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美麗画質を可能にする「Ultra HD Blu-ray」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

» 2016年01月06日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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Ultra HD Blu-rayのこれから

 対応レコーダー(DMR-UBZ1)を発売したパナソニックでは、世界初の4K/HDR対応Ultra HD Blu-ray映画タイトル2作品を作り上げている。これはUltra HD Blu-rayディスクの映像作成からオーサリング、ディスク製造までの一連のプロセスが既に完成されていることを示すデモンストレーションでもある。

 そもそもがハリウッドに研究所を持ち、カメラ、映像データ処理技術、映像レコーダー/プレーヤー、さらにテレビと、映像コンテンツ作成に必要な技術をもつ同社の特徴を存分に生かして開発したのが同レコーダーとディスクだ。実際に現物を見てコンテンツを広く発信してほしいというのが同社の思いだ。2016年は韓国サムソンのプレーヤー参入が見込まれているが、日本でも映像関連技術を持つ企業は多い。やがて、さらに多数の企業が参入し、市場が活性化していくのが楽しみだ。

 コンテンツでは、米国の20世紀フォックスやソニーピクチャーズは2016年春からそれぞれ複数タイトルの対応映画を発売する予定となっており、独立系大手のLionsgateも関心を寄せているということなので、徐々に対応コンテンツが増えていくだろう。

 コンテンツがそろってくれば自然に一般の関心も高まると思われるが、今のところは対応機器(レコーダーとHDR対応テレビ)の価格が高いのが課題だ。UBZ1は従来のBlu-rayレコーダーとしても利用できるタイプだがメーカー予想価格は約40万円(実際はオープンプライス)、その映像品質を十分堪能できるテレビも高価なハイエンド機種ということになり、小塚氏自身が「UBZ1は車でいえばフェラーリクラス」と認める。今後はもっと求めやすいマニア層以外に向けた価格のモデルも提供したい意向だ。

 まだ一部の趣味人以外には手を出しにくいのが現状だが、この高い映像品質が知れわたれば確実にファンは増加していくだろう。興味がある人は、機会を見つけて実物の映像を体験することをお勧めする。

 なお、映像関連業界の人は、UHD Blu-ray規格とともに「UHD Premium」規格にも注目が必要だ。これは、家電メーカーとコンテンツ制作会社、配信会社など12社が2015年に創設したUHD Alliance(現在のメンバーは35社、パナソニック、ソニー、東芝、シャープなども参加)による、HDR対応4Kテレビやコンテンツ制作、配信に要求する仕様をまとめた規格だ。2016年1月4日(米国時間)に内容が発表されており、1月中にライセンス提供が開始される。規格を満たす製品にはUHD Premiumロゴ(認証)が付けられることになる。

 内容は、ほぼ上述のUltra HD Blu-ray規格に準じており、4K、BT.2020、10bit色深度などへの対応がコンテンツ制作、配信側に要求された。また制作用マスタリングモニタには色域規格のDCI P3を100%満たし、ピーク輝度1000nit以上、黒レベル0.03nit以下、コンシューマ用テレビには、DCI P3の90%以上の色再現性能、ピーク輝度1000nit以上、黒レベル0.05nit以下という高い水準が求められている(液晶テレビの場合。有機ELテレビはピーク輝度540nit以上、黒レベルが0.0005nit以下という点が異なる)。この規格と認証制度は、Ultra HD Blu-ray普及に向けた大きな一歩になりそうだ。

関連するキーワード

Blu-ray Disc Association(BDA)

 Blu-rayディスク規格が公式発表されたのは2002年のこと。その時規格開発をしていたBlu-rayディスクファウンダーズが2004年10月に改称した業界団体。現在140社以上が参加している。かねて次世代Blu-rayディスク規格の開発も行っており、2015年5月にUltra HD Blu-ray規格を完成させた。

「Ultra HD Blu-ray」との関連は?

 規格を策定した母体であり、今後のプロモーション推進も担うことになる。なお、関連規格として「HDMI 2.0a」(HDMI Forum)、HDRテレビの互換性を担うHDR Compatible規格(CEA)も既に完成している。またHDRコンテンツのマスタリング環境、配信サービス、テレビの品質基準もUHD Allianceによって策定されている。

輝度とダイナミックレンジ

 どちらも映像の品質にかかわる要素で、輝度は明るさの絶対値のこと。ダイナミックレンジは表現できる最も暗い点から最も明るい点までの幅のことで、相対値で表されることが多い。輝度の単位はnitまたはntで、1nitは1平方メートル当たり1カンデラの明るさにできることを指す。ダイナミックレンジを表す単位としてはdB(デシベル)がよく使われるが、映像分野ではstopsが使われる。stopsは反射率が18%になるグレーである「18%グレー」を基準に、反射率が2倍になると1ずつ増加する単位だ。

「Ultra HD Blu-ray」との関連は?

 人間の目は0〜10万nit以上を認識することができ、虹彩(瞳孔の拡大、縮小をつかさどる)の働きによって明るさが調整され、同じ瞳孔の大きさなら80db(13.3 stops)程度のダイナミックレンジがあるといわれる。HDRでないカメラやフィルムは10 Stops程度なので、その差は大きい(目で認識できる明暗の差が1万:1なのに対して従来のカメラなどは1000:1)。

 しかし業務用4K/HDRカメラでは14 stops(明暗の差1万6000:1)のモデルが普及してきて、人間の目の能力を超えている。Ultra HD Blu-rayでは、さらにその上をゆく20 stops(明暗の差10万:1、輝度は0.01〜1万nit)までを見据えている。

解像度

 映像領域では、一般的に画像の画素数のこと。現在のフルハイビジョン(HD)は1920×1080画素、UHDは4Kでは3840×2160画素(4K2Kとも呼ばれる)、8Kでは7680×4320画素(8K4Kとも呼ばれる)。なお、「色解像度」という場合は、色を表現する各色のビットを合計したビット数のことを指すことが多い。「24ビットの解像度」なら各色8ビット、256段階の色を表現することができる。

「Ultra HD Blu-ray」との関連は?

 Ultra HD Blu-ray規格では、ひとまず8Kの規格策定はおいて、4Kについて策定されている。また映像処理の規格としてHEVC(H.265)が盛り込まれており、色解像度は一般的な各色8ビットではなく、各色10ビットとなり、合計1024段階の表現ができるようになった。

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