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最新LANスイッチ事情、枯れた技術と思うなかれIT導入完全ガイド(3/4 ページ)

» 2015年03月30日 10時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

進むギガビット、PoEニーズの拡大

 最近のLANスイッチは、1000BASE-Tをはじめギガビット対応のポートを搭載した製品が一般的となり、一昔前に比べて高速化が著しい。フロアスイッチなどは10Gや40Gポートを搭載したものも出回っており、従来のメタルケーブルから光ファイバーを利用したネットワーク配線も少しずつではあるが増えてきた。

トランシーバと光ファイバーのセット 図4 トランシーバと光ファイバーのセット(出典:日立金属)

 ただし、光ファイバーを利用する場合は、トランシーバとなるSFP(1G対応)だけでも相当の値段がかかる。安価なトランシーバであっても4万円程度は必要になり、10G対応のSFP+であれば15万円、両端合わせて30万円となる。もちろん光ファイバーそのもののコストも必要になるため、インフラコストは膨大になる。

 最近では、トランシーバと光ファイバーをセットにして手頃な価格帯で普及を目指す製品も登場した。ある意味光ファイバーの普及を促すための戦略的な商品といえる。

 また、最近のLANスイッチで顕著なのはPoE搭載のLANスイッチに対するニーズが増えている点だ。LANケーブル越しに給電できるPoEスイッチは、無線LANのアクセスポイントやネットワークカメラ、IP電話機などの給電によく利用され、これらが普及することでPoEスイッチの需要も高まる。

 他にも、無線LANコントローラーとLANスイッチを融合させることで有線、無線LANを混在させることが可能な製品を提供しているベンダーもある。アクセスポイントをコントロールするためにわざわざ個別の無線LANコントローラーを導入せずとも、LANスイッチのOSで無線LANをコントロールするモジュールを動かすことが可能な製品だ。ワークスタイルの変革にあわせて無線LANの導入が進む企業では、有線、無線の一体管理についても検討しておきたいところだ。

新たな時代の「ホワイトボックススイッチ」「ベアメタルスイッチ」

 もともとLANスイッチは設計するベンダーと製造するベンダーが分かれるケースが一般的で、設計したベンダーの名前と品質で製品が供給されている。これに対して、製造ベンダーオリジナルのノンブランドスイッチとして提供されるのが「ホワイトボックススイッチ」と呼ばれるものだ。品質については特に問題はないが、ブランド化されていないことで安価に入手できる。

 さらに、ハードウェア筐体はホワイトボックスで提供されるものを使い、Linuxなどの汎用(はんよう)的なOSでスイッチを動かす製品も登場した。ハードウェアとソフトウェアが分離した形で提供されるのが「ベアメタルスイッチ」だ。

 ベアメタルスイッチは、データセンターなど大量にスイッチが必要でアプリケーションでスイッチをコントロールするSDNなどを実現する際に重宝する代物だ。ただし、まだ市場自体はこれからとなっており、使い方については試行錯誤が続いている状況だ。

 なお、コスト的には従来のLANスイッチに比べて圧倒的に安く、ギガビットのポート単価が4万円ほどする現状のLANスイッチに比べて、およそ2万円以下でギガビットポートが利用できるというメリットがある。今後の展開に期待したい。

Quanta Mesh 図5 ベアメタルスイッチ「Quanta Mesh」外観(出典:ネットワールド)

話題のSDNに対するアプローチ

 最近話題となっているのが、ソフトウェアの操作だけで動的にネットワーク機器の設定や変更が可能な考え方である「SDN(Software-Defined Network)」だろう。スイッチで行うVLANや帯域制御だけでなく、ファイアウォールやロードバランサなどさまざまなネットワーク機器を有機的に動作させるためには、各機器に対する設定が重要になる。

 これをソフトウェアで実行することが可能になるのがSDNという考え方だ。その中心にあるのが「OpenFlow」と呼ばれるネットワーク標準で、スイッチの動作やその制御のためのプロトコルが定義されている。

 しかし、OpenFlowを解釈するチップセットがLANスイッチに必要になるため、これからSDNに取り組むのであれば全てのネットワーク機器を入れ替え、新たなアーキテクチャを学んでいく必要が出てきてしまう。

APIC-EM 図6 ソフトウェア管理を実現する「APIC-EM」(出典:シスコシステムズ)

 データセンターのようにネットワーク機器が多く展開され、頻繁に設定変更が行われるような環境であればいざ知らず、すぐに企業のネットワークにSDNが展開されるかどうかは不透明だ。ただし、あらゆるネットワーク機器をソフトウェアで制御するという考え方は魅力的だ。

 そこで、LANスイッチベンダーが独自に自社のスイッチを統合的にソフトウェアで管理できるような仕組みを提供するといった動きも出てきている。このあたりの動向にも注目してほしい。

コラム:LANスイッチに電源ボタンがない理由

 一般的な家電の場合、必ずと言っていいほど電源スイッチが存在する。しかし、LANスイッチには電源スイッチが存在しない。これは、基本的に24時間365日稼働させる機器だけに、あえて電源スイッチを付ける必然性がないためだ。

 電源スイッチがもし存在していると、フロアを掃除する清掃員が「電気を付けっぱなしにしていてもったいない」と気を利かせて、思わず消してしまうなんてことも十分考えられる。ちなみに、欧州では環境に配慮して電源スイッチが必須の場合もある。

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