海外に限らず、特に専用端末を用いて遠隔会議を行う際には、ファイアウォールやNATを越えていくための仕掛けが必要になるケースが一般的だ。実際にはH.323システムのファイアウォール、NAT越えに対応可能な「H.460.18/19」と呼ばれる規格があり、それに対応したトラバーサルサーバなどを立てておけば問題なく遠隔会議を行うことができるようになる。
日本のインテグレーターはこの仕組みについての十分な理解があり、必要なポートの調整やNATの設定などに手を加えることでトラブルを解消することができるような知見を持っているケースが多い。
しかし、海外の拠点側でサポートしてくれるインテグレーターにそのような知見があるのかどうかは流動的だ。一応つながってはいるものの、片方からしか画像が表示されない、音声しか通信できないといったトラブルはよくある話のようで、その際には現地のインテグレーターの能力が頼りになってくる。しっかりとしたインテグレーター選びは、日本よりも海外との接続時には重要な視点だ。
ちなみに、海外のエンジニアの中には「うちは悪くない」という前提から入る人もいるようで、状況を分析して問題箇所を特定するということが遅々として進まないケースもある。その場合は、こちらから通信の状況を分析し、何らかのエビデンスを出すことで、ようやく動いてもらえるということもある。対応する人の気質によるが、そういった事態も起こり得ると想定しておこう。
海外で遠隔会議の基盤を構築する際には、コマーシャルインボイスなど輸出時の書類提出を含めた煩雑な手続きや現地でのサポートの面を考慮し、現地で機器調達を行うのが一般的だ。それは専用端末はもちろんのこと、ソフトウェアのライセンスを契約するWeb会議であっても同様だ。
実際には、通信のencryption(暗号化)設定をファームウェアレベルで変更する必要がある中国を除いて、海外仕様と国内仕様で仕組みが異なるということはない。
ただし、Web会議のライセンスはどこで購入しても変わらないような気もするが、日本国内で発行されたライセンスキーを使うと、海外からの接続時でも日本のデータセンタに接続しにいく仕組みになっているサービスもあり、その扱いについてはサービス提供事業者にきちんと確認しておく必要がある。
特にグローバルに展開しているベンダーでは、日本でライセンスを一括契約したとしても、現地に展開しているベンダーの拠点および契約しているインテグレーターのサポートを受られるグローバル調達の仕組みを提供するところもある。
一例を挙げると、ポリコムジャパンでは、見積もりから発注、請求といった一切の購入処理が本社一括で管理でき、海外拠点については現地の拠点から直接納入、サポートを行う。また、現地のインテグレーターとの橋渡しを行うサービスを提供するところもあり、現場でのトラブルシュートなどさまざまなサポートが受けられる。このあたりは便利に活用したいところだ。
機器の購入に関しては、現地で支払うべきタックス(税金)などの対応についても必要になるため、自分たちで全て調べるのは骨の折れる作業になる。現地の代理店で全て建て替えが可能なのか、ユーザー自身が必要な書類を記載して申請しないといけないのか、税率の考え方はどうなっているのかなど、機器購入に関しては手続き上の手間が発生することが多い。事前にベンダーに相談しておきたいところだ。
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