衛星が常に日本の真上にあることで、GPSの測位誤差を現在の数十メートルから数センチに縮める「準天頂衛星測位システム」の全貌に迫る。
今回のテーマは「準天頂衛星測位システム」だ。衛星がいつも日本の真上にあり、山やビルに邪魔されずに常に信号を送る。GPSの測位誤差を現在の数十メートルから数センチに縮めるというシステム、実証のための準天頂衛星測位システム搭載バスの運行も始まった。
ほぼ日本の真上(天頂)に少なくとも1個の衛星が常に位置するように衛星を運航するのが準天頂衛星システムで、それを使って地上の位置を計測するのが準天頂衛星測位システムだ。世界でもあまり例がないが、日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)がシステム構築を目指し、2010年9月11日に技術実証のための準天頂衛星初号機「みちびき(QZS-1)」が打ち上げられ、試験運用を続けている。
準天頂衛星とは、特定地域の真上にある衛星のこと。常に特定の場所の上空にある衛星といえば静止衛星が連想されるが、静止衛星は赤道上にあるので、北半球にある日本では信号のキャッチに赤道に向かって約30〜50度の角度でアンテナを傾ける必要がある。
その方角に山や高層ビルなどがあると信号が受信できない。しかし、衛星が常に日本の真上にあれば、アンテナは上に向けていればよく、山間部でも、ビルが林立する都市部でも全国くまなくスムーズに信号が受信できることになる。
静止衛星なら軌道上で軌道傾斜角0度だが、準天頂衛星は約45度の傾斜角にして日本の真上を通る。そのため地球の自転でだんだん位置がずれ、約8時間で日本上空を離れ、24時間後に戻ってくる。日本上空で最も長く滞在できる軌道を求めたところ、図1のような非対称の8の字軌道が最適だった。この8の字の範囲に入る日本と近隣の地域で信号を受信できる。
1機の衛星が日本上空にいられるのは8時間だけだが、計画では追加で3機の衛星を打ち上げて運用する予定だ。各8時間日本上空に滞在できるので、24時間の利用が可能になるわけだ。
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