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AI導入「必要」86%、実際の導入率は18%……RPAと混同する声も

「AI」ブームの盛り上がりは衰えを知らず、2019年も技術導入から開発、人材育成など多方面で話題が盛り上がった。調査では、現場のAI利用もさらに現実味を帯びていることが分かった一方で、AIに対する誤った認識も浮かび上がった。

» 2020年01月24日 08時00分 公開
[野依史乃キーマンズネット]

 キーマンズネット編集部では2020年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「クラウド活用」「情報共有」「DX人材」「AI導入」「RPA」「働き方改革」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2019年11月22日〜12月20日、有効回答数1329件)。企業における2020年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。

 第5回のテーマは「AI導入」だ。

調査サマリー

  • 86%がAI「必要」と回答、しかし実際に「活用している」のは18%
  • 今後導入が必要な分野は情シスや販促・マーケで45%超
  • 実導入は製造・生産中心に業種問わず進む、RPAやOCRなどをAI化したい声
  • AI人材不足やデータ整備不足などの課題も浮き彫りに

86%がAI「必要」、情報システム分野でのAI活用に注目

 業種業界を問わず活用が広がる「人工知能(AI)」。2019年は第3次AIブームがさらに盛り上がり、製品やソリューションも多く登場。人材育成といったトピックでも話題を呼び、AIは地に足のついたテーマとなりつつある。2020年、企業のAI活用はどこまで進展するだろうか。

 調査ではまず、AIに関する調査では企業の業務およびシステムにAIは必要かという質問をした。全体の回答(1329件)のうち「必要だと思う」が85.9%、「必要だと思わない」が14.1%となった。「必要だと思わない」と回答した理由をフリーコメントで問うと、「使えるデータがない」「利用コストや維持管理を考えると費用対効果が低い」などの声が寄せられた。さらに、「現状のAIはパターンマッチングにすぎない」「(AIの)定義が曖昧で具体性に欠ける」「AIとは言葉だけで具体的に何ができるか明らかではない」「AIは単なる関数計算で、必要以上に期待すべきではない」といった批判的な意見もあり、イメージが先行し、期待した効果を得にくかった第2次ブームまでのAIイメージに基づく不信感をあらわにする声もあった。

図1 質問「企業の業務やシステムにAIは必要だと思いますか」

 次に、企業の業務およびシステムにAIが「必要だと思う」とした回答者(1,142件)を対象に、どのような分野・業務においてAIが必要だと感じているかを伺ったところ、「情報システム」が47%と最も高く、次いで「販売促進・マーケティング」(46%)「製造・生産」(42%)「営業・販売」(41%)が続いた。昨今、インフラ管理自動化やインシデント対策自動化などAI搭載をうたうIT製品・ソリューションやCRMを導入したデジタルマーケティング成功事例などが続々と登場していることも影響しているだろう。フリーコメントでは「ヒューマンエラーを未然に防いでくれるのであれば、どの分野でも良い」「分野を超えてデータ解析に活用したい」などの意見もあった。

図2 質問「どのような分野、業務においてAIが必要だと感じますか」

自動化のトレンドはRPAからAIにシフトできるか

 必要性は十分に認識されその活用も具体的になっている中、実際に現場でのAI活用はどれほど進んでいるのだろうか。勤務先でのAI活用について質問したところ、全体の回答のうち、「活用していない」が約58%と最も高い結果に。次に「検討中」が約24%。「活用している」は約18%にとどまる結果となった。

図3 質問「勤務先ではすでにAIを活用していますか」

 では、実際にAI活用が進んでいるのはどういった業務なのだろうか。

 活用もしくは検討している分野・業務についてフリーコメントで尋ねたところ、事務処理や資料作成などパターン化が可能な定型業務を指す回答が多く寄せられた。「デスクトップ上での転記作業を自動化している」「RPAを導入して細かい経理業務を自動処理している」などAIとRPAと混同している回答も散見された。

 一方で、「RPA化した業務の内、判断を伴う業務をAIでさらに効率化したい」など、機械学習とRPAやOCRを連携させ、精度・汎用(はんよう)性を向上させたいという意見もあった。昨今注目を集めるAIは視覚や聴覚など、従来自動化しにくいとされてきた「感覚器官を使ったり複合的な要素を認識して判断を伴う処理」を自動化できるものを指すことが多い。RPAなどの定型的な操作を人間が定義して処理させる自動化は現代的なAIとは別物として考えた上で、AIとRPAの特性を踏まえた連携を進めていく必要があるだろう。

 また、「品質を維持するため材料などの測定データをフィードバックし活用」「製品検査において画像認識を使い良品判定、検査工数を削減できないか検討」など製造・生産分野に関するコメントも目立った。製造・生産分野だけでなく、情報システム分野にもセキュリティやITオペレーションシステムでの活用など多数の回答が集まった。その他に目立った複数回答はカスタマーサポート、販売予測システムなど。中には「活用内容の詳細は現場によって違うが、相談できる専門部門がある」「部門を超えて活用し、詳細はIT部門が把握している」といった回答もあり、全社的な運用ガバナンスを整えている企業もあるようだ。

AI活用人材はまだまだ不足

 ただし、企業でのAI活用を現実とするには、知見を持った人材の登用、育成も必要不可欠だ。先述のAIは今後「必要だと思わない」とした回答理由には「扱える人材がいない」「責任問題などが不明で、AIを適切に管理できる人材整備もできていない」というものもあった。そこで、回答者の勤務先にAIの知見を持った人材はいるか尋ねたところ、「いない」が56.3%と高い結果に。次いで「いる」が約33.2%、「現在はいないが、今後採用予定」が5.7%「現在はおらず、今後も必要ない」が4.8%と続き、今のところは人材がいないという回答がおよそ66.8%を占める結果になった。

図4 質問「勤務先にAIの知見を持った人はいますか」

 実際のAI活用まで進んでいる企業はまだ多くない結果となったが、必要性は広く認識され、活用はより具体化している。今後企業でのAI導入が進めば、データガバナンスや人材確保といった環境整備も対応必須となる。また、RPAなど既存の自動化ソリューションと同一視してしまいAIに関する知見や導入機会を逃さないように注意すべきだろう。

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