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可視光に情報を載せる「情報発信LED照明」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

» 2015年01月21日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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店舗、美術館、博物館、サイネージ、舞台、プロジェクションマッピングにも応用可能

 この技術の応用領域を考えてみよう。例えば、小売店などに並ぶ商品に個別の情報を発信するスポット照明を設置すれば、来店客が自分のスマートフォン(アプリ導入は必要)で商品に関連する情報を、商品タグや説明パネルを見なくとも入手できる。

 関連情報は、店側が管理する商品情報データベースから抽出されるので、データベース内容を変更することで、例えばタイムセールや時間限定のノベルティ提供などを会員向けサービスとして随時提供できる。

 また、絵画、彫刻、書、工芸品など、室内展示の作品個々に別々のLED照明を当てれば、展示現場のスペースを占有することなく、一つ一つの作品について詳しい情報を、時には動画で提供することも可能になる。また、簡単なサイネージ(看板)にLED照明を当てておけば、サイネージ上には表示不可能な量の情報を提供できる。

 さらに、照明をもっと大掛かりにすれば、各地の歴史的建造物や名所のライトアップに利用して、観光客が夜景を見ながら歴史や関連イベントの紹介コンテンツを閲覧したり、商業施設や建築物壁面へのプロジェクションマッピングからイベント関連情報などを入手したりすることもできる。コンサートなどの舞台のスポットライトに応用すれば、例えば歌手の情報、楽曲の情報、歌詞などを配信できるだろう。

 加えて、アプリに商品の注文や電子決裁機能を持たせれば、入手した情報を基にその場で商品注文、電子決済を行うことも難しくない。他にもさまざまな自動処理やサービス連携機能をアプリに組み込んで、新しいサービス、ソリューションの広がりが期待できる。

 富士通研究所では今回の発表に至るまでに、非常に多くの素材、形状の物体に照明を当てて、正確に情報が復元できるかどうかを検証した。さまざまな色や反射特性を持つ物体に対応できるよう、色補正方法をチューニングした結果、ほぼ何にでも応用できる見込みが立った。

 発表以来、多くの企業などから引き合いが寄せられた。それぞれの目的に沿って精度の高い情報検出ができるように、さらに検証を進める。表1に示したように通信速度や扱う情報量は既存技術に比べて限定的ではあるが、通信速度を向上させることはあまり重視せず、実用的なソリューションとして発展させる考えだ。

関連するキーワード

映像への情報付与技術

 富士通研究所は、2012年にテレビ映像にID情報を載せる技術を開発した。2013年12月には大手テレビショッピング会社にソリューションを提供し、テレビショッピング視聴者がスマートフォンを画面にかざせば、紹介中の商品の情報提供Webサイトに接続、閲覧できる仕組みを構築済みだ。また、2013年1月にはPC画面を携帯電話などで撮影してファイル転送を可能にする「PC画面向け映像媒介通信技術」を開発した。

「情報発信LED照明」との関連は?

 PC画面向け映像媒介通信技術は、PC画面にIPアドレスや無線LANのSSIDなどのの情報に対応する微小な灯りを重ねる方法で携帯電話などのカメラを通して情報を配信する技術だ。情報を基に携帯端末からPCに無線LAN経由でファイル転送を要求して転送を行う仕組みがとられた。

 また、テレビショッピングへの応用では、テレビ映像の一部に人間の目には分からない程度に信号を埋め込み、携帯端末で撮影するとURLなどの商品サイト接続のための情報が配信される仕組みをとった。これらの技術を発展させ、LED照明に応用したのが「情報発信LED照明」技術だ。

NFC(Near Field Communication、近距離通信)

 多方面で利用される無線による近距離通信技術の総称。NFCカードやタグには、ICとアンテナが内蔵され、読み取り装置(NFCリーダー)から数センチの距離でIC内の情報の読み取りや書き込みができる。

 Suicaなどに利用されるFelica規格、ISO/IEC 14443 TYPE A/B規格などに基づく非接触ICカードが代表例だが、スマートフォンなど各種機器に内蔵される場合もある。また、物品に貼り付けたり取り付けたりできるようにした小型、薄型のタグ(RFIDタグともいう)もある。こちらは数メートルから10メートル以上の距離でも通信可能なものがある。

「情報発信LED照明」との関連は?

 ある程度の距離をおいて通信ができるところや、物品個々に異なる情報を付与できるところが似ているが、NFCによる近距離無線通信では読み取り装置が不可欠だ。一部のスマートフォンには組み込まれる場合があるものの、当面一般的には利用できない。また、タグを物品に取り付けたり貼り付けたりする必要があるため、特に美術作品などの場合に鑑賞の邪魔になることもある。

 情報発信LED照明は、NFCタグと同様の働きを、美観を損ねずに実現でき、一般的なスマートフォンで利用可能なところが違う。また、遠く離れた建造物のライトアップ、舞台上の人物など、NFC技術は適用できない領域にも使える。

LED照明

 LEDモジュール(1つまたは複数のLEDチップのパッケージを基板に実装したもの)やLEDランプ(電球形や直管形など各種あり。LEDモジュールと制御装置を一体化したもの)と、それらを使用する照明器具の全体を指す。

「情報発信LED照明」との関連は?

 近年のLED照明はRGB3色のLEDそれぞれの明るさを制御して、カラー調色ができるものが増えた。情報発信LED照明は、カラー調色が可能なLED照明を利用して、人の目には分からない色の変化でID情報を信号として発信、スマートフォンのカメラ映像を通して受信し、ID情報として復元できるようにした。

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