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光ディスク多層化の限界を軽く超越する「超大容量ホログラムメモリ」とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/3 ページ)

» 2016年01月20日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

超大容量ホログラムメモリの原理は?

 従来のDVDやBlu-rayディスクと決定的に違うのは記録方式だ。従来技術では、データのビットはディスクの記録面にレーザー光を当てて相変化した微細な領域(ピット)をトラック上に形成し、読み取り時にはピットの有無をレーザー光の反射を検出して再現する(図2左)。

 そのため記録面の大容量化を図るには、ピットをより微細にするか、トラック幅を狭くするしかない。これまでに波長の短い青色レーザーの利用やトラック幅の微小化が行われてきており、さらに記録面を複数にする(多層化)技術も開発されてきた。

 しかし、既にレーザーのスポット径の微細化や多層化は限界に近づいており、今後のデータセンターなどに要求される大容量データのニアラインでの長期保管ニーズに応えるには、まったく異なるデータ記録方式が必要と考えられている。その最有力候補がホログラムメモリだ。

 その記録方式は、図2右に見るように1つの記録領域に信号光と参照光とを違う角度から照射し、その干渉によるパターンによって記録面のフォトポリマーに相変化を起こさせるというものだ。読み取り時には、参照光と同様にレーザーを照射し、その反射をイメージセンサーで感知する。

超大容量ホログラムメモリ 図2 従来の光ディスクとホログラムメモリの記録方式の違い(資料提供:東京理科大学 基礎工学部 山本研究室)

 1つの2次元データは「ページ」と呼ばれ、1ページは約1Mビット、記録サイズは直径0.5ミリの円になる。この単位で読み書きが可能なことが1つの特長だが、この技術の最大の利点は、同一の記録領域に別のページを重ねて記録(多重化)できることだ。

 山本教授は、参照光が媒体上に球面状に広がって照射される(球面参照光)ことから、ページの記録位置を10マイクロメートルだけずらせば、隣のページが読み込めなくなることを見いだした。つまり、図3に見るように、10マイクロメートルだけ位置をずらして記録すれば、読み出し時には別々のページとして読むことができるわけだ(シフト多重記録)。0.5ミリ幅で5.5センチの長さの中に5500個のページが記録できることになる。

超大容量ホログラムメモリ 図3 10マイクロメートルのシフトで多重記録が可能(資料提供:東京理科大学 基礎工学部 山本研究室)

 しかしこれだけでは超大容量化は難しい。山本教授は同一記録領域にレーザーの入射角を変えて書き込む「クロスシフト多重記録」技術を開発した。これは、2次元(x、y方向)に交差するようにページを書き込む(図4上)技術と、ディスクに傾斜をつけて3次元的に書き込む(図4下)技術の組み合わせだ。

 今回発表された方式では、ディスクの傾斜(チルト角度)を5度刻みに3段階に変えながら、それぞれの傾斜角度でシフト多重記録方式で1回書き込んだ上、xy方向を10度ずらしてもう1回書き込むようにしている。

 ディスクのチルト角度3段階でそれぞれ2回書き込むため、同一の領域に計6回の書き込みが行われる(6多重)ことになる。ごく小さな領域に、5500ページ(5.5Gビット)×2(2次元クロスシフト)×3(ディスクのチルトによる3次元クロスシフト)で33Gビット(4.1GB)、つまりDVD1枚分のデータが記録できるわけだ。

超大容量ホログラムメモリ 図4 2次元でのクロスシフト多重記録とディスクのチルトを利用した3次元クロスシフト多重記録(資料提供:東京理科大学 基礎工学部 山本研究室)

 実験ではガラスをベースにしてポリマーを重ねた透明なディスク(図1参照)が使われていて、実物を見ると微細な線模様が刻まれているらしいことが目で見ても分かる。その1本1本がDVD1枚分のデータに相当するのだ。

 5インチディスク全面に書き込むと、現在までのところ2TB(入出力のエラー率は0.001程度)の容量を実現している。なお、ベース素材はプラスチックも利用可能ということなので、実用化段階では従来の光ディスクと同様に取り扱えるようになるだろう。

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