アイマスクを着用し、専用サッカーボールが発する音とプレイヤーの声によって行うのがブラインドサッカー。この競技は1980年代から障害者スポーツとして普及したが、超人スポーツ協会では遠隔から動作を制御できるロボティックボールを用いて行う「超ブラインドサッカー」を提案する。障害者もそうでない人も同様に楽しめることを目標にする。
Trajectory chAnging, Motion bAllの略で、圧縮空気の噴射で動的に軌道を変化させられるボールを使い、ボールの機能によってプレイヤーの運動能力を補助して、運動能力に差があっても白熱した競技が行えるようにする(参考、電気通信大学大学院情報システム学研究科 野嶋研究室)。
以上、「遊びの発明」のワクワク感が少しは伝わっただろうか。これら以外にも大学の研究室を中心にさまざまな取り組みが行われている。技術に合ったより効果的なトレーニング法の開発(トレーニングの拡張)、プレイヤー層の拡張、観戦法の拡張なども超人スポーツ協会のスコープの範囲内だ。上記の各リンクには、本文で紹介した以外の関連研究も紹介されているので、ぜひ詳細を見てほしい。他にも東京工業大学大学院情報理工学研究科 小池英樹研究室などには事例も多く、参考になるだろう。
稲見教授は、「近代五種」(射撃、フェンシング、水泳、馬術、ランニング)になぞらえて、「東京五輪の際には、最新技術を応用した『現代五種』競技を提案したい」という。それが何になるかはまだ分からない。東京五輪開催までの間には、さらにたくさんのアイデアが集まり、やがて取捨選択されながら、技術やルールが磨かれていくことになるだろう。期待を込めて注目していきたい。
ウェアラブルデバイスやロボット技術、各種の運動や姿勢補助器具などの人間の能力を拡張する技術を追求する学問領域。人間本来の能力の拡張を図るロボットスーツや視覚を拡張するウェアラブルディスプレイ、脳波によってコンピュータを操作するBMI技術などが研究され、一部実用化している。また身体のハンディキャップを克服するための補助器具やデジタルデバイス、インテリジェントな車椅子、人工網膜デバイス、その他も研究開発、実用化が進む。
「超人スポーツ」との関連は?
人間拡張工学をベースにして、能力拡張された状態の人間同士が競い合うスポーツを創造しようというのが超人スポーツ協会の取り組み。能力拡張の最先端を追求することよりも、誰でもが楽しめるスポーツを創ることを基礎に据える。ただしその過程で生まれるアイデアが人間拡張工学にフィードバックされ、より高度な技術開発が進むことも期待される。
VR(Virtual Reality、バーチャルリアリティ)が実際にはそこにないものを現実感をもって体感できるようにする技術なのに対し、ARは現実の環境にそこにないものを付加するような技術といえる。人間の動きや周囲の環境の変化に即応し、視覚や聴覚、時には触覚までを刺激して、現実をベースにしながらそれを超えた体験を作り出す。
「超人スポーツ」との関連は?
例えば体育館内で行う球技なら、頭部装着型ディスプレイを通して現実のボールや相手プレイヤーの現実の動きを追いながら、その周りの環境がまるで大スタジアムであるかのように映像を追加することがAR技術で可能になりそうだ。
また、実際にはあり得ない「波動拳」の光や音、爆発や破壊などの映像を現実環境に組み合わせることで、リアルな競技にコンピュータゲームのような演出を加えることもできる。超人スポーツには、競技者も観戦者も、ともに現実の競技を拡張して楽しめるようにする方向でARが採り入れられる。
デジタル技術を応用するスポーツの総称。これまでは競技用ボールやプレイヤーにセンサーなどのデバイスを仕込み、動きを遠隔から追跡してCGと組み合わせ、ダイナミックな視覚効果をプラスする手法が主に研究されてきた。現在では本文で紹介しているように多様な新しいアイデアが生まれている。
「超人スポーツ」との関連は?
超人スポーツはデジタルスポーツが用いるデジタル技術、コンピュータ制御、映像処理、モーションセンシングなどを要素として利用しながら、ルールも含めてプレイヤーも観客側も楽しめるスポーツを創るのが目標だ。身体能力や障害などによる差がリアルなスポーツではどうしても問題になるが、その差をデジタル技術やロボティックスなどの技術で埋めて、実力が拮抗した状態で白熱した競り合いが行えるようにすることを目指す。
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