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» 2015年02月18日 10時00分 公開

無意識の動作で未来を予測する「ドライバー挙動解析渋滞予測」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]
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「ドライバー挙動解析渋滞予測」の今後

 このモデルを利用して、自由走行相とメタ安定相の判別を行ったところ、平均判別率は81.65%に達した。さまざまな運転のクセを持つ人々を対象にしてこの成績だ。特定の人を対象とすれば、判別率はさらに向上するという。

 また、今回はニューラルネットワークシステムによる解析を行ったが、ビッグデータ解析分野で利用される機械学習アルゴリズムであるサポートベクターマシン(SVM)を利用すれば、さらに判別率が改善すると期待する。なお、各ドライバーの無意識の動作から渋滞を予測するという研究は世界でも類がなく、この技術は現在特許出願中だ。

 注目すべきは、渋滞予測のために新しいセンサーの開発や実装が必要なく、大掛かりな交通監視システムもいらないことだ。運転する自動車に、ブレーキやアクセル、ハンドルの操作データ(一般的なセンサーで計測可能)の収集機能と、その解析のためのソフトウェアがあればよい。

 ソフトウェアもそれほど大きなサイズにはならず、例えばカーナビに搭載して、自動車のメーター部に渋滞予測を表示するような実装が考えられる。実用化への道はまだこれから始まる段階だが、自動車メーカーなどとの共同研究が実現すれば、意外に早く、どこでも渋滞を予測して回避できる日が来るかもしれない。

関連するキーワード

VICS(Vehicle Information and Communication System、道路交通情報通信システム)

 道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)が道路管理者や都道府県警察が収集した交通情報を基に編集した道路交通情報を、FM放送や光/電波ビーコンによって車両に提供するシステム。

 車両用の端末はカーナビに内蔵されて普及し、出荷台数累計は現在までに4300万台以上に達した。高度道路交通システム(ITS)の一部として重要な役割を果たすものと位置付けられ、渋滞情報や所要時間、事故や工事情報、サービスエリアなどの混雑情報などが提供される。

「ドライバー挙動解析渋滞予測」との関連は?

 VICSが基にする交通情報は、主にテレビカメラ、光ビーコンなどの車両感知器のデータに依存する。こうした設備はコストがかかり、そのインフラを全ての道路にくまなく整備するのは現実的でなく、今後も対象外の道路は相当に残るものと思われる。

 ドライバー挙動解析渋滞予測は、渋滞予測に限定してはいるものの自動車それぞれに運転解析ソフトウェアを搭載すればよく、インフラの有無とは関係なく利用可能であり、低コストで実現可能だ。

ニューラルネットワークシステム

 人間の脳の神経回路の仕組みをモデルにした問題解決のための技術。脳は神経細胞であるニューロンが相互に信号伝達を行うことで複雑な認知や判断を行うようにできている。そのニューロンのネットワークをコンピュータ上で数理的に模倣し、人間が経験を基により適切な行動ができるようになる(学習)のと同様に、過去の実績から、ある入力から適切な出力を導きだすためのモデル(関数)を発見し、次の新しい入力に対してモデルを当てはめて、正解ではなくともより適切な答え(出力)を得るようにする。事例が積み重なるごとに、より適切な答えが出せるように最適化される。

「ドライバー挙動解析渋滞予測」との関連は?

 ドライバーの挙動のデータを基に、渋滞が起きていない状態(自由走行相)と速度は低下していないが道路の車両密度が高くなった状態(メタ安定相)の挙動を判別するのにニューラルネットワークシステムが用いられた。ニューラルネットワークシステムは非線形性を示すデータのパターン分類や高次統計量に対する処理能力に優れた特徴があり、ドライバーの挙動の解析に適したアルゴリズムの1つとして採用された。

ベンジャミン・リベットの研究

 米国の医師で生理学者のベンジャミン・リベットが著した『マインド・タイム 脳と意識の時間』(岩波書店、2005年)に記された脳からの信号と動作との関係に関する研究のこと。リベットが行った実験では、一定の時間間隔で光の点が回転する時計のようなモニターを見ながら、被験者に手首を動かしたいと思ったときに動かしてもらい、被験者が光の点がどの位置にあるときに手首を動かしたかを聞いた。それを被験者が着用した脳電位測定装置の測定結果と比較すると、驚いたことに、脳電位の変化は被験者が報告した「手首を曲げた」時点よりも0.3秒早く発生した。

「ドライバー挙動解析渋滞予測」との関連は?

 人間の挙動は、それと意識されるよりも前に脳が無意識で開始するという研究結果が、無意識化でのドライバーの挙動変化が、渋滞の前兆現象を捉えているのではないかという仮説のヒントになった。

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