現在VDIからDaaSへと、デスクトップ環境もサービスとして利用する流れが徐々に広がりつつあるが、ここでユーザー企業がDaaSを選択するメリットを整理しておこう。
通常VDIをオンプレミスで導入する際には、(1)(アセスメントや要件定義などの)上流工程→(2)基本設計 →(3)詳細設計 →(4)構築・単体テスト(UT)→(5)結合テスト(IT) →(6)システムテスト(ST)というステップでプロジェクトが進むことになる。
まずは導入目的を明確にした上で現在のデスクトップ環境の利用状況を明らかにし、実際の環境構築へと進むのだが、このうち(1)のプロセスはDaaSを利用する際にも必須だ。やはり現状の見える化をし、必要に応じて外部のコンサルティング会社にも入ってもらい、既存環境をどう変えていくのかを考えなければならない。このフェーズだけでも2〜3カ月はかかるのが一般的だ(図5)。
しかしDaaSの場合、上流工程が固まりさえすれば、(2)〜(5)の工程はほぼ不要で、この分の工数を圧縮することができ、ユーザー企業側の方針が固まったら、すぐに試用に入ることが可能だ。規模にもよるが、ここで約2〜3カ月の時間短縮を図ることができる。急速なビジネス環境の変化に追随していくためにも、これはユーザー企業にとって大きなメリットだ。また仮想デスクトップ環境の展開も非常に容易で、3ステップでユーザーの利用を開始できるサービスもある(図6)。
VDIを導入する際には、サーバやストレージ、仮想ソフトウェアなどのIT資産を調達し、さらに導入後は必要に応じてハードウェアの増設やソフトウェアのアップデートなどを行わなければならない。当然初期コストが発生し、運用コストやセキュリティ対策を含めた運用管理も必要だ。
これに対してDaaSでは、環境変化への対応を全てサービス側で吸収してくれる。2014年4月にはWindows XPのサポートが終了したが、こうした非常に大きなインパクトについてもIT部門で対策を講じる必要がなく、またUpdate時にエンドユーザーの手を煩わせる必要もなく、セキュリティを確保しながらデスクトップ環境を使い続けることができる。発生する金額は月額の利用料のみだ。
ただしコストについては、利用者数や利用台数などと、利用期間の掛け算によって決まってくるので、場合によってはVDIの方が安くなる可能性もある。この点については、自社の成長やユーザー数の拡大も見極めていく必要があるだろう。
また余談になるが、DaaSを利用すれば、Illustratorを使ってデザインワークをしているデザイナーのMac上で、仮想デスクトップを開いてWindowsの業務アプリケーションを動かすことも可能になる。業務アプリはWindows向けのものが多く、以前はデザイナーにMacとWindowsマシンの2台を配布する必要があったが、DaaSを利用すればMac1台で済む。こうした観点からのコスト削減効果も期待できる。
一口にデスクトップ環境といっても、エンドユーザーの職種によって必要となるスペックやアプリケーションは異なる。例えば製造業で3DCADを使う設計者は、これまでワークステーションを利用してきたし、またデザイナーならIllustratorやPhotoshopなどがストレスなく操作できなければならない。
その際にポイントとなるのは、「CPUやメモリ、HDDをどれだけ使うか」で、こうしたユーザー企業側の実情に対応するために、DaaSではユーザータイプに応じた複数のサービスメニューも用意されている。また、最近はグラフィックや3DCADを扱うパワーユーザー向けにGPU仮想化なども進んできている。今後ますますDaaSで利用できるメニューは豊富になり、利用の幅も拡がってくるだろう(図7)。
約2〜3年前まで、VDIやDaaSの利用を検討する企業の目的として多かったのは、OSのサポート切れやクライアント端末のリース切れなどへの対応だが、最近ではセキュリティの確保に加えて、ワークスタイルの変革を実現するソリューションとして、DaaSへのニーズが非常に高まってきているという。今後景気回復の局面で業務量は増えても人が増えることはなく、そこで働き方を変えて、より一層の業務効率化と生産性の向上を図る必要性があるからだ。
ただし注意が必要なのは、DaaSの導入だけでワークスタイルの変革が実現できるわけでないという点だ。例えば自宅作業を認める社内ルールの整備やオフィス環境のフリーアドレス化、あるいはBYODの導入など、さまざまな取り組みを併せてはじめて、ワークスタイルの変革は実現可能となる。
DaaSはあくまで1つのソリューションにすぎない。自社の大きな課題を解決するためにDaaSをどう使いこなしてくのかという視点が必要だ。
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