対する懸念から導入をためらう企業も多いのが現実だ。今回は、クラウド型ERPを軸に、最新のトレンドや中堅・中小企業での利用動向などについて、導入実態も踏まえながら紹介することにしよう。
財務会計を中心に、人事給与や生産管理、購買、調達、物流などの統合業務パッケージであるERP。既に部分的な導入を行った企業も少なくないが、あらためて今、ERP導入を検討する企業が増えた。
その理由に挙げられるのが、ここ数年のうちに大きな制度改正として予定されている「10%へ引き上げられる消費増税」や「マイナンバー」などに伴うシステム改修だ。消費増税は2015年10月より引き上げが検討され、マイナンバーに関しては2016年1月に開始されることになった。
これらの対応に関して、自社システムをメンテナンスして対応するには膨大な改修コストがかかる可能性があり、特に中堅中小企業ではこのインパクトは非常に大きなものになることだろう。対応を見誤ると、改修作業が長期化するデスマーチに突入することも考えられる。
そこで注目されているのが、財務会計や販売管理などの機能を持つERPだ。これらの制度改正については、ERPパッケージ及びサービスの保守契約内で対応するケースがほとんどだ。将来を見据てERPのパッケージやサービスを検討する企業は少なくない。
ただし、前回の8%対応のときと同様、消費増税などの方針を政府が正式決定するまではユーザー側としての対応が前に進むことはなさそうだ。恐らく10月以降のタイミングで、軽減税率に対する方針や複数税率に対応するためのインボイス方式(請求書とは別にインボイスを発行する)の実装方法が明らかになる。その状況を見た上で、ERP導入に向けて動き出す企業は少なくないと考えられる。
中でも中堅・中小企業から注目されるのが、SaaS形式などで提供されているクラウド型のERPだ。従来こうしたクラウド型ERPを導入する企業の多くは、海外展開における多言語多通貨対応や国内へのシステム集約を主目的とした。
だが最近では、国内だけでの利用であっても業務負荷の軽減やコストメリットなどを理由に導入するところが増えた。そこで、クラウド型ERPがもたらす主なメリットを紹介しながら、そのメリットを最大化するためのポイントなどについて解説することにしよう。
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