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美麗画質を可能にする「Ultra HD Blu-ray」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)

» 2016年01月06日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

色空間は約2倍以上に拡大

 画質向上のもう1つ重要な要素が「色空間」の拡大だ。BT.709の制約を乗り越えるために、ITU-Rで検討し、議論の結実として登場したのが4K/8K映像の標準規格である「BT.2020」(2012年8月)だ。

 図3右では、国際照明委員会(CIE)が定めている標準表色系(色空間)を示しており、赤い三角形で示されている色の範囲がBT.709規格によって表現可能な範囲、青色の三角形がBT.2020規格で表現できる範囲になっている。約2倍以上の領域がカバーされ、CIE色空間の75.8%がカバーされている。自然な色の再現には、この色空間の広がりが寄与している。

Ultra HD Blu-ray 図3 HDR映像の特長(資料提供:パナソニック)

 なお、図3左に見るように、最高輝度も100nitから1万nitに拡大されている。これらに加えて、当然ながら4Kの高解像度(3840×2160画素)に対応しているのがUltra HD Blu-ray技術の特徴だ。

 映像データの圧縮には従来の「MPEG-4 AVC」(H.264)に代えて、「HEVC」(H.265)が採用されており、データ圧縮効率は40〜50%以上向上しているということだ。MPEG-4 AVCの最大ビットレートは40Mbpsだが、HEVCでは最大100Mbpsとなる。これを利用することで、4Kでも秒間60フレーム(4K/60p、従来は2K/30pが標準的)の映像の撮影と再生が可能になっている。

 またこれまで色差信号(Y、Cb、Cr)を各8ビット(256段階)で表現していたが、HEVCでは各10ビット(1024段階)に拡張され、より豊かな色彩表現が可能になった。HEVC用のエンコーダも開発されており、同じ装置でUltra HD Blu-rayディスクの作成とともにインターネット動画の作成も可能になっている。

Ultra HD Blu-rayディスクのスペックは?

 4K、HDR、色再現性の3つのポイントがUltra HD Blu-ray技術の特徴だ。圧縮するとはいえ、当然従来のBlu-rayディスクよりも大容量でなければならない。そこで従来の記録層を1層増やし、3層にして約100GBの容量も書き込めるようにしたのがUltra HD Blu-rayディスクだ。従来の映像コンテンツ用の光ディスクの仕様と比較したのが図4になる。

Ultra HD Blu-ray 図4 Ultra HD Blu-rayディスクと従来のディスクとの違い(資料提供:パナソニック)

 ただし、Ultra HD Blu-ray機器は先端の4K HDR対応テレビだけに対応するのではなく、SDRの4Kテレビ、現在広く普及しているHDTVにも対応するのが前提なので、ユーザーのテレビの種類によって映像をダウンコンバージョンして再生できるようにする機能を持つことになる。Ultra HD Blu-rayディスクでも4K+HDR映像、HD+HDR映像、4K映像、HD映像の4種類の映像品質のディスクが出てくることになりそうだ(HEVCを利用しているところは共通)。

Ultra HD Blu-ray 図5 Ultra HD Blu-ray機器とテレビの関係(資料提供:パナソニック)

 コンテンツ作成を目指す人のために言い添えると、映像そのものは新しい仕様に準拠する必要があるもののグラフィックやメニュー等の素材は従来のBlu-rayディスクと同じものが使用できる。これまでBlu-rayディスクを制作してきた会社では、HEVCエンコーダを制作システムに追加するだけでよい。著作権保護技術(AACS、BD+等)の組み込みやディスク検証方法などにも違いが出てくるが、それはあまり大きな制作プロセス変更にはつながらないということだ。

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