準天頂衛星の応用で最も期待されるのは、米国が運用するGPS(GNSS、地球的衛星測位システムの1つ)の能力を超えた高精度の測位だ。
GPSは、24機を常時利用して世界中にGPS信号を届けるが、正確な測位のために受信機は常に4機の信号を捕捉する必要がある。しかし、日本では場所によってはGPS衛星3機の信号しか届かないことがある。
そのとき、常に真上にある準天頂衛星がGPS補完信号を発信していれば、それを利用して正しい測位が可能になる(図2)。ユーザーの測位可能時間率で計算すると、GPSでは約90%だったものが、準天頂衛星3機の運用時には約99.8%にまで向上するという。
また、準天頂衛星は、GPS衛星の軌道誤差、時刻同期誤差、電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差を補正する誤差補正データをGPS端末に配信できる。さらに、日本全国1250カ所の電子基準点と呼ばれる地点では受信信号から誤差を観測、計算して、準天頂衛星へフィードバックするので、従来のGPS測位よりもはるかに正確な測位が実現する。GPSの測位誤差は数十メートルといわれるが、準天頂衛星を併用すれば、誤差を数センチに抑えられると見込まれている。
その他、準天頂衛星やGPS衛星の異常を数10秒以内で通知可能にしたり、GPS信号の捕捉支援情報を送信することで、GPS受信機の電源ONから捕捉までにかかる時間(30秒〜1分程度)を15秒程度に短縮したりと、より便利に測位信号を利用できる効果もあるという。
わずか数センチの精度で居場所が特定されてしまうと、例えば打ち合わせと偽ってオフィスの隣にある喫茶店でさぼっていても、正確な場所がすぐに特定されてしまう。上司から「どこにいるんだ?」と連絡を受けて「今は会議室で打ち合わせ中です」なんてうそをついても、その測位誤差は数センチしかない。喫茶店のどのあたりに座っているのかも特定できる可能性があり、偽証言はすぐにばれてしまうだろう。もちろん上司があなたの位置情報を取得できることが前提だが。
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