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強い組織を作る新コミュニケーション基盤「SMAC」すご腕アナリスト市場予測(2/4 ページ)

» 2016年06月08日 10時00分 公開
[鵜澤 慎一郎デロイト トーマツ コンサルティング]

SMACテクノロジーがコミュニケーションを変える

 その一方で、コンシューマ領域で発展してきたチャットやSNSなどのソーシャルテクノロジーがビジネスシーンでも活用され、従来のコミュニケーションツールの弱点を補完するようになってきた。

 SNSやチャットならコンシューマ領域で文化が醸成されているため、メールのようにフォーマルな体裁を取る必要がなく、思い付いたことを隣の人に話しかけるような気軽さでメッセージのやりとりができる。これは一見小さなことのようではあるが、業務効率に直接影響し、コミュニケーション頻度を上げる効果をもたらしている。しかもメール洪水とは違い、こちらはフロー型のコミュニケーションになるケースが多く、業務効率が阻害されるケースは比較的少ないようだ。

 例えばグローバル展開する企業では、相手がNY、ロンドンなど海外拠点にいると、メールではどうしてもやりとりに時差が生まれてしまうが、ビジネスチャットやSNSを活用すると、双方の時間の重なる朝か夜のわずかな時間にリアルタイムでコミュニケーションをとることができる。急いでいるときには相手がオンラインであることを確認して、そのままビジネスチャットやSNSを使ってスピーディーに問題解決を図ることも可能だ。

ビジネス用途でのソーシャルテクノロジーの進化

 さらに、近年ではビジネス用途にセキュアに、グループを限ってソーシャルテクノロジーを利用できるようになっている。例えば全社員対象にトップメッセージを一斉に送信して問題意識を隅々まで行き渡らせるといった使い方ができる一方、プロジェクトチームの中だけに閉じた会話や1対1の対話などを行うことができる。また複数企業間をまたぐコンソーシアムのようなグループの場合でも、企業の壁を超えて同一ツールを用いたリアルタイムコミュニケーションが図られることが多くなった。

 例えば「Skype for Business」(マイクロソフト、旧Lync)のような統合ツールでは、オンラインか否かなどの相手側ステータスを確認し、チャット、電話、Web会議といったコミュニケーション機能を必要に応じて使い分けて、1対1、1対多、多対多のテキスト、音声、映像でのコミュニケーションが即座に可能になっている。

 こうしたソーシャルテクノロジーによるコミュニケーションは、いわばバーチャルなフェイストゥフェイスコミュニケーションと化している。これまでは相手先訪問や、会議のために日時や場所の調整に費やしていた時間を節約しながら、同等の質のコミュニケーションが図れるようになっているのだ。従来、国内では特にWeb会議のような映像コミュニケーションの普及は遅々としていたのだが、この数年で潮目は確実に変わった。

 これは、グローバル展開する企業や、遠隔地拠点を多数持つ企業の情報流通円滑化に大いに寄与しており、またワークスタイルの多様化に適合するものでもある。特に在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務が必要な女性や高齢者、介護を必要とする人などの業務を支援するのにも好適だ。ソーシャルテクノロジー導入に慎重だった企業も、生産性を上げるために、またワークスタイル変革やダイバーシティの課題に対応するために、古い衣を次々に脱ぎ始めている。

ソーシャルテクノロジーはモバイルデバイスとの相性も抜群

 また、ソーシャルテクノロジーは、ITのもう1つの大潮流であるモバイルにも適合しやすい。その基盤にクラウドサービスがあり、いつでも、どこでも、誰とでもコミュニケーションが取れる環境ができている。クラウド上には非常に多様なソーシャルサービスが存在しているが、そのほとんどはPC、スマートフォン、タブレットといったマルチデバイスで利用可能であり、むしろその方が利用しやすいと感じるユーザーも多いだろう。

 

 ただしモバイルデバイスのビジネス利用は、近年ではいわゆる「2台持ち」という弊害も生んでいる。実際には、個人用と業務用のスマートフォンの2台持ち、それに加えてタブレットやPCの携行というような、1人当たり3台以上の端末を利用するケースも多くなってしまった。

 これは企業にとっては投資と運用管理コストの上昇に結び付くと同時に、社員の利便性を損なう要素になって不満を呼んでいる。近年では2 in 1 PCが入手しやすくなり、携帯性と機能性、性能、入力などの操作性の問題を解消できるケースが増えているため、今後はそうしたデバイスに収束していく可能性がある。

SMACの「A」はどう生きるのか?

 記事冒頭に掲げたように、現在のITでは明確に「SMAC」、つまりソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウドの4要素がトレンドになっているのは、読者の皆さんも肌身に感じていることだろう。上述のようにコミュニケーション領域でもソーシャル、クラウド、モバイルの発展が従来の課題を解消していく可能性が見えているというわけだが、「A」すなわちアナリティクスはどう関係してくるだろうか。

 それは、ソーシャルやモバイルの活用が生み出す膨大なデータの利活用がポイントだ。そこには人のコミュニケーションのナマのデータがある。従来はデータがあってもそれを仕分け、分析するのが人間だけなので、対象にできるデータ量も少なく、感覚的、定性的に分析することが主になっていた。

 しかし現在は「ピープルアナリティクス」と呼ばれる人の行動科学の手法が、ビッグデータ解析技術をベースにして可能になってきた。これによれば、コミュニケーションデータは定量化でき、科学的な分析ができることになる。ソーシャルリスニングをマーケティングに生かして企業が消費者にとっているユーザーコミュニケーションと同じように、企業が従業員に対して傾向や予兆を予想して、最適なコミュニケーションの取り方のヒントが得られ、コミュニケーションの活性化をさらに促進できる可能性がある。

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