前述した通り、打刻手段にはさまざまな方法があるが、最近ではBluetooth Low Energy(BLE)を使ってスマートフォンの位置情報を特定する「Beacon」を利用して打刻を行うことができるサービスも登場している。
Beaconは、お店の中の動態管理や特定の位置に近づくと商品案内やクーポン情報の配信などが可能になるO2O(Online to Offline)マーケティングの効果を高めるツールとして期待されている。これを勤怠管理の打刻に応用しようという動きだ。このBeacon規格の中でも注目されているのが、AppleがiOS 7に搭載したことから注目を集めた技術「iBeacon」だろう。
基本的な仕組みは、エントランスやオフィス内に設置される、信号を発する発信側のBeacon端末と、発せられた信号を受信するアプリを組み合わせることで、デバイスを持った本人がBeacon端末に近づくと自動的に打刻が行われるようになる。
ただし打刻にのみ使うには初期投資が大きいため、実際にはフリーアドレスを採用したオフィス内や広いエリア内で活動している従業員の位置確認や実際にどう動いているのかの動態管理などへの用途が期待されている。実際には数m単位で情報が取得できるようになるため、Wi-Fiに比べて誰がどこにいるのかの位置情報精度が飛躍的に向上する。
なお、現在はiBeaconが注目されているが、仕様的にシンプルに見えてもiBeaconの特性やGeolocationManagerをはじめとした各種ライブラリ、iOSの特性などが複雑に絡み合っており、実際に使えるレベルに持っていくには高度な技術力が必要になる。モバイルデバイスのアプリと連携しながら動作させるため、電源管理にも細心の注意が必要だ。
iBeaconによる勤怠管理を提供しているベンダーでは、実際にBeacon端末をオフィス内に設置し、スマートフォン内のアプリと連動させることでオフィス内の動態状況を測定してみたという。そこでは、社内でハブになっている人材が誰なのかといった相関図のようなものが見えるようになるなど、これまで気付かなかった動きがBeaconを利用することで把握できたという。
また、試しに喫煙所にBeacon端末をおいてみると、誰がどれくらい休憩にいっているのかが一目瞭然となり、慣れてくるとスマートフォンを机の上に置いて喫煙室に持ってこない人が続出するといった動きも。Beaconをオフィスのあらゆる場所においておけば、「トイレで一人飯」なんて状況だって管理者に把握されてしまう可能性はある。
特に精神的に追い込まれるとトイレやリラックスルームなど人のいないところにいる時間が増える傾向にあり、そういった視点でBeaconを活用したいという健康管理のソリューションを提供している他のベンダーからの問い合わせもあるようだ。ただし、現場からの反発は必至と考えられるため、導入に当たっては慎重に考慮したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。