健康を保て、労働者が安心して働ける労働条件とは何なのかを考えるとき、その最低レベルの基準として「労基法」「安衛法」の規定を利用するべきだ。勤怠管理に関連する主なポイントは次の通り。
特に労働時間との関連は具体的でないが、メンタル悪化防止や対応に関連したポイントも見逃せない。
なお、1カ月60時間を超える時間外労働に50%以上の割増賃金を支払う規定についてはこれまで中小企業に限り「猶予措置」が取られてきたが、2016年4月の段階で継続審議中である改正労基法では猶予措置の廃止(2019年4月施行)が盛り込まれている。
同法では著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定が新設された他、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、毎年時期を指定して5日の有給休暇を与えなければならないこととしている。
時間外労働については、法定労働時間を超過しても、労使協定(三六協定)で合意されていれば認められる。しかし一定期間内での限度時間の基準が示されており、あまりに懸け離れた就労規定は問題視される可能性が高い。
厚生労働省が労災補償に関連して実施した医学的検討によれば、脳・心臓疾患と時間外労働時間には明らかな関連があり、月100時間または2〜6カ月平均で月80時間を超えると健康障害のリスクが高まるという結果が出ている。一方で月45時間以内なら健康障害リスクは少ないということだ(図1)。
この結果を踏まえて厚生労働省が提示している基準が、以下の表1である。
このように見てくると「労働時間の管理」がいかに大切かがよく分かる。同時にさまざまな勤務形態の従業員がいる企業では、管理が相当に複雑になることも想像できるだろう。雇用形態別の労働者の割合(2014年)を見ると非正規労働者が4割に迫る割合になっており、その内訳も図2に見るように多様だ。
正規雇用でも必要に応じて変形労働時間制、裁量労働制、フレックスタイム制、みなし労働時間制が取られることが多くなり、在宅勤務やモバイル中心の“ノマドスタイル”の就労も珍しくなくなっている。この複雑な状況下では、上に見たような法令に基づく労働時間管理と健康管理は非常に複雑化する。
管理者にはかつてよりも重い負荷がかかるようになってきた。コンプライアンスを順守しようとすればするほど自縄自縛になってしまう人事や総務部門の負荷を軽減し、労働状況の悪化兆候を見逃さずに対処できる体制を早急に整えることが、どの企業にも求められている。そこであらためて注目されるようになってきたのが勤怠管理ツールだ。
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