主なネットワーク機器に関して市場動向と未来予測を紹介してきたが、ここから近い将来のネットワーク像について述べてみたい。
今関心が集まっている領域の1つに「ネットワーク仮想化」があり、その先にあるSDN(Software-Defined Network)およびNFV(Network Functions Virtualization)への注目度も高い。
2012年からOpenFlowあるいはSDNがネットワーク分野の新しいキーワードとして一大ブームとなったが、2013年から2014年にかけて一般企業においても現実の適用事例が公開されており、漠然とした期待感の段階を過ぎて現実のネットワークの課題解決方法としての理解が進んできた。SDN導入動向を予測したのが図3だ。
先行しているデータセンターの市場は、2017年には342億3400万円の規模に達すると見込まれる。こちらの市場では、クラウドサービスのネットワーク機能を迅速、効率的に提供することに重きが置かれており、求められる機能が整理されてアーキテクチャが大筋で収束してきた。オーバレイ方式のSDNが主流となっているが、アンダーレイをどうつくるかが課題だ。これにはL2またはL3のファブリック構築がデータセンター用途では適する場合が多いと思われる。
企業ネットワークでのSDNは、データセンターのようなクラウドサービス基盤を前提にしているわけではなく、市場としてはデータセンター市場の約4分の1程度の市場規模にとどまると見ている。こちらはネットワーク機器の一元管理と論理ネットワークの面的拡大に重きを置いた導入が中心的だ。
企業システムにおいてはネットワーク技術者不足が深刻になっている一方、サーバ技術者の方では仮想化サーバの運用管理経験を積んできており、その技術を生かして仮想化ネットワークの運用管理も可能にしたいという意欲を持っている。サーバ技術者とネットワーク技術者との融合が、これからのシステム部門に課された課題といえそうだ。
現時点ではSDNはまだPOC(Proof of Concept)の段階にとどまっており、先行しているデータセンターでもそれは同じだ。次世代のネットワークを構想するには、現世代でのソリューションへの課題を一つ一つ解決していくことが求められている。
これからの企業ネットワークでは有線LANと無線LANが混在する環境が当たり前になり、特にモバイルデバイスの活用のための無線LAN導入ケースは増えていく。そこでは電波の利用ポリシーが重要な課題になるはずだ。
多種類の端末が混在する環境で安定したネットワークを維持するには、十分な同時接続数が確保できるインフラが必要になり、電波を合理的に割り振って端末の接続を維持する制御の仕組みが重要になる。無線LANコントローラーの高度な制御機能と、端末管理のためのMDMがますます求められることになる。
また標的型攻撃に代表されるネットワーク上の脅威への対応策など、セキュリティの強化も見逃せない観点だ。
さらに、ネットワークのパフォーマンスも重要だ。クラウドを利用する際のパフォーマンスをネットワーク側で最適化する必要がある。プライベートクラウドを運用する場合には、海外拠点を含めた拠点間通信の高速化を図る必要がある。
これには、例えばサービス事業者と拠点でWAN高速化装置を設置するなどの対応が考えられる。もちろんADCを使ったアプリケーションレベルでのパフォーマンス最適化も重要だ。加えて、ネットワーク機器のリプレース時には、省電力を強く意識した機器選定が望まれる。
以上、今回は国内のネットワーク機器市場を俯瞰し、それぞれの市場の未来予測を中心に述べてきた。ネットワーク技術と機器のトレンド理解の助けになれば幸いだ。
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