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SSDかサーバサイドフラッシュか? サーバ向けフラッシュストレージを選ぶIT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2015年10月19日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

フラッシュストレージの特徴は?

 フラッシュストレージが注目される理由はHDDに次ぐ大容量を実現しながら、HDDよりも読み書きともに速いところだ。高速性は主にランダムリードとランダムライトのIOPS(秒あたりの入出力回数)に表れる。下表に国産最新ハイエンド及びミッドレンジSSD製品の主な仕様の一例を示す。

SSDの性能指標の例 表1 SSDの性能指標の例。東芝1.6TB SSD(MLC)の場合の性能指標。※MTTF(Mean Time To Failure):平均故障時間、

DWPD(Drive Write Per Day):1日にドライブ全容量の書き換えが可能な回数。耐久性能を示す

2.0TB PCIe SSDの場合の性能指標 表2 2.0TB PCIe SSDの場合の性能指標。インテルDC P3700シリーズの場合

 特に注目したいのがランダムアクセス性能で、HDDの場合はあまり公表されることがないが、7200rpmモデルでランダムリードが400 IOPS、15000rpm モデルで11200 IOPS を超える程度、ランダムライトでも大体同程度かそれ以下(4KB)といったベンチマーク値が目安になるかもしれない。

 これと比較すると、SSDはリードで数百倍、ライトでも倍以上の性能を持つというわけだ。PCIeで接続するボードタイプのフラッシュストレージは更に高速で、その典型例はデータセンター向けハイエンドモデル(表2)の仕様に見ることができる。HDD はもちろん、一般的なSSDをはるかにしのぐ高速性を持っている。

 なお、シーケンシャルアクセスの場合はHDDとフラッシュとの間にそう極端な差はない。またフラッシュの書き換え回数に限界があることが不安視されることがあるが、上掲の表にあるように、ベンダーが5年などの長期にわたる保証をしている場合があり、その期間中ならDWPDの数値に示されるような回数、全容量を毎日書き換えても性能を著しく落とすことはない。

 しかもそんな極端な使い方は一般のビジネスでは考えにくい。つまりHDDの寿命が3年といわれるのに比べれば、SSDはむしろ長寿命だといえよう。また、故障率も一般的にHDDよりも低い。PCIe接続のボードタイプの製品はSSDよりもやや故障率が高い傾向にはあるようだが、それほど際立っているわけではない。

 要するに、HDDの信頼性や寿命に匹敵または上回る特徴を持ちながらI/O性能が段違いに良いということになる。しかも、回転やアーム移動にかかわるメカニカルな部分がなく振動や衝撃に強く、周囲の環境の影響を受けにくい点と省電力性、さらに静音性も特徴だ。

 その半面、HDDよりも単体での容量が小さく、容量当たり単価もSATA HDDに比較するとかなり高価なのが弱点だ。

 もともとこれらの特徴はよく知られており、大容量よりも高速処理を重要視するシステム向けに利用されることが多かったのだが、最近ではSSDの技術進歩により容量当たり単価はやがてSAS HDDよりも低下すると見込めるようになってきた。

 また利用の仕方によってはシステムリソースが節約可能になるため、TCOが低くなる可能性もある。これまで容量単価の問題でフラッシュストレージ導入に二の足を踏んでいた企業、あるいは特別に高速性を追求していない企業でも、一般的なHDDに代わる選択肢として十分検討できる状況になっている。

 なおストレージのI/Oパフォーマンスは、単位時間当たりのデータ転送量とリクエスト数(IOPS)、リクエスト当たりの平均処理時間の3つが主な指標になる。それらを決める要素には、ストレージメディア以外に、OSとアプリケーションに依存するデータのブロックサイズ、ストレージコントローラーの性能がある。

 特にコントローラー性能(主にRAIDを担当)により、スループット(ブロックサイズ×IOPS)や寿命が左右されるので、導入時には単体デバイスの性能指標数値だけでなく、OSやアプリケーションの利用状態を調べて高速化が可能かどうか、また高可用性のためにRAIDを利用する場合には、そのコントローラー性能は十分かどうかも含めて検討してみた方が良い。サーバベンダーでは各種のフラッシュストレージの対応検証をしているはずなので、質問してみると良いだろう。

 ちなみに、シーケンシャルリード100%のリストア操作や映像ストリーミング、シーケンシャルライト100%のバックアップ操作などを除けば、大抵の業務はランダムリード/ライトの組み合わせであり、大体リードがやや多い程度の利用割合になる。業務で使うDB操作は基本ランダムアクセスのみ、そのうちランダムリードが約7割というケースが典型的ともいわれている。

 SSDは、システムバックアップなどの運用管理系業務ではHDD同等、それ以外の多くの業務システムではHDDをしのぐ性能をもたらすといえるだろう。

コラム:HDDからSSDへの移行の背景は何?

 SSDが求められる背景は主に3つある。1つはサーバCPUのマルチコア化が進むとともにDRAMが100GからTBレベルにまで大容量化し、処理性能が大幅に向上している一方でHDDの処理性能向上は遅々として進まず、ストレージがシステム性能アップのボトルネック化していることだ。

 もう1つは仮想化の普及により、1台の物理サーバに複数サーバが稼働するようになり、ストレージへのI/O(入出力)数がかつてとは比較にならないほど増加していることである。最後の1つは技術進歩により容量当たり価格が低下しており、今後もさらなる低下が見込めることだ。

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