モバイルやソーシャルなどが全盛の今、スイッチやルーターなどネットワーク機器の市場はどう変化したのか。動向を探る。
草野賢一(Kenichi Kusano):IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー
国内ルーター、イーサネットスイッチ、WANアプリケーション配信やレイヤー4-7スイッチなどのアプリケーションネットワーキング、無線LANなど国内ネットワーク機器市場の調査を担当。ベンダー調査に加え、ユーザー調査やチャネル調査にも携わり、それらの調査結果をベースに、国内ネットワーク機器市場の動向を検証、市場動向の分析および予測を提供する他、さまざまなカスタム調査を実施している。IDC Japan入社前は、エンジニアとしてユーザー企業のネットワークの設計、構築を担当。商品企画にも携わる。
データセンターにITリソースを収容すると同時に、クラウドサービスの利用も急速に拡大し、ビジネスのあらゆる面でITリソースとユーザーの間を結ぶネットワークがかつてないほどの重要な役割を担うようになっている。
そんな状況の中で、スイッチやルーター、ADC(Application Delivery Controller)、無線LANなどのネットワーク機器の市場はどう変化しているのだろう。今回は、ネットワーク機器全体の市場トレンドを押さえた上で、将来を見据えたネットワーク機器の条件を考えてみよう。
ITリソースのデータセンターへの移管やクラウドサービスの隆盛に伴い、ネットワーク機器市場は徐々に変化を見せている。まずIDCが2014年に発表した市場調査の概要を紹介していこう。
イーサネットスイッチ市場の2013年実績は前年比成長率17.9%と大きく成長し、過去最大の市場規模となる2073億1200万円に達した。そのうち企業向けイーサネットスイッチ市場は、前年比成長率9.2%で1353億200万円に達し、通信事業者向け市場も、前年比成長率40.3%で市場規模は707億300万円と大きく拡大している。企業向けイーサネットスイッチ市場の2010年〜2013年の実績と2018年までの予測を図1に示す。
グラフ中、赤で示したオフィスLAN向けスイッチの売上は、IT投資が落ち込んだ2011年の後は拡大基調で漸増を続けているものの、既に飽和、成熟した市場であり、既存スイッチのリプレース需要が増加傾向を支えていると見てよいだろう。2014年以降はほぼ横ばいの傾向となることを予測している。
現在までのところ、有線LANから無線LANへの切り替えがスイッチの市場動向に直接的に影響を及ぼすほどにはなっていないが、今後モバイルデバイスを使ったワークスタイルが一般化するにつれて変化する可能性が高い。実際、IDCのユーザー調査によれば徐々に有線LANの利用者数が減少している傾向が見られ、有線ネットワークの更新は減っているようだ。
一方、青で示したデータセンター向けスイッチの売上が右肩上がりで急速に伸びている。この増加トレンドの背景には、ITの「第3のプラットフォーム」へのトランスフォーメーションの波があるとみてよい。
ITの世界ではこれまで10〜20年のスパンでプラットフォームの変化が起きている。第1のプラットフォームはメインフレームと端末を利用するITシステムの時代、第2のプラットフォームはクライアントサーバシステムの時代、そして第3のプラットフォームは、今まさに移行が急ピッチで進んでいるモバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドの4要素を含んだ新しいIT環境だ。
ITベンダーにとっては現在進行中の第3のプラットフォームへの対応がこれからの十数年を勝ち残る絶対条件となり、ユーザーのIT環境の変化にいかに早く対応できるかが競争力の鍵になる。
このトランスフォーメーションの過程で、イーサネットスイッチ市場に影響が及んでいるのは主にクラウドサービスやモバイルブロードバンドの利用拡大傾向だ。クラウドサービス基盤を構築するデータセンターと、LTE(Long Term Evolution)サービス提供設備を中心にした基盤構築を進める通信事業者のデータセンターがイーサネットスイッチの市場を拡大している。
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