メディア

美麗画質を可能にする「Ultra HD Blu-ray」とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)

» 2016年01月06日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

Ultra HD Blu-rayが自然な画質になる理由

 取材したパナソニックの映像技術専門家である小塚雅之氏(アライアンス戦略担当部長)によると、表現力の差を生んだのは主に「映像のダイナミックレンジ」なのだそうだ。ダイナミックレンジとは、識別可能な信号の最小値と最大値の比のことをいい、映像で言えば表現できる明暗の範囲のことだ。

人間の目に追い付いたHDR対応カメラ

 人間の目は非常に性能がよく、輝度で言えば0.01nit未満から10万nit以上までを認識できるという。周囲の明るさに合わせて虹彩で光の量を調整するので、一度に認識できるのは1万nitほどだ。そのダイナミックレンジは13.3 stops(明暗の差1万:1)ほどという(nitは輝度、stopsはダイナミックレンジの単位)。

 ひと世代前のカメラはダイナミックレンジが10Stops(明暗の差1000:1)程度であり、日中屋外、日中室内、夜間などといった撮影シチュエーションによって絞りを変えて対応していたのだが、目よりも狭いダイナミックレンジしかないため、目で見たそのままを記録し、再現することはできなかった。

 例えば日中の室内の風景に窓があり、外の風景が見えている場面であれば、室内の風景を鮮明に撮るか、窓の外の風景を優先するかを決めて絞りを設定しなければならない。撮影した映像は、外の景色がよく見えるように絞りを設定すれば室内が暗くなり、室内がよく見えるようにすれば窓の外が白く飛んでしまう。

 ところが現在の業務用4K/HDR(High Dinamic Range)カメラは撮像素子であるCMOSセンサーの大型化など技術進歩により、人間の目を超える14 stops(明暗の差1万6000:1)のダイナミックレンジを実現するようになった。これにより、カメラの能力としては絞り等を適切に調整することにより、0.01nit以下から10万nit超までの明るさに対応でき、同じ絞りでも従来よりもずっと広い輝度範囲をきれいに撮影できるようになっている。つまり人間の目で見えるものはほとんどそのまま記録できるように進歩しているわけだ。

新映像規格の登場でカメラの能力がそのままテレビに反映可能に

 進歩したカメラの映像をそのまま、映像品質に対応するテレビに映せば、カメラで撮影したものがまるで自分の目で見ているかのように感じられるはず。しかし今までは特に映像をテレビに送る伝送路に課題があった。

 1990年に策定された映像の国際標準規格「BT.709」(国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)による国際標準で、現行のBlu-rayディスクはこの映像規格をベースにしている)にのっとる必要があったからだ。

 BT.709ではダイナミックレンジは10 stops(明暗の差1000:1)、輝度は0.1〜100nitまでなので、それに合わせてカメラの映像品質をわざと落として伝送しなければならなかった。テレビのほうは多少ダイナミックレンジが広くなって(12 stopsなど)いるので、テレビの側で視聴環境に合わせて映像の輝度をうまく調整して映像を見やすくする工夫が多少はできるが、当然それにも限界がある。

 BT.709の制約を乗り越えるために、SMPTEやBDAで検討や議論を行った結果、登場したのがハイダイナミックレンジ映像の標準規格である「SMPTE ST 2084」(2014年8月)だ。この規格では、伝送路のダイナミックレンジが20 stops、明暗の差は10万:1、輝度は0.01〜1万nit)まで拡張された。

 これは上述したカメラの能力を上回る。テレビの表示能力が人間の目の能力と同等以上に拡張すれば、カメラで撮影した映像品質がそのままテレビ画面に映り、まるで画面を窓にしてカメラの被写体を直接のぞいているようなイメージになる。

 この規格の最高映像品質に近づくために改善された映像を、特にダイナミックレンジに着目していう時にHDR画像と呼ぶ。それに対して従来のBT.709仕様の画像はSDR(SはStandard)という。その違いを図2に示す。

Ultra HD Blu-ray 図2 HDR画像とSDR画像の比較(資料提供:パナソニック)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。