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ビジネスノートPC「Ultrabook」は今、どうなっている?IT導入完全ガイド(4/4 ページ)

» 2015年03月09日 10時00分 公開
[二瓶 朗グラムワークス]
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 企業でUltrabookの導入を検討する場合、押さえておきたいポイントをまとめよう。

そもそもUltrabookなのかハイエンドノートPCなのか?

 Ultrabookを導入するメリットは、PCとして十分に使えるパフォーマンスを備えながら、携帯性や可搬性が高くモバイルにも向いているため、どんなシーンでも利用できるというところにつきる。

 しかし、前述したように同様のスペックを搭載するPCでありながら、要件に沿わないためにその製品がUltrabookであるとは限らない状態になっているのも確かな現状だ。

 実際に、クラムシェルタイプのノートPCであるレノボ「ThinkPad T450s」は、BTOによる製品構成によっては、Ultrabookになる場合と普通のハイエンドノートPCとなる場合がある。外観に関してはほぼ同じだ。

 つまり、Ultrabookを指名して導入するというよりも、必要な機能や条件を追求したときに導入対象となった製品が「Ultrabookだった」というケースが、今後増えると想定される。

 以下では、それをふまえつつ、ビジネスで最高峰のPCを考えたときに選ばれるUltrabookの選択ポイントについて挙げる。

使用目的でUltrabookを選ぶ

日本限定モデルは予約開始後 即完売 図9 日本限定モデルは予約開始後 即完売(出典:レノボ)

 ビジネスシーンでUltrabookを使うとき、どのような目的で使うかを明確にすることがポイントとなる。上でも解説しているがUltrabookは「クラムシェル」「コンバーチブル」「デタッチャブル」の3形状に分類できる。デスクでの作業が多い、文字入力をする作業が多いという場合なら、クラムシェルタイプのUltrabookを選択することになるだろう。

 デスクに座って作業をするよりも、Ultrabookを持ち歩いて「見る」「見せる」といった業務が多いというなら、タブレット寄りのデタッチャブルタイプのUltrabookを選択するのが理想ということになる。その中間的存在であるコンバーチブルタイプのUltrabookは、両者のおいしいとこ取りの側面がある。

 タブレットの普及が進んだ今、作業用のPCとプレゼン用のタブレットを2台持ちするケースも少なくない。例えば、PCで作成したPDFをタブレットに送信してプレゼンする場合には、データの受け渡しに余計な手間を必要とする。特にPCとタブレットでOSが異なる場合には文字コードなどの問題もあり更に手間が必要だ。このような面からも1台で集約可能なコンバーチブルタイプ、デタッチャブルタイプの2 in 1 Ultrabookはビジネスシーンで注目すべき製品といえる。

 なお、PC選びにおいてはスペックが非常に気になるところだが、Ultrabookの要件をクリアした製品ならばそれほど大きなスペック差はないと考えて構わないだろう。

 また価格については、一般的なノートPCよりはスペックや仕様の面から高額になりがちだ。ただ、業務や役職によっては、スタイリッシュな薄型ノートPCを持つというステータス的な意味合いでUltrabookを選択するメリットがあるのもまた確かな一面だ。

ビジネスに欠かせない拡張性を確認

 Ultrabook製品の中には、薄さや軽さを追求するために、有線LANコネクタやVGA出力ポートのような、ノートPCにおいては一般的な仕様のコネクタやポートを廃していることも少なくない。コネクタが搭載されていなくても、専用の「ドングル」を使用することで接続が可能になることがほとんどだが、そのためにドングルを複数持ち歩く必要があることも想定される。

 例えば、プロジェクタでプレゼンすることが多いユーザーにとっては、今もVGA入力のプロジェクターが現役であることを考えると、VGA出力が本体に搭載されていないことが1つのデメリットになってしまう。

 逆に、VGAポートを利用することがほとんどなく、HDMIポートやMini DisplayPortのみを使って大型テレビに出力することで事足りるというユーザーであればレガシーなVGAポートは最初から不要と判断することもできる。

 また、社内のPC管理では、本体内の有線LANアダプターのMACアドレスによって管理しているというケースが少なくなく、有線LANアダプターが内蔵されていないことで導入対象から外れる可能性もある。

 こういったレガシーポートの切り捨てはUltrabookにおいてはなかなか難しい問題ではあるが、パナソニック「Let's note RZ4」のようにUltrabookでありながら有線LANやVGAポートのようなポートをあえてそのまま残している製品もある。全く拡張しなくてもビジネスにおける即戦力になるという製品なので、製品選びの際は比較しておきたい。

VGAポートが廃されたコネクタ部イーサネットアダプター 図10 VGAポートが廃されたコネクタ部、図11 イーサネットアダプター
ビジネス用途に欠かせないポートをそのまま残す製品 図12 ビジネス用途に欠かせないポートをそのまま残す製品

デスクで豹変、UltrabookがデスクトップPC並みに

OneLinkドック 図13 OneLinkドック

 コネクタ、ポート類の少ないUltrabook製品も少なくないが、その弱点を補うのが「ドック」や「ポートリプリケーター」といった拡張機器だ。デスクに置いておき、オフィスに戻って作業するときにUltrabookをそれらに接続する。

 外出先では不要でも社内では必須である有線LANコネクタや、マウスなどを接続するUSBハブ、マルチディスプレイ環境などを一気に拡張できる。「出先では極力身軽に、社内ではデスクトップPC並みの使い勝手の良さを」と使い分けることができるのがドック、ポートリプリケーターの大きな利点だ。

バッテリーは駆動時間よりも「交換可能」が重要

 Ultrabookのスペックの中でも、重要視されるのはやはりバッテリー駆動時間だ。どの製品もバッテリー駆動時間は10時間以上確保し、それ自身は十分だといえる。しかし、やはり不意にバッテリー切れに陥ることもある。それでビジネスが止まってしまっては元も子もないというものだ。

 また、数年利用することでバッテリーの経年劣化も起こる。Ultrabookにおいては、バッテリー駆動時間が長いのはある意味で当然のことであり、それよりもバッテリーを交換できるということが大きなポイントとなる。

 最近のUltrabook製品では、交換可能なメインバッテリー以外に本体内部にサブバッテリーを内蔵することで、バッテリーを交換できるまでの緊急スリープに対応していたり、電源を入れたままバッテリー交換が可能だったりする製品も多い。

Ultrabookの堅牢性

 持ち運びして使うことが想定されているだけあり、Ultrabookにはかなりの堅牢性が要求される。そのため、激しく厳しい品質試験が実施されているのがUltrabook製品の常識である。

 レノボはUltrabookを含むThinkPad製品全般が米国国防総省軍事規格であるMIL-SPEC 810G規格をクリアしている上、さらに「拷問テスト」と呼ばれる過酷な品質テストを行っている。パナソニックもまた、Let's noteシリーズに独特の頑丈設計を採用している上に、落下試験をはじめとするさまざまな品質テストを施している。

 これらの一連の堅牢性は、「マシンそのものが壊れるのを防ぐ」ということよりも「内部まで破壊され、大事なデータを失わない」ということにつながっている。こういった信頼性こそがまた、Ultrabookを選択する大きなメリットの1つだろう。

「拷問テスト」の一例「耐久テスト」の一例 図14 「拷問テスト」の一例、図15 「耐久テスト」の一例

徐々に浸透する「LTE内蔵」

 Ultrabookを外出先でキッチリ活用するにはネット接続が必須だ。公衆無線LANではセキュリティが不安だということで多くの場合は「モバイルルーター」や「データ通信アダプター」のようなデータ通信機器を持ち歩くことが常だった。

 しかし、あらかじめUltrabook本体にLTE対応の通信機能(SIMスロット)が搭載された製品が登場していて人気を博しているという。直販サイトであるパナソニックストアで販売しているLet’s note CF-RZ4には「Wonderlink LTE A」対応モデルが用意されていて、直販サイトでの販売数における半数近くを占める。

 Wonderlinkは、パナソニックが提供するMVNOによる通信サービスだ。Let’s note専用サービスとして月額889円から利用できるとあって、ユーザーの人気を博しているようだ。この背景には、スマホやタブレットなど「LTE回線に接続して、いつでもどこでも通信できるデバイス」が当たり前になっているという実情があるようだ。Ultrabookもそれ単体で通信できるのが当然、という時代が間もなく来るかもしれない。

「Wonderlink LTE A」のサービス概要 表1 「Wonderlink LTE A」のサービス概要
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